蛭田組・森由里佳

森由里佳 20年7月12日放送

nakimusi
涼をたのしむ 打ち水

暑い夏、アスファルトからたちのぼる熱気を鎮めるかのように、
優雅に動く柄杓ときらめく水しぶき。

パシャッ、パシャッと小気味いい音を立てて撒かれる”打ち水”は、
客人を茶室に招き入れる前、地面を清めるために行ったという、
茶の湯の文化が起源だそうだ。

家族や道行く人が、すこしでも涼やかに過ごせるように。

人に水がかからぬよう、手際よく打たれるそのきらめきは、
打つ人の心配りをそのまま映し出す。

うだるような暑さでも、心にすうっと涼しい風が吹く。
打ち水の効果は、そんなところにもあるようだ。


topへ

森由里佳 20年7月12日放送


涼をたのしむ 水うちわ

透明なうちわがあるのをご存じだろうか。
骨が透けて見えるほどうすい和紙がはられ、
破れぬようにニスが塗られたこの美しい扇は、水うちわと呼ばれている。

うちわを水にひたしてから扇ぎ、その気化熱で涼む、明治時代のアイデアだ。

アイデアの故郷は、岐阜県。長良川が流れる水の街だ。
人々は、舟遊びの際に川の水に浸しては扇ぎ、涼をとっていたのだという。

一時は継承者が途絶えた水うちわ。
しかし、最近になって復刻し、今では毎年完売するほどの人気だそうだ。
電気も電波もない時代。
そのアイデアは、いつの時代にもやさしくフィットする。


topへ

森由里佳 20年6月14日放送


危機一髪  上羽絵惣(うえばえそう)の仕事

1751年からつづく、上羽絵惣。
日本画に使う顔料の胡粉をあつかう京都の老舗だ。

10代目を継いだのは、石田結実さん。
実は、家業を継ぐと同時に多額の借金も引き継いでいた。
廃業も頭をよぎったが、職人たちの背中を見て心機一転。
胡粉の持つ1200色もの和の色をいかした、胡粉ネイルを売り出した。
日本ならではの美しいカラーをそろえた胡粉ネイルは瞬く間に大人気。

上羽絵惣の仕事は、絵具屋ではなく、世の中に色を提案する仕事。
そう捉え直したことで、彼女の世界は鮮やかに色づいたのだ。

危機一髪は乗り越えるためにある。


topへ

森由里佳 20年6月14日放送

Rollofunk
危機一髪  21代目の苦戦

1625年創業の、埼玉のとある造り酒屋は、
昭和になってから、ウイスキー造りも始めていた。

しかし、21代目が家業を継いで間もなく、
経営は危機に直面する。蒸溜所は売却され、
20年物の原酒およそ400樽を破棄しなければならない状況にまで陥った。
21代目は奔走して樽を守り抜き、新たに蒸留所を設立する。

その名は秩父蒸溜所。
今や日本が世界に誇るシングルモルトウイスキー
イチローズモルトを生み出す新進気鋭の造り手だ。

肥土伊知郎社長の夢は、
秩父蒸溜所で造った30年物を飲むこと。
つまり、それまで事業を存続させること。

秩父の樽には今も、肥土の決意が眠っている。

危機一髪は乗り越えるためにある。


topへ

森由里佳 20年5月10日放送


ナイチンゲール

「包帯と消毒液が足りないので、在庫を使いたい」
看護教育の母・ナイチンゲールはそう言って、軍医長官に詰め寄った。
しかし長官は、軍のルールを知らない彼女を笑い、
3週間後の委員会の決定がないとその箱は開けられない、と伝えた。

ナイチンゲールは、箱の蓋を叩き割った。
「開いたじゃないの。持って行きますからね」

いのちが失われようとしている瞬間に、
ハンコリレーに付き合ってはいられない。
いつの時代も医療現場の人びとは、
いのちのためにまっすぐ突き進む。

医療従事者への感謝を込めて。


topへ

森由里佳 20年5月10日放送


ナイチンゲール

1853年、看護の世界が変わろうとしていた。

ナイチンゲールが、
ロンドンのある病院の看護監督に着任したのだ。

母や姉は大反対。
当時のイギリスでは、看護師は病人の単なる召使いとされ、
未亡人や職を失ったメイドが行き着く末のものとされていたからだ。

それでも彼女は
各地の病院の状況を調べて
専門教育を受けた看護師の必要性を訴え、
実際に従軍して兵士を救い、
時にはヴィクトリア女王まで味方にしながら、
着実に看護師の功績を内外に示していった。

看護教育の母と呼ばれる女性は、
看護師という職業に誇りを与えた女性でもある。

医療従事者への感謝を込めて。


topへ

森由里佳 20年4月12日放送


パンの話 パンがなければ

「パンがなければケーキを食べればいいじゃない」

マリーアントワネットが言ったとか言わないとか、
諸説あるこの言葉は、無知への揶揄として使われる。

ところが実際は、
フランス語を英訳したものを和訳したせいで広まってしまった誤りだという。

原文では、ケーキではなく、ブリオッシュ。
バターや卵を使う贅沢品とされるが、
等級の低い小麦で作ることもでき、
パンの代用品として半額ほどの価格で売られていたのだ。


2020年4月。
いろんな憶測が飛び交うこんな春だからこそ、
凛とした心を忘れずにいたい。


topへ

森由里佳 20年4月12日放送


パンの話 家で楽しむ

朝、トースターからただようパンのにおい。
香りの五線譜をたどって深呼吸すれば、
胃袋がグゥゥと歌いだす。

そのままかぶりつくのもいいが、
とけたバターが滲み込んだ
こがね色を楽しむのもいいし、
鮮やかなベリーのジャムの
てらてらとした輝きを楽しむのもいい。

ゆっくりとふたつに割れば、
白いふかふかの生地から
もわりと湯気がたちのぼる。
朝の光に湯気を透かせば、
光にきらめく粒たちが
ゆらりゆらりと遊んでいる。

いつもより、ゆっくり観察してみよう。
家にいても、世界はけっこう、おもしろい。


topへ

森由里佳 20年3月8日放送

World Economic Forum (www.weforum.org)
彼女に感謝 緒方貞子

去年の秋、ひとりの女性が亡くなった。
日本人で初めて国連難民高等弁務官を務めた、緒方貞子さんだ。
彼女は言った。

日本のあらゆる若い世代に、
『何でもみてやろう』『何でもしてやろう』という姿勢を、
意識的に持ってもらいたいと思います。

多くの難民のみならず、
多くの日本人女性に勇気を与えてくれた緒方さん。
姿勢をただして、1歩ずつ進んでいきたいところです。

今日は国際女性デー。


topへ

森由里佳 20年3月8日放送

The Official CTBTO Photostream
彼女に感謝 中満泉

国連事務次長を務める中満泉さん。
2018年、フォーチュン誌の
「世界の最も偉大なリーダー50人」に選ばれたほどの彼女は、
一体どうやって巨大な課題に挑んでいるのだろうか。

課題はたくさんあるので、自分が興味ある事を追求していけばいい。
安全保障、人権、女性、気候変動など。
そういう人たちが増えていくと、全体的に色々な課題が考えられると思います。

そうだ。課題は、気候変動や外交問題だけじゃない。
私たちにできることは、興味の数だけある。
なんだか背中を押していただきました。

今日は国際女性デー。


topへ


login