遠藤守哉は鶏鍋が好きだ(2017年3月の収録記3)

moriya

飽きたでしょ? って言っても
「鶏鍋おいしいですねえ」 としか言わない遠藤守哉。
「おいしいですねえ」 の意味は、
「もっと食べたいです」 だと思うけど、
本当に飽きないのかしら??
11月くらいから毎月のように鶏鍋を食べている気がする。

Tokyo Copywriters’ Street冬の収録の打ち上げは
鶏鍋が定着しそうな感じだ。
今回はせめて野菜に変化を持たせようと思って
レタスやセロリを用意してみたら、これがうまかった。
そうか、やっぱり鶏鍋はうまいのか…

そうそう、鶏鍋のことを書いていたら
うかうかと忘れるところだったけど、
今回の遠藤守哉が読んだのは、おなじみ直川隆久さんの「かげろう
http://www.01-radio.com/tcs/archives/29118

これがまた「これでもかっ!!」というくらい長くて
おそろしく体力を使いそうな原稿だったけど、
守哉はカラダを鍛えているので疲れた様子もなかったのがすごいし、
あの量を書いた直川さんもすごいなあ (なかやま)

Tagged: ,   |  コメントを書く ページトップへ

川野康之 2017年2月19日

kawano1702

ピスタチオ男

   ストーリー 川野康之
      出演 遠藤守哉

ピスタチオ男のことを聞いたことがありますか。
ピスタチオ男は、いつもポケットにピスタチオを入れていて、
ぽりぽりと齧っている。
彼の名前は誰も知らない。どこに住んでいるのか、
どんな職業をしているのか、誰も知らない。
彼はとつぜんふらりと現れる。

ある時、ピスタチオ男はLAの郊外にあるゴルフ場のクラブハウスに現れた。
その日プレーを終えたデレク・ブラックモア氏は、
バーのカウンターに寄りかかって虚ろな表情をしていた。
「もう二度とゴルフはやらない」
という誓いを彼はさっき18番ホールの池のそばで
生涯三度目に立てたところだった。
友人たちは彼をそっとしておいてやることにして、
先に帰ってしまった。
バーテンダーもクラブの支配人もみんな声がかけづらい様子だった。
そのカウンターにつかつかと歩み寄る男がいた。
男はためらうことなくブラックモア氏の隣に座ると、ビールを注文した。
つまみは頼まない。
なぜなら彼のポケットの中にはピスタチオがたくさん詰まっていたからである。
「ゴルフがうまくなりたいかね」
男は単刀直入に声をかけた。
傷ついた心というのはそっと触られると返って痛みが増すものである。
ぐさりとナイフを入れられたときは、不思議なことに痛みを感じない。
ブラックモア氏が声を出せないでいると、
男は、ポケットからピスタチオを握りこぶしいっぱい取り出して、
目の前のカウンターにざっとぶちまけた。
「練習場に行ったらボールの代わりにこれを打つといい。
 初めのうちはまったく飛ばないだろうが、
 うまく当たるとこんな小さな豆が100ヤードも飛ぶ。
 ほんとうだよ。ボールペンがあるかね」
バーテンダーがくれたボールペンを持って、
ピスタチオ男はブラックモア氏の右手に小さな点をマークした。
「この手がクラブヘッドだとすると、この小さな点がエンジェルスポットだ。
 どんなクラブにもじつはエンジェルスポットと呼ばれる
 特別な一点があるんだよ。ボールペンの先っぽぐらいの小さな点だけど。
 正確にここに当てることができると、
 小さなピスタチオが100ヤード先まで飛んでいく。
 まるで羽根が生えたように。まるで命を与えられたみたいに。
 1ミリでも外れると1ヤードも飛ばない。粉々に割れてしまうこともある」
ピスタチオ男は話を続けた。
「エンジェルスポットで打つことさえできたら
 ゴルフボールのコントロールなんて自由自在さ。
 そしてエンジェルスポットで打てるようになるために一番いい方法が
 ピスタチオを打つことなんだよ」
ここまで一気に言ってしまうと、ピスタチオ男はおいしそうにビールを飲んだ。
ブラックモア氏はあっけにとられて黙っていたが、
虚ろな目が鋭くまたたいて、
その奥でさまざまな考えが巡り始めたのがわかった。
「どこにあるんだね?その、私のクラブのエンジェルスポットの位置だが・・・」
「打ちながら探るしかない。それもゴルフボールじゃだめだ。
 もっと小さくてもっと軽いものを」
男は自分のビール代をカウンターに置いて立ち上がった。
「1年間、ピスタチオだけを打つこと。絶対にボールを打ってはならない。
 それができるかね」
そう言ってピスタチオ男は去った。
あとに残されたブラックモア氏は、じっと自分の右手を見つめていた。

支配人の話。
「うちのクラブハウスのバーには近所の住人も飲みに来るんですが、
 あの男を見たのは初めてでした。 
 ベーカーズフィールドあたりのピスタチオ農家から来たのかもしれません。
 あの時はそのうちピスタチオを1年分売りつけようとするのではないかと
 ハラハラして見ていたのですが、そんなことはありませんでした」

バーテンダーの話。
「ブラックモアさんは気の毒でした。
 お友達たちに話したところ、
 おまえはピスタチオ男にからかわれたんだよとさんざん笑われてしまい、
 腹を立ててほんとにゴルフをやめてしまったそうです。
 あんなにゴルフが好きだったのに。
 ピスタチオ男を見つけたら私がぶん殴ってやりたいですよ」

ピスタチオ男については次のような目撃話も報告されている。

アナハイムのエンジェルスタジアムでのこと。
試合前にエンジェルスが練習しているのを
スタンドからじっと見ている男がいた。
男はポケットのピスタチオをひっきりなしに食べていた。
グランドでは強打者マイク・トラウトが打撃練習をしていたが、
その日は調子が乗らず、球が思うように飛ばないようだった。
ピスタチオ男がベンチのそばに降りてきて声をかけた。
トラウトは練習を中断し、2人はフェンスをはさんで
しばらく言葉を交わしていた。
やがて打席に戻って練習を再開すると、
トラウトのバットがそれまでにない快音を立てはじめた。
打球はまるで羽根がはえたように優雅な放物線を描いて
外野席に飛びこんで行った。

またある時はベーカーズフィールドの牧草地でのこと。
1台の軽飛行機が不時着した。飛行中に機体の不調を感じたパイロットが、
念のために緊急着陸したのである。
エンジン、プロペラ、翼と点検したが、原因は分からないようだった。
そこへ一人の男が近づいてきた。
男はピスタチオを食べながらパイロットに話しかけ、
そのまま二人はのんびりと世間話を始めた。
しばらくして修理を終えたパイロットが飛行機に乗り込み、
エンジンをかけた。
飛行機は軽快な音を立てて、元気よく青空に飛び立って行った。
ピスタチオ男がそれを見守っていた。
プロペラが巻き起こした風で、
男の手からピスタチオの殻が舞っていたという。

ところで、その後ブラックモア氏がどうなったのか、
気になる人も多いのではないだろうか。
最近聞いたところによると、
ブラックモア氏はかのゴルフ場に再び姿を現したらしい。
実に一年ぶりだということだ。
プレーの終わりに、18番ホールの池にクラブセットをすべて投げ込んで、
「ゴルフはもう二度とやらない」と生涯四度目に宣言したという。

出演者情報:遠藤守哉(フリー)

 

Tagged: , , ,   |  コメントを書く ページトップへ

サインをする遠藤守哉(2017年2月の収録記1)

moriya_2

2017年2月掲載分の収録は1月28日でした。
上の写真はサインをする遠藤守哉です。
何のサインかと言いますと、
韓国から来た留学生イジファンくん(遠藤守哉のファン)がですね、
徴兵のために2年ほど韓国に帰ることになったからなのです。
軍隊ではネットを見るのもままならないのだろうと思って
CDを焼いてあげようかなと、
そしてそのCDに守哉のサインがあると喜んでくれるかなと
思ったわけなのです。

このサイン入りCDにこれから守哉の声を入れるわけなんですが、
失敗しなければいいなあ。
まあ失敗してもサインを書き直してもらえばいいんだけど、
守哉は気のいいやつなので怒ったりはしないけど
書き直してもらうにあたっては
ご飯くらいご馳走しないといけないし
うん、頑張って失敗しないようにしよう。
それにしても、軍隊でCDは聴けるのかなあ。
休暇のときなら聴けるかなあ。
でも休暇ならパソコンも使えるからCDはいらないんじゃないか??
どうも軍隊というものがよくわからない。
ともかく元気で帰ってきてね、イジファンくん (なかやま)

moriya

Tagged: ,   |  コメントを書く ページトップへ

福里真一 2017年1月15日

karaage

トリの唐揚げの話

    ストーリー 福里真一
       出演 遠藤守哉
       
Aさんは常に温厚で、
彼が怒った姿など、
もう十数年の付き合いになるが、
一度も見たことがない。

聞いてみると、
いまは40代の彼が、最後に怒ったのは、
中学2年のときだそうだ。

当時、中学校の昼食の時間に、
クラスメートの弁当に背後から手を伸ばして、
次々とつまみ食いをする同級生がいたそうだ。

その同級生は、ちょっと不良がかってはいたが、
どこか茶目っ気もある、なかなかの人気者だったから、
彼のその行為を、クラスメートたちもなんとなく笑って許していた。

その、みんなの、笑って許している雰囲気が、
Aさんからすると、
なんとも嫌な感じだったそうだ。

そうしたある日、
ついにAさんの弁当に、彼の手が伸びる日がきた。

自分の弁当の、トリの唐揚げをつまみ食いされた瞬間、
Aさんは、自分でもびっくりするぐらい、
ブチ切れた。

そんなに食いたきゃ、いくらでも食え!

Aさんは、弁当箱の中にあった、
ありったけのトリの唐揚げを、
彼に全力で投げつけた。

いつもは温厚なAさんの、突然の逆上に、
そのつまみ食いの同級生も、
そのほかのクラスメートたちも、
あっけにとられていたそうだ。

…その話を聞いてから、
僕のAさんを見る目が変わった。

一見、温厚に見える彼の奥底には、
トリの唐揚げのような形をしたゴロゴロした怒りが、
再び爆発する機会を待って、
いまはいっとき、つばさを休めている。

そんなイメージが、頭から離れなくなって、
困っている。

出演者情報:遠藤守哉 青二プロダクション http://www.aoni.co.jp/

 

Tagged: , , ,   |  コメントを書く ページトップへ

初転勤先は東北(東北へ行こう2017)

初転勤先は東北

   ストーリー 大坪悠高(東北芸術工科大学)
      出演 遠藤守哉

報道局に配属されて初めての転勤が東北だったよ。
新米の時は毎日のようにカメラを持って取材先へ。
そこで学んだ経験といえば、TVに対して人がとる行動は同じ、
ということかな。
撮影している自分らを遠巻きに眺める。
インタビューしようとすれば手早く断る。
ひどい時だとの報道の文句を言い始める。
もちろん東北も例外じゃなかったが、今思えばちょっと違うところがあった。

とある祭りを取材した時の話だ。
祭りの名物を撮影してたんだが、いきなり「兄ちゃん!」と声をかけられた。
驚いてそっちを見たら、オバちゃんがお椀と箸を僕に渡すんだ。
最初は取材中だからと言って断ったんだけど
「っけ!っけ!」って押しつけてくるかた、しょうがなく頂いた。
もうびっくりしたよ。
だって今までの取材じゃそんな経験は一度もなかったからね。
他にもお土産をもらったりした取材もあった。

こういうのをなんて言えばいいのかな…。
よく言えばフレンドリー、悪く言えば馴れ馴れしい?
とにかくコレが僕が東北に来ての率直な感想だね。
今でも結構そうなんじゃないかな?
居心地いいよ、うん。

東北へ行こう


*「東北へ行こう」は
自分のとっておきの東北を紹介し、あなたを東北におさそいする企画です
下のバナーやリンクもクリックしてみてください

logo_header04

hikakuWeb_bana

tohoku

h_logo2

Tagged: , ,   |  コメントを書く ページトップへ

山形の姫君(東北へ行こう2017)

「山形の姫君」

      ストーリー 鈴木志帆(東北芸術工科大学)
         出演 遠藤守哉

山形県には姫様がおられます。
艶やかな、まるで月山にはらりと舞う雪のように真っ白い肌の
美しい姫君でございます。

ただ美しいだけではなく、姫様はとても知恵のあるお方であり、
なんとあの『コシヒカリ』様をも凌ぐ才覚をお持ちだとの噂。
粘り強い性格もありまして、
一度姫様の才覚に触れたのならもう虜となることでしょう。

姫様がお生まれになられるまで10年もの歳月がかかりましたが、
わずか10年かけてこれほどの魅力溢れる方がお生まれになったと
考えるのならば納得の一言でございます。
ご先祖の『亀の尾』様もさぞお喜びのことでしょう。

美姫と名高い姫様ではありますが、相性の良い殿方はシンプルで味わい深い、
そう、この山形の芋煮様にだし様、おみ漬け様、わらびの一本漬け様…

さて、我らが姫君、『つや姫』様がお米としてもっとも輝けるのは
どなたのお側でしょうか?
どうか皆様お探しくださいませ。

東北へ行こう


*「東北へ行こう」は
自分のとっておきの東北を紹介し、あなたを東北におさそいする企画です
下のバナーやリンクもクリックしてみてください

02-tsuyahime
つや姫全農山形県本部:http://www.zennoh-yamagata.or.jp/rice/2015/tsuyahime.html

title_yamagata

yamagata_tabi_logo

hikakuWeb_bana

tohoku

logo_header04

Tagged: , ,   |  コメントを書く ページトップへ