澁江組・磯部建多

礒部建多 20年8月16日放送

Smarteeee
遺体とダンス

今日は、送り盆。

日本のお盆では、先祖が帰ってくるとされているが、
マダガスカルでは、直接遺体を土から掘り起こす。

ファマディハナと呼ばれるその儀式は、数年に一度行われる。
埋葬された遺体を掘り起こし、新しい布で巻き直した後、
ご馳走を頂きながら談笑したり、楽隊の音色に合わせて踊るのだ。
生前と変わらずに愛する者と遺体と、
再会を楽しむのだと言う。

死者は遺体が完全に朽ちるまでは、
地にとどまると考えられており、
それは「第二の生」として見なされる。

今では、ペストの流行に関係するなどの懸念も指摘され、
実施の数こそ減ってはいるが、
その死生観は、人々の中に根付いている。

生と死。
その間にあるものに向き合うことこそ、
人間らしさなのだと思わされる。


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礒部建多 20年8月16日放送


エコ葬儀

今日は、送り盆。

ご存知だろうか。
一人の人間の火葬において、
約300kgのCO2を排出することを。
これは人の一年間の生活における排出量に近い値である。

昨今、環境問題への関心の増加から、
「エコ葬儀」なるものが取り入れられている。

木材の棺の消費を抑え、
燃焼時間の短い紙製の棺を使用することで、
省エネを図る事が狙いだと言う。

環境への配慮は、素晴らしいことである。
と前置きをした上で、
自分の愛する人を送る瞬間に、
「エコ」や「省エネ」などの言葉を用いられてしまうのは、
なんだかとても寂しい気がしてしまう。

それは「言葉」の選び方の問題な気もするが、
「死」と言う事柄への配慮が足りない気がしてならない。


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礒部建多 20年6月21日放送


神送り

人類は遥か昔から
疫病と向き合ってきた。

医療が発達していなかった頃、
疫病は悪い神が流行らせるものだと思われていた。

そんな邪神を送り出す「神送り」の儀式を、
落語の題材にしたものがある。その名も「風邪の神送り」。

町の人々が風邪の神を、
鐘や太鼓で囃し立てながら隣の町まで送っていく。
終いには川や海へ流してしまう。

しかし、「お名残り惜しい」と言う奴が現れる。
誰かと思ったら町内の薬屋であったのだ。

その夜、川に流れた風邪の神は、漁師の網に引っかかる。
発見した漁師が一言、「夜網に付け込んだな」と言って、
「弱み」にかけるのがオチである。

目には見えない敵を、漫談にして笑い飛ばす。
疫病も、人間の知恵とユーモアには敵わない。


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礒部建多 20年6月21日放送


久松留守

人類は遥か昔から
疫病と向き合ってきた。

江戸時代。インフルエンザは、
「お染風邪」と呼ばれ恐れられていた。
対して人々は「久松留守」と書いた紙を
玄関や軒先に貼り付けて、疫病退散を願ったと言う。

これは、当時大流行した、
歌舞伎演目の「お染久松」に因んでいると言う。

内容は、お染と久松と言う男女の恋物語。
要は、「あなたの好きな久松さんは
留守をしておりますので、この家に来ないでくださいね」
と言うことらしい。

真剣なおまじないでありながらも、
洒落の心を忘れない。
そんな江戸の人々の心持ちに、学ぶことは多い。


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礒部建多 20年4月19日放送


深海生物という先輩

今日はダーウィンの命日。
進化について考えたくなる日。

普段我々のような地上の生物は、
太陽の光をエネルギーに生きている。

一方、深海の生物たちは、
ほとんど光の届かない海底で生きる。
寒い、暗い、食料すら乏しい世界。

しかし、彼らはそんな世界でも優雅に暮らす。
独自の進化によって、生き抜く術を見出したのだ。

自家発電して光るサカナ。
自分の体で食べ物を作りだすカニ。
毒ガスを栄養に変えてしまうムシ。

不自由な状況を嘆かずに、自らを進化させる姿に、
今我々は学ぶことが多い。

太陽の光にも当たらず、家の中にいる時間は長くなる。
しかし、そんな生活すら優雅に過ごす進化を、みんなで考えてみよう。

深海生物にできるならば、人間にだってきっとできる。


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礒部建多 20年4月19日放送


狩猟採集民の本能

今日はダーウィンの命日。
進化について考えたくなる日。

人類の歴史の9割以上は、
狩猟採集民として過ごしてきた。

だからこそ、常に変化する環境に適応するのは得意だが、
定住して同じことを繰り返す毎日は、生理的に耐えられなくなる。

その結果、本能的に外に出たくなってしまう。

しかし、それは過去の話。
いわんや現代においては外なんかに出ずとも、
新しいコトやモノに出会える。

集わなければできなかった、
飲み会さえも、今や遠隔で楽しめる。

体に組み込まれた、
狩猟採集民としての本能などに耳を傾けず、
現代人らしく、生活に変化を起こしてみよう。

想像力さえあれば、どこにいても人生は楽しめる。


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礒部建多 20年2月15日放送

rhosoi
発酵と解毒

発酵しなければ、
食べられなかったものがある。

それは、フグの卵巣である。
青酸カリの1千倍とも言われる猛毒、
テドロトキシンが含まれているからだ。

石川県の郷土料理に、
フグの卵巣のぬか漬けがあるのを、ご存知だろうか。

4年もの時間、ぬかに漬けることで、
ぬか味噌の中に存在する乳酸菌が、卵巣の中で増殖。
テドロトキシンをエネルギーとして取り込むことで、
やっと解毒され、食すことができるのだ。

その味は濃厚で、
漬ける期間が長いせいもあり、
塩気がかなり強いのも特徴。酒の肴として好まれる。

高血圧の人にとっては、
ある意味「毒」なので、注意すべし。


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礒部建多 20年2月15日放送

autan
くさや菌

くさやをつくるのは、
乳酸菌の一種の、くさや菌である。

くさや菌は、とても働き者であり、
もちろん上司の指示なんかなくとも、
テキパキ働いて、発酵を進めてくれる。

魚の内臓と塩水からなる「くさや液」の中に、
ムロアジなどの魚を漬けると、
くさや菌が、タンパク質や脂質を分解し、
旨味や、さらには抗菌性物質までを生み出す。
まさに、期待を超える働き。

しかし、漬けすぎれば、菌は減少する。
働かせすぎは、菌もご勘弁なのだ。
大切なのは、休ませること。
人も、くさや菌も、同じである。

老舗店のくさやが旨い理由。
それは、
くさや菌が働きやすい環境を整え続ける、
文字通りの優良企業だからである。


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礒部建多 19年12月15日放送


魯山人のすき焼き

冬といえば、あたたかい鍋。

甘辛く煮たすき焼きは、定番とも言える。
しかし、北大路魯山人は、それを「甘くどい、ごちゃ煮」と酷評する。

決して、すき焼きが嫌いだった訳では無い。
魯山人なりのすき焼きの食べ方があったのだ。

まず、霜降りの牛肉を焼き、
すぐに酒を入れ、醤油と僅かなみりんで味をつけて、
焼きあがったら大根おろしを載せて食べる。砂糖は加えない。

その後、昆布と鰹の合わせだしを鍋に足し、
豆腐、白葱、春菊、椎茸などを入れて味をつけて煮込み、
それらに大根おろしを載せて味わう。

肉と野菜を一緒に煮込まずに、焼いては食べる、を繰り返すのだ。

今宵、魯山人の食べ方を試してみるもよし。
あなただけの食べ方を探すもよし。
鍋ほど、自由な料理はないのだから。


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礒部建多 19年12月15日放送

GetHiroshima
水軍鍋

冬といえば、あたたかい鍋。

日本津々浦々、
風土が生んだ数々の鍋料理がある。

その中でも、
“水軍鍋”という響きは、異彩を放つ。

瀬戸内海の海老や蟹、鯛やサザエに蛤などの魚介類と
海草をふんだんに使い、昆布などを使った出汁で煮込んだ鍋料理。
今も、広島県尾道市や愛媛県今治市周辺で食べられている。

戦国時代にかけて因島を拠点に
活躍した海賊・村上水軍が出陣する際、
必勝祈願と士気向上のために食べていたのがその発祥とされる。

特に「八方の敵を喰う」という意味で、タコは必ず入れたと伝えられる。

鍋で験を担ぐ。
しかしそれ以上に、
一つの鍋を囲むことで、結束を強めていたのだろう。


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