2014 年 6 月 8 日 のアーカイブ

熊埜御堂由香 14年6月8日放送

140608-01
M6 Panda
家の話 いしいしんじの町家

幻想的な味わいの作品を発表する作家、
いしいしんじ。

数年前から、京都の
古い町家に住んでいる。

彼にとって家は仕事場。
書いているとふとこう思うという。

 家というよりも、「不思議なトンネル」
 の中いるような感覚になる。

家の中でも、遠くにいける。
それは、町家の魔法かもしれない。

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熊埜御堂由香 14年6月8日放送

140608-02
Kemon01
家の話 ドリス・デュークのシャングリラ

ドリス・デューク。
1925年、12歳のときに父を亡くし、
膨大な遺産で、世界一裕福な女の子といわれた。

彼女の伝記にこんな一節がある。


日記を書くように、ドリスは家を建てた。

世界中に6つの家をたて、
自家用ジェットで世界中を飛び回った。
そんな彼女が一番手をかけた家がハワイにある。
イスラム美術を集め、50年かけて内装をしあげていった。
カハラ地区にある、その邸宅はシャングリラと呼ばれる。

2度の離婚に、子どもの死。
最後まで、家族をもたなかったドリスにとって、
家とは、生活の場ではなく、
夢を見る場所だったのかもしれない。

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茂木彩海 14年6月8日放送

140608-031

家のはなし 坂口恭平の家

図面も引けなければ、ろくな家を建てたこともない。
建築家、坂口恭平。

早稲田大学理工学部で建築家を志し、勉強に励む一方で
土地を買って所有し、莫大な金額を払って家を建てる
という日本の建築システムに疑問を感じていた。

そんな折、隅田川の河川敷で
鈴木さんという路上生活者との出会いを果たす。

鈴木さんの家をのぞかせてもらうと
ざっと3畳はありそうな部屋に
車のバッテリーを改造して電気を通し、
拾ってきた冷蔵庫や洗濯機を動かしている。

そこには大都会、東京の中で、確かに自分の手で建てた家が存在していた。

坂口は言う。

 
エコノミクスの語源は、「住まい」という意味の「オイコス」
 と「あり方」という意味の「ノモス」である。
 つまり、僕たちは経済をどうしていくか考えるときには必ず
 家とはなにかを考えなくてはならない。

現代社会で考える、効率的な家とは何か。
坂口が考えたのは、予算3万円の移動できる家、モバイルハウス。

家づくりの常識を変えた男はいま、
生き方の常識も同時に変えようとしている。

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茂木彩海 14年6月8日放送

140608-04
ミルちょ
家のはなし 隈研吾の家

世界的な建築家、隈研吾のデビュー作は
伊豆の別荘だった。

太平洋が見渡せるすばらしいロケーションにありながら
竹とトタン板を組み合わせた外観に、段ボールでつくった茶室。
工業的なものを使うことで、別荘特有のメルヘンなイメージを変えた。

 
哲学のない建築は人の心を動かさない。
 僕は図面を書くときは、
 手紙だと思って書けと言ってるんです。

彼からの、家のかたちをしたメッセージに、
世界はこれからも、何度となく驚かされるのだろう。

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小野麻利江 14年6月8日放送

140608-05

家のはなし 伴美里の部屋の中

アーティストの伴美里(ばん みさと)が
自分の部屋を見渡した時、
そこは、彼女が年月をかけてつくりあげた
「世界の箱庭」になっていた。

「ミラーワーク」という刺繍がほどこされた
インドのキーホルダー。

バリ島で買った「バティック」という、
ろうけつ染めのスカーフ。

ベルギーはアントワープで見つけて
「文化遺産」という呼び名をつけた
大きめのカフェオレボウルに、

イギリス湖水地方、
ウィンダミアの山から持ちかえった石ころが
あったかと思えば、

プラグの周りは、いろんな国の電化製品が共存して
大変なことになっている。

自分の部屋にある思い入れの深いものをスケッチし、
それぞれにまつわるエピソードを添えた伴美里。
彼女のドローイングブック
『100 Things in My Room』の中には、
そんな「家あそび」の極意がぎっしりと詰まっている。

雨続きで、外に出られない。
そんな日は、お家の中を旅するチャンスかもしれません。

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小野麻利江 14年6月8日放送

140608-06

家のはなし 谷崎潤一郎の暗がり

外の光がまったく届かない建物の
暗がりの中にある、
金の襖や金屏風。

作家・谷崎潤一郎は、著書『陰翳礼讃』の中で
その微かな色彩の、照り返しをいつくしむ。

 
私は黄金と云うものが
 あれほど沈痛な美しさを見せる時は
 ないと思う。

明かりを消してしまえば、
何も見えなくなる訳ではない。
私たちの眼に、
闇が見せてくれるものもきっとある。

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薄景子 14年6月8日放送

140608-07

家のはなし ジョン・ミルトン

イギリスの詩人、
ジョン・ミルトンは言った。

 
心は己をその住まいとす

どんなにのぞんでも
自分の心は他人の肉体に
引っ越しすることはできない。

人が住まいにこだわり、
自分の家を自分流にしたがるのは
そんな理由からかもしれない。

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薄景子 14年6月8日放送

140608-08
calium
家のはなし 茨木のり子の家

「茨木のり子の家」という写真詩集がある。

使いこまれて皺がよった皮のソファ。
すりガラスにきざまれた楕円のパターン。
いま見てもモダンな自宅写真の合間に
彼女の詩が美しくレイアウトされる。

 

食卓に珈琲の匂い流れ
ふとつぶやいたひとりごと
 あら
 映画の台詞だったかしら
 なにかの一行だったかしら
 それとも私のからだの奥底から立ちのぼった溜息でしたか


曳きたてのキリマンジェロの香りは、
彼女の鼻腔を通ってことばとなり、
きっとこの部屋から
いくつもの詩が生まれたことだろう。

家は、そこに住む人の匂いを記憶する。
茨木のり子の家の写真からは
珈琲の香りが漂ってくる。

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