2013 年 3 月 24 日 のアーカイブ

澁江俊一 13年3月24日放送


かずっち
別れと合唱

オリコンの調査によれば
2012年の卒業ソングランキング
第1位に輝いたのは、
いきものがかりでも、コブクロでもなく
埼玉県の影森中学校校長・小嶋登が作詞した
「旅立ちの日に」という曲だった。

「卒業する生徒たちのために、世界にひとつしかない歌を」
そんな願いからこの曲が生まれたのは1991年。
作曲も当時音楽の先生だった高橋浩美だった。

 勇気を翼に込めて 希望の風に乗り
 この広い大空に 夢を託して

その歌詞は、
彼が心から愛した生徒たちだけでなく
卒業式を迎える日本中の子どもたちの背中を
今年もやさしく押してくれている。

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奥村広乃 13年3月24日放送



別れとピアノ

ショパンの練習曲作品10第3番ホ長調。
またの名を『別れの曲』。

これは、彼が初めての恋に破れ、
悲しみにくれながら作った曲、
ではない。

実はこの曲名、出版から100年以上たって付けられたものだ。

この曲は、1935年に公開された、
フレデリック・ショパンの伝記映画に
メインテーマとして使われた。
その映画の邦題が『別れの曲』。
以来、その名で呼ばれるようになった。

ショパンはこの曲を「別れの曲」とは呼ばなかったが
この曲を作曲した年に
ふるさとポーランドに別れを告げている。

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松岡 康 13年3月24日放送



別れとアパート

東京都渋谷区神宮前4丁目、
ファッションの中心として栄える表参道沿い。
2003年、そこに建っていたある建物が、街に別れを告げた。
同潤会青山アパートメント。

つたに覆われた外観に、
ケヤキ並木の影がおちる。
75年ものあいだ、
街にノスタルジックな表情を与えつづけた。

2006年。その敷地に建築家安藤忠雄による
表参道ヒルズが竣工した。
ケヤキ並木の高さを越えないようにおさえられたボリューム。
ガラスとコンクリートで
シャープに表現された、現代的な建築だ。

その片隅に、
まるで迷子のようにぽつりと建つレトロな建物。

人々の記憶に刻まれた景観を、継承したい。
そんな安藤の思いから、
同潤会アパートメントが部分的に復元されたのだ。

解体から10年。
今日もそのアパートは、かつての記憶を伝え
お客が足をよく運んでくれる一画になっている。

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澁江俊一 13年3月24日放送


Michael Heilemann
別れと戦友

結婚って、なんだ。
離婚って、なんなんだ。
この2人を見てると、不思議に思う。

「ハート・ロッカー」で
女性初のアカデミー監督賞に輝いた
キャスリン・ビグロー。
元夫で「アバター」の監督
ジェームズ・キャメロンとは真逆をゆき
イラク問題など現実社会の最前線で
極限のドラマを描き続ける。

別れても互いをリスペクトしあう2人には、共通点がある。
どちらも映画界のしきたりに目もくれず、
自分のスタイルを切り拓くタフな表現者なのだ。
ハリウッドという魑魅魍魎の世界で戦う戦友。
彼らに夫婦という枠は、少しだけ狭すぎた。

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松岡 康 13年3月24日放送


suttonhoo
別れと家

緑の林の中に天井と床が浮かんでいる。
極限まで要素をそぎ落とした軽さ。
その家の名は、ファンズワース邸。
近代建築の巨匠ミース・ファン・デル・ローエによって、
1951年に設計された週末別荘だ。

設計を依頼したのは
女性外科医エディス・ファンズワース。
当時ミースとエディスは
施主と設計者との関係を越え、男女の愛を築いていた。

ファンズワース邸の設計が進むにつれて、
ミースは作品としての「家」に執着し、
のめり込んでいく。
そこに住むはずのエディスを、顧みることもなく。

当初の予算を大幅に上回った施工費を巡って、
エディスは訴訟を起こす。

ファンズワース邸の設計が終わると同時に、
二人は別れた。

二人の絆が消えた後に残ったのは、
世界中から愛される、近代建築を代表する作品だった。

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礒部建多 13年3月24日放送



別れと狼

明治38年、奈良県の小さな村で、
ニホンオオカミの最後の一匹が確認された。

アメリカ人青年マルコム・アンダーソンは
最後のニホンオオカミを大英博物館へ運んだ人物である。
彼は東南アジア小型哺乳類収集団の一員として、
その村を訪れていた。

地元の猟師が手にしていたニホンオオカミの死骸を
マルコムは8円50銭で買おうとした。
猟師たちは、交渉の末、死骸を売り渡した。
それが日本での最後の一匹になるとは知らずに。

奈良県の東吉野村には、いま
等身大の日本オオカミのブロンズ像が立っている。

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奥村広乃 13年3月24日放送



別れと時間

1月はいってしまう。
2月は逃げてしまう。
3月はさってしまう。
この3カ月は、1年の中でも時間のたつのが早い。

1日は24時間。1分は60秒。
延びたり縮んだりするわけでもないのに不思議だ。

いっぽうで、とても長く感じる「時間」もある。
六歌仙でしられる僧正遍昭の歌。

今来むと いひて別れし 朝より (いまこむと いいてわかれし あしたより)
思ひくらしの 音をのみぞ泣く (おもいくらしの ねをのみぞなく)

「またすぐに来るよ」と言って去った人を思い
泣き暮らす時間の長さは
1000年後のいまも変わらない。

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澁江俊一 13年3月24日放送



別れと砂漠

アメリカ美術界で
はじめて脚光を浴びた女性
ジョージア・オキーフ。
しかし大恐慌の時代。
ルールに縛られず、自由な絵を描くオキーフに、
世の中は寛容ではなかった。

華やかさと誤解に満ちた
ニューヨークの生活に別れを告げ
彼女が暮らし始めた土地は
ニューメキシコ州サンタフェ。

砂漠と荒地。そして崖。
どこまでも青い空と焼けつく陽射し。
人々にとって何もないその場所には、
彼女にとって、すべてがあった。

美しい花の絵を好んだオキーフは
砂漠に落ちている動物の頭蓋骨も
繰り返しモチーフにした。

花と、骨。
彼女はまるで同じものみたいに
どちらも生き生きと描くのだった。

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