藤本組・藤本宗将

永久眞規 20年8月8日放送


Jose Luis RDS
ヒゲと芸術

世界で最も有名な口髭の持ち主に選ばれた、
サルバドール・ダリ。

あの上向きにはねた口髭は、
一度見たらなかなか忘れられないものがある。
しかもあのひげは、実は水あめで固めていた、
なんていう逸話も。

そんなダリの口髭が、
再び話題になったのが2017年の出来事。

ダリの娘と名乗る女性が出現。
その関係性を証明するため、
裁判所が遺体の掘り起こしを命じたのだ。

1989年に亡くなり、
約30年ぶりに掘り起こされたダリ。
身体はミイラ化していたが、
なんとその口元には生前と変わらない口髭が。

死してなお、トレードマークは変えないようだ。

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藤本宗将 20年8月8日放送



ヒゲと将軍

戦国の世において、
ヒゲは武士の強さの象徴だった。
ところが江戸幕府ができると
官僚化した武士にヒゲを剃る習慣が広がる。

荒っぽいヒゲは「傾奇者」と呼ばれる
アウトローたちのものとなり、取り締まりの対象に。
そして4代将軍・徳川家綱の代に
とうとう「大髭禁止令」が発令され、
ヒゲが一掃されるに至った。

確かにそれ以降の浮世絵を見ても
ヒゲを生やした者は見当たらない。
泰平の世ともに、ヒゲは居場所をなくしたのだ。

ただし、禁止令にも例外が。
長谷寺に残る家綱自身の肖像画には、
堂々たるヒゲが生えている。
武士のトップに許された特権だったのだろうか。

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村山覚 20年8月8日放送



ヒゲと時代

明治や大正の頃、立派な髭は男の勲章だった。
政治家も、経営者も、街の人々も、皆が当たり前のように髭をたくわえた。

昭和の後半、いわゆる高度経済成長の頃からバブルが弾けるまで
髭を生やす人はどんどん少数派になっていった。
髭なしスタイルは「安定・秩序・平和」の象徴とも言われた。

平成になり、男たちは再び髭を生やし始めた。
特に急成長を遂げたインターネット業界では髭率が高い印象。
安定や秩序よりも、変化を望んでいるという意思表示にも見える。

そして令和。
家で過ごす時間が増えて「コロナ髭」なんて言葉も生まれた。
この先、髭の経営者や政治家が増えるのだろうか?
それとも、さっぱりとした髭なしスタイルが好まれるのだろうか?

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仲澤南 20年8月8日放送



ヒゲとお札

2024年。
20年ぶりにデザインが変わる、日本のお札。
新しい一万円札に描かれる“顔”は、渋沢栄一だ。

しかし彼がお札の顔の候補に挙がるのは、
これが初めてではない。
1963年、千円札のデザインが変わる時にも、
伊藤博文と並んで最後の候補に残っていたという。

しかし、残念ながら落選。
その理由のひとつが、ヒゲだった。
立派なヒゲをたくわえた伊藤に対し、
渋沢の顔にはヒゲがなかった。
当時は再現の難しい細かなヒゲを描くことで、
お札の偽造を防いでいたのだ。

それから数十年。
偽造防止の技術がすすんだおかげで、ヒゲのない男性だけでなく、
女性もお札の顔に選ばれるようになった。
新しい千円札の顔・北里柴三郎は
ヒゲのおかげで選ばれたわけではない。

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村山覚 20年8月8日放送



ヒゲと選挙

リンカーン大統領。トレードマークは、立派なヒゲ。
しかし大統領選に出馬した当初は、生やしていなかったそうだ。

ニューヨークに住む一人の少女が、こんな手紙を書いた。
“あなたは頬がこけているから、髭を生やしたらきっとかっこよくなるわ!”
“女性はみんなヒゲが好き”

リンカーンはすぐに返事を書いた。
“今まで生やしたことがないんだ。おかしいと思われないかな?”

ヒゲの有り無しが選挙戦にどこまで影響したかは分からないが…
よくお似合いですよ、大統領。

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村山覚 20年5月23日放送


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亀の話 亀有の狛亀

亀は縁起がいい生き物として、古くから愛されている。
「亀」という字がつく地名もたくさんあるが
東京で有名なのは葛飾区の亀有だろうか。

現在の亀有のあたり、400年前までは「かめなし」という
地名だった。江戸幕府が地図をつくるときに
「なし」だと縁起がわるいと「あり」に変えたそうだ。

亀有のとある神社の入り口では、
狛犬ならぬ狛亀が出迎えてくれる。
手水舎にも亀。賽銭箱にも亀。

今は、亀のようにゆっくりと進もう。

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永久眞規 20年5月23日放送



亀の話 ハワイとカメ

ハワイのいたるところで見かける
ウミガメのモチーフ。
そこには大切な意味がある。

もともとポリネシア圏で、
ウミガメは伝説や神話に登場するが、
中でも、ハワイでは「ホヌ」と呼ばれ、
幸せを運ぶ、海の守り神だ。

その由来として
有名なものに、
海辺で遊んでいた子供たちが
サメに襲われていた時、
自らが子供にばけて身代わりになったという話がある。

そんなウミガメも今では絶滅危惧種。
守り神がいなくなった海は、
どうなってしまうのだろう。

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村山覚 20年5月23日放送


ehnmark
亀の話 亀と散歩

近ごろ、亀と一緒に暮らす人が増えている。
意外と人懐っこく、騒音も立てず、
寿命も長いというのが人気の理由。

亀は自分で体温調整ができないので、
あたたかい場所を好む。
甲羅や骨の成長のためにも、
たまには紫外線にあてて
甲羅干しをした方がいいそうだ。

先月、イタリアの街中で亀と散歩していた女性が
400ユーロの罰金を払う羽目になった。
理由は外出禁止違反。担当の警察官によると
「亀はピザくらいの大きさだった」とのこと。

のんびりと日向ぼっこできる日が、待ち遠しい。

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福宿桃香 20年5月23日放送


Cocoabiscuit
亀の話 ディエゴ

今から半世紀前。
ガラパゴス諸島に生息するエスパニョーラゾウガメは
絶滅の危機にあった。

生き残りはわずか十四頭、
さらにそのほとんどがメスという状況に陥った島に
救世主として送り込まれたのが、
ディエゴと名付けられた一頭のオスだった。

作戦は大成功。
ディエゴはたった1頭で800近い子孫を残し、
今年までに、種全体の数は2000頭を超えた。

ニュースでは「伝説の絶倫ガメ」などと称されてきたが、
専門家によれば、ゾウガメはオスが一方的にメスを支配するのではなく
きちんと関係性を築く生物。
つまり、もっとも多くのメスから
好意を寄せられた個体でもあったというわけだ。

絶滅危惧という彼らにとっての緊急事態の中で
周囲を魅了したディエゴ。
ピンチの時こそ、前を向いていたいものだ。

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仲澤南 20年5月23日放送



亀の話 亀と犬

「カメ、カメ。」
そう呼ばれた先にいたのは、
硬い甲羅を持ったあの生き物ではなく……
犬だった。

明治時代、日本人は西洋の犬を「カメ」と呼んだという。
そのきっかけは、聞き間違いだった。

「明治事物起源」という本によると
西洋人が“come, come.”
つまり「おいで」と犬に声をかけているのを間違えて
カメだと思い、
それがそのまま全国各地へと広まってしまったのだ。
今でも東北地方の一部では方言として残っているという。

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