2020 年 7 月 19 日 のアーカイブ

田中真輝 20年7月19日放送



幸せのダイバーシティ

幸せとは何か?
人類は常に、それを考え続けてきた。

トルストイの名言の中に、
「幸せの形はいつも同じだが、不幸の形はそれぞれ違う」
という言葉がある。

しかし、本当にそうだろうか。

例えば、デンマーク語の「ヒュッゲ」という言葉。
これは、心地よく気楽な居場所を作り出して幸福感を
高めることを指す。

また、ドイツ語の「ヴァルトアインザームカイト」
という言葉は、森に一人でいる喜びを表している。

「アヤーナマット」とはイヌイットの言葉で
どうしようもならない現実を穏やかに受け入れる
ことを意味する。

こうした言葉で切り取られた感覚は、ユニークでありながら
わたしたちの「幸せ」のイメージを豊かに広げてくれる。

「幸せ」という言葉は一つしかないが、その言葉に
どれだけ多くの感情や、感覚を紐づけられるか。
それも、幸せになる方法のひとつなのかもしれない。

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澁江俊一 20年7月19日放送


Daveybot
見えざる手の原動力

幸せとは何か?
人類は常に、それを考え続けてきた。

圧倒的大部分が
貧困で惨めである社会は、
幸福な社会ではありえない。
と言ったのは「見えざる手」という概念を生んだ
経済学の父、アダム・スミス。

人間はいかに利己的であろうと、
本性の中には、他人の運命に関心を持ち、
他人の幸福をかけがえのないものにする
推進力が含まれている。

この人間の、共感の力こそ
見えざる手の原動力だとスミスは考えた。

未曾有の危機の中で
混迷する世界の経済。
見えざる手は今、私たちを
どこへ導こうとしているのか。

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田中真輝 20年7月19日放送


jm_escalante
幸福のアルゴリズム

幸せとは何か?
人類は常に、それを考え続けてきた。

科学の発達により、人間の生化学的なメカニズムが
解明されるにつれて、人の営みも一種のアルゴリズムに
すぎない、という考え方が生まれている。

人間がある行動をするのは、人類が存在し続けるために、
そうプログラムされているからに過ぎないというのだ。

こうしたい、と思うためには、その引き金となる
何かの理由があり、その理由にも、引き金となる理由が
あり…と無限に後退していくプロセスの中に
自由な意志が介在する余地は存在しないように見える。

幸せとは、人間という種が効率よく生き残るために
プログラムされた「餌」である。
そう言われたときに、しかし強く反発する気持ちがある。
これもまた単なるプログラムだと言うのだろうか。

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田中真輝 20年7月19日放送


Muffet
炎と向き合う時間

幸せとは何か?
人類は常に、それを考え続けてきた。

仏教には「諸行無常」という有名な言葉がある。
すべてのものが、移ろい変わっていき、その形を
とどめない。ならば、ああしたい、こうすれば
よかったなどという一時の欲望や悩みに執着する
ことに、どれほどの意味があるのだろう、と
問いかける言葉である。

煩悩の炎を消し、悟りを開くなどということは、
普通の人間には無理だとしても、胸を焦がす
その炎のゆらめきを少し距離をおいて眺めてみる、
そのとき感じる静けさもまた、ひとつの幸せの
ありかたかもしれない。

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田中真輝 20年7月19日放送



幸せトレーニング

幸せとは何か?
人類は常に、それを考え続けてきた。

最近の研究によると「オキシトシン」という
生理物質が脳内に分泌されると、人は
幸福感を感じるらしい。

このオキシトシンは「抱擁ホルモン」とも呼ばれ、
人と触れ合うことで分泌が促される。

ソーシャルディスタンスが求められ、
なかなか抱擁は難しいご時世だが、
直接接触しなくても、見つめあったり、言葉を
交わすことでも分泌されるらしい。

会えないときこそ、慕情は募るもの。
ソーシャルディスタンスな今こそ、人との共感力を鍛え、
オキシトシンの出やすい体を作る
チャンスかもしれない。

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澁江俊一 20年7月19日放送


Teemu Eskola
厳しさと幸福

幸せとは何か?
人類は常に、それを考え続けてきた。

幸福度ランキングで
3年連続世界1位のフィンランドは、
一年の半分近くを太陽が昇らない寒い冬が占めている。
厳しさこそが幸福の母なのか。

「けれどもほんとうのさいわいは一体何だろう」ジョバンニが云いました。

「僕わからない」カムパネルラがぼんやり云いました。
銀河鉄道の夜では、幸せの答えは無数の星の中に消えていく。

世界を取り巻く厳しい状況は、
私たちがそこから幸せを生み出せるかどうかを
試しているのかもしれない。
答えはない。けれど、ほんとうの幸せはきっとある。
たぶん意外とすぐそばに。

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澁江俊一 20年7月19日放送



お金以上の幸せとは

幸せとは何か?
人類は常に、それを考え続けてきた。

聴く人を幸せな気持ちで包み込む
古典落語の傑作「文七元結(ぶんしちもっとい)」。

娘が父を思い
身売りを覚悟して用立てた五十両もの大金を、
店の売上げ金をなくしてしまい
橋の上から身を投げようとする奉公人の文七に出会って
つい、あげてしまう江戸っ子の人情を描いた
笑いと涙の物語である。

見ず知らずの若者に
かけがえのない娘がつくった五十両をあげてしまう。
常識では「ありえない!」父親の行為が
最後に予想もつかない幸せを連れてくる。

お金は大切。
でもお金以上の幸せも必ずある。
そう信じたい人間の気持ちが、
この噺を、時代を超える傑作にした。

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澁江俊一 20年7月19日放送



おじいさんの馬

幸せとは何か?
人類は常に、それを考え続けてきた。

中国に人生万事塞翁が馬
という故事がある。

塞翁とはお城の近くの
おじいさんという意味だ。
おじいさんの馬が逃げ出して
周りの人が気の毒がるが
おじいさんは気に留めない。
やがてその馬は立派な馬を連れてきた。

しかし今度はその馬から
落ちた息子が足の骨を折ってしまう。
それでもおじいさんは意に介さない。
おかげで戦争に取られることなく
おじいさんと息子は長生きして幸せに暮らす。

幸せとは人生の最後に
ようやくわかる…
そんなものなのかもしれない。

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