2016 年 6 月 11 日 のアーカイブ

厚焼玉子 16年6月11日放送

160611-01
ひでわく
花と遊ぶ ホウセンカ

夏の庭で
少女たちはホウセンカの花を摘み
その汁で爪を染めた。

爪が赤く染まるから
ホウセンカの別名は爪紅(つまべに)
または爪くれない(つまくれない)

お母さんの口紅はいたずらすると叱られるけれど
ホウセンカの赤は子供にも許された。

おしゃれという言葉も知らず
ただ赤い色がうれしかったあの夏。

昔はよく見かけたホウセンカを
伊藤左千夫はこんな歌に詠んでいる。
 
 山里に友とひよれば 庭さきにつまくれなゐの花ぞ咲きける

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厚焼玉子 16年6月11日放送

160611-02
ドラ猫
花と遊ぶ 朝顔

朝顔は夏休みになってから種をまくと
新学期になっても花は咲かない。

5月の末に種をまいた朝顔が花をつけるのは
8月のはじめ頃だし、
6月の半ばにまいた種は
8月の半ばにやっと咲きはじめる。

朝顔の観察日記には計画性が大事だと、
子供の頃に教えられた。

朝顔の花の色は赤、青、白が基本だが
原種の花は青色だった。
垣根に青い朝顔が咲くと
ふるさとの夏が涼しく思えた。

 朝顔や 一輪深き淵の色  与謝蕪村

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厚焼玉子 16年6月11日放送

160611-04
nao
花と遊ぶ 露草

露草は染料になる。
ただし、その色は水で洗うと簡単に落ちる。
その性質を利用して
友禅の下絵を描くのに使われてきたが、
子供たちにとっては消えるインクの材料だった。

誰もいないところで
誰にも言えない言葉を書いて
あわてて水で消す。

空の青、水の青。
その明るい色は
紙に書いても、布を染めても
決して残ることはない。

露草は6月から咲き始め
夏休みが終わってもまだ咲いている。
見かけよりたくましいのかもしれない。

 露草や露の細道人もなし 正岡子規

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厚焼玉子 16年6月11日放送

160611-03
tanakawho
花と遊ぶ オシロイバナ

オシロイバナは夕暮れに咲く。
夕暮れに咲いて
朝には萎んでしまうひと晩だけの花だ。

道端にこの花がたくさん咲いていた頃、
子供たちは花の付け根を引っ張って落下傘をつくり
風に飛ばして遊んだ。

オシロイバナは甘い香りがする。
種を割ると出て来る白い粉を
白粉にしてお化粧ごっこをすることもあった。

オシロイバナの別名は夕化粧。
お化粧に興味を持ちはじめた少女にとっては
ちょっと悩ましい花だったかもしれない。

  おしろいの花ぬってみる娘かな  小林一茶

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厚焼玉子 16年6月11日放送

160611-05
qooh
花と遊ぶ ホオズキ

赤いホオズキの実は知っていても
ホオズキの白い花を知る人は少ない。

花の時期はちょうどいま。
花が終わり、実を結び、
その実が赤くなるのが8月の旧盆のころなので
死者の霊魂を導く提灯に見立てられた。

そのお供えのホオズキをもらって
種を掻き出して口に含み
ギュウギュウと鳴らすのは
昔の子供たちの遊びだった。

 鬼灯はまことしやかに赤らみぬ  高浜虚子

俳句の世界でホオズキは秋の季語、
ホオズキの花は夏の季語だ。

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