2016 年 7 月 のアーカイブ

伊藤健一郎 16年7月23日放送

160723-01

生涯、冒険家。(ウォルター・ローリー)

私にはシェークスピアに匹敵する分厚い本は書けない。
 しかし、私ならではの本を書くことはできる

ウォルター・ローリー。
その男は、貴族であり、政治家であり、詩人だった。
そして16世紀イギリスで、新世界への扉をひらく冒険家でもあった。

幾度となく大海原を旅したウォルターは言う。

情熱とは海だ。浅きものはつぶやき、深きものは黙す

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伊藤健一郎 16年7月23日放送

160723-02
NOAA Photo Library
生涯、冒険家。(大場満郎)

いつ死んでも不思議じゃなかった

北極海単独徒歩横断。
大場満郎は、見果てぬ夢を追いかけた。

凍傷になり足の指をすべて失った。
凍った体で遺言を書いた。

3度の失敗を重ね、大場は学んだという。
畏れ、謙虚、感謝こそ、前人未到の旅を成し遂げるカギであると。

4度目の挑戦で北極海を制覇し、
その2年後には、南極大陸の単独徒歩横断を成功させた大場。

彼は言う。

冒険家が大胆なだけだったら、それは死に直結してしまいます

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伊藤健一郎 16年7月23日放送

160723-03
Tasmanian Archive and Heritage Office
生涯、冒険家。(エドモンド・ヒラリー)

エドモンド・ヒラリー。
1953年に、世界で初めてエベレスト登頂を成し遂げた冒険家だ。

地球上で最も高い地点に立った男は、
特別なトレーニングをしていたわけではなかった。

本業としていた、養蜂業。
来る日も来る日も蜂の巣箱を運ぶ作業が、
強靭な足腰を育てたという。

積み重ねることの大切さを知るエドモンドは言う。

山はこれ以上大きくならないが、私たちはいくらでも成長できる

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伊藤健一郎 16年7月23日放送

160723-04
Martin D Stitchener PiccAddo Photography
生涯、冒険家。(ジェームズ・スティーブ・フォセット)

男は、自分の力だけで世界一周を果たした。
気球で、船で、飛行機で。乗り物をかえ、
たった一人、地球を何度もぐるりと旅した。

男の名は、ジェームズ・スティーブ・フォセット。
金融サービス業で財をなし、その後の人生は冒険家として生きた。

87もの航空世界記録を持つジェームズは言う。
目標を高く設定して、そんなことは不可能だという周囲の言葉に惑わされるな

2007年、ジェームズは、
車のスピード記録に挑戦するための実験コースを探しに
小型機で飛び立ち、帰らぬ人となった。
その生涯は、冒険の中で幕を閉じた。

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伊藤健一郎 16年7月23日放送

160723-05
Sergey Ashmarin
生涯、冒険家。(ラインホルト・メスナー)

僕は自分自身のために登る。僕自身が祖国となり、僕のハンカチが国旗となるからだ

8000メートルを越える山々、全14座を完全登頂した男。
ラインホルト・メスナー。

彼は決して、ボルトを山に打ち込まない。
酸素ボンベを持ち込まない。

ラインホルトは語る。

死の危険がなかったら、クライミングはもはやクライミングではない。
 山に登っているとき、僕は死を求めているのではなく、
 それとは正反対に、なんとか生きようとしている

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小林慎一 16年7月17日放送

160717-01
Bob Lord
暗号解読と数学篇

第二次世界大戦。
ドイツの暗号システム「エニグマ」は
1億5千万通りの百万倍の百万倍の百万倍
の設定が可能だった。

イギリスの暗号解読班は
古典学者と言語学者で占められていたが
数学の研究者が必要だと判断した。

コンピュータの原型である無限計算機の開発者
アラン・チューリングがイギリスの暗号解読班に参加した。

チューリングは、
エニグマの全設定をチェックする巨大な装置をつくった。
その装置は、回線がつねにカチカチと音を立てるため
爆弾と言われた。

戦況は一変した。

第二次世界大戦は物理学者の戦争と言われた。

しかし、
長い間、秘密のベールに隠されていた
チューリングのチームの存在が明らかになった今、
第二次世界大戦は数学者の戦争だったのだ。

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小林慎一 16年7月17日放送

160717-02

神とサイコロ篇

人類にとって、
確率とは、ギャンブラーの直感と経験のことだった。

17世紀に入り、
パスカルとフェルマーの共同作業によって
確率は厳密な数学規則に従うものになった。

しかし、それ以来、数学的に正しい数字と、
私たちが直感的に正しいと思える数字が違っていることが
少なからずある。

サッカー場に選手と審判が23人いるとする。
この23人のうち、誰か2人の誕生日が
同じになる確率はどれくらいだろうか。

10%だろうか。3%だろうか。
答えは、50%を超える。

誕生日が同じ人が一組生まれる確率は、
一組も生まれない確率よりも高いのだ。

その理由は、23人という数字よりも、
ペアをつくる組み合わせが重要だからだ。
ペアの組み合わせは、253通りになる。

このような確率の錯覚を利用したギャンブル生まれている。
あなたも、くれぐれもお気をつけを。

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小林慎一 16年7月17日放送

160717-03

微積分と大統領篇

フェルマーは確率論の生みの親になっただけでなく
微積分学の創設にも深く関わった。

微積分法によれば
ある量が別の量に対して変化する率
微分係数を求めることができる。

例えば、速度とは時間に対する距離の変化率のことで
加速度とは時間に対する速度の変化率のことである。

微積分学のおかげで惑星の軌道を計算し、
大砲の弾道を予測し
人類は月に行けるようになった。

微積分学は経済学にも大きな影響を与えた。
インフレーションとは物価の変化率のことである。
インフレーションは物価の二次導関数で表され
その増減は三次導関数によって計算される。

1972年、ニクソン大統領は
インフレーションの上昇率は減少しつつある、と演説した。
数学者のヒューゴ・ロッシは
現職の大統領が再選に向けて三次導関数を
利用したはじめてのケースであると述べている。

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小林慎一 16年7月17日放送

160717-04

セミと素数篇

周期ゼミというセミがいる。
どんな世代でも正確に17年または13年で大量発生する。
周期年数が素数であることから素数ゼミとも呼ばれている。

最近では、2004年にニューヨークで大量発生し
日本でもたびたび報道された。

素数年発生の意義を最初に指摘したのはロイドとダイバスだ。

セミの天敵である寄生虫が2年のライフサイクルを持つなら
セミは2で割り切れるライフサイクルは避けたいに違いない。
3年の場合は3で割り切れるライフサイクルを避けようとするだろう。

セミが寄生虫との同時発生を避ける最良の策は
長くて、しかも素数のライフサイクルを持つことだ。

2年のライフサイクルをもつ寄生虫と
ジュウナナネンゼミが顔を合わすのは34年ごとになる。

そんなセミに寄生虫が対抗するには1年サイクルか、
17年サイクルになるしかない。

1年サイクルだとすると、
最初の16年は宿主になるセミはいない。
17年サイクルだとすると、
寄生虫とセミは272年間同時発生しないことになる。

天敵のいなくなったジュウナナネンゼミは、
2021年にまた大量発生する。

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小林慎一 16年7月17日放送

160717-05

戦闘と数学篇

1944年。
フォン・ノイマンは「ゲームの理論と経済行動」
という共著を出版した。

ノイマンはこの本の中でゲーム理論という言葉を生み出し
人間がゲームをいかに遂行するかを数学的に記述した。

チェスやポーカーについて研究し、
経済の営みもモデル化しようとした。

アメリカのシンクタンクであるランド研究所は
ノイマンのアイデアが持つ
潜在的可能性に気づき
冷戦期の戦略開発のために彼を雇い入れた。

ゲーム理論は、
戦闘をチェスと見立てて戦略を練るのに
なくてはならない道具となった。

ゲーム理論によって進化した戦闘は
より効率よく人を殺せるようになったのだ。

ジョイスティックで操られた無人機が爆弾を落とす。

戦闘のゲーム化が、残虐性を覆い隠してはいないだろうか。

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