2020 年 1 月 のアーカイブ

熊埜御堂由香 20年1月26日放送


白のはなし  白衣の天使

白衣の天使と呼ばれたナイチンゲール。
当時、看護師の仕事は、病人の召使いで、
専門知識の必要がない女性の職業と捉えられていた。

裕福な家庭に生まれた彼女は、
両親の反対を押し切り、看護師の仕事に従事し、
1854年のクリミア戦争で活躍した。

その後、様々な医療現場の改革を提言し、看護学校を設立。
この職業の地位向上のために90歳まで力を尽くした。

ナイチンゲールが残した言葉がある。

 女性よ、自立しなさい。
 自分の足で立ちなさい。


白衣の天使は、潔白な強さで
たくさんの女性たちの背中に
勇気の羽を与えたのだ。


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小野麻利江 20年1月26日放送


白のはなし  白いウサギにまつわる逸話

真っ白なウサギが出てくる夢が、
見た人に幸運をもたらす吉夢とされているように。

古今東西、「白い」ウサギが出てくる逸話は、
善きことの象徴であることが多い。

中世ヨーロッパの宗教画の中で
聖母マリアの足元に、ウサギが白い姿で描かれている場合、
ウサギが象徴する「色欲」に、
マリアの「純潔」が打ち勝つことを示している。

ブッダの教えに近いとされる「原始仏典」の中にも、
白ウサギとして生を受けたかつてのブッダが、
弱った聖者のために、みずから火の中に飛び込み
白ウサギの肉を食べさせた、という教えがある。

我が国で真っ先に思い浮かぶのは、「因幡の白兎」。
サメに体の皮を剥かれ、
真っ赤になって泣いているウサギに
真っ白な毛皮が戻る方法を教えた大国主命は、
美しい八上比売(やかみひめ)の心を射止めることができた。

新しい1年がはじまって、もうすぐ1ヶ月。
真っ白なウサギに出会った時のような素敵な予感に、
今年、あなたも出会えるといいですね。


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茂木彩海 20年1月26日放送


白のはなし  純白の由来

「白」にも乳白色やオフホワイトなど様々な言葉があるが
「純白」というと、単に色を説明するだけではなく
「混じり気のない清らかなイメージ」を
伝える言葉としても使われている。

この「純白」という言葉の出典は、
意外にも古代中国の文献『荘子』まで遡る。

とある老人が井戸から水を汲み、畑にまいていたところに
たまたま通りがかった若者。
機械があればはかどりますよ、と声をかけると、老人はこう答えた。

仕掛けを使うものは必ずからくり事をする。
からくり事をする者は必ず何かをたくらむ。
たくらみが心の中にあると、純白な本来の心がなくなる。
純白な心がなければ、精神が安定しなくなる。

「純白」とは本来、「白色」を示す言葉ではなく、
「清らかな心」そのものを指す言葉として使われていた。

年が明けて、1月も下旬。
荘子の教えに従って、自分の中の純白を大切に、この1年を過ごしたい。


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熊埜御堂由香 20年1月26日放送

PazGomez
白のはなし  ポルボロン

スペインのアンダルシア地方の修道院で、
7世紀ごろ生まれた伝統菓子、ポルボロン。
口に入れた途端、粉雪のようにホロリととける食感から
塵や埃を意味する、Polvo (ポルボ)
という言葉から名付けられた。

小麦粉にたっぷりバターを混ぜ込んだクッキーで、
表面を白い粉雪のようなお砂糖が包み込む。
食べ終わるまでに「ポルボロン、ポルボロン、ポルボロン」
と3回唱えることができたら幸せになれると言われている。

白くてコロンとしたお菓子は、
数えきれない人々を幸せな気持ちにして、
今も世界中で愛され続けている。


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若杉 茜 20年1月26日放送


白のはなし  白い雪

江戸中期に活躍した画家、伊藤若冲。 
その展覧会に多くの人が押し寄せたことは記憶に新しい。 
彼は、白い雪を愛した画家だった。 
 
日本画で一般的に使われる、貝殻から作った1種の白の塗料のみを使い、 
考えられないほどの様々な雪を表現した。 
 
椿の上に厚く積もるこんもりとした雪、 
葉の上の少し溶けかかった雪、 
ひさしの影になった、少し硬く鈍い色の雪。 
 
それらを、塗料の塗り重ねや、濃さ、 
そしてある時には裏から塗り足すことにより繊細に表すのだ。 
 
年が明け、寒さも深まる今日この頃。 
雪景色に出会えた時は、若冲の繊細な雪に想いを馳せたい。


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熊埜御堂由香 20年1月26日放送

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白のはなし  白の慣用句

真っ赤な嘘、白黒つける、黄色い歓声…。
日本語には、目に見えないものを色にたとえて
表現する言い回しが多数ある。

中でも「白」を使った慣用句や熟語は多い。
白を切る、白紙に返す、白い目で見る。
清廉潔白もあれば、顔面蒼白もある。
明るくピュアなイメージの「白」でも
その意味はただ明るいものばかりではない。

英語でもwhiteを使った慣用句がある。

たとえば、“white lie”は「白い嘘」。
誰も傷つけることのない小さな嘘は
嘘だというのに罪がなく、むしろ愛とか優しさを秘めている。

白は、前後の言葉との組み合わせで
変幻自在に意味を変えていく。
それこそが、何色にも染まらない、
白だからこそのなせる業、なのかもしれない。


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石橋涼子 20年1月26日放送


白のはなし  雪の不思議

今年の冬は雪が少ないが、
それでも日本各地で真っ白な風景を見ることができる。

そんな景色を眺めていた、とある子どもの疑問。
なぜ雪は白いの?

確かに。
雪の結晶を拡大すると、氷と同じように透明なのに、
ふんわりと積もった雪は真っ白だ。

これは、複雑な形をした雪の粒が、光の波長を乱反射させて
すべての色が混じって見えるから。
「光の三原色」で教わるとおり、
光は、すべての色が混じると白になる。

何色でもない白は、いろんな色でできている。
雪の不思議は、光の不思議。


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石橋涼子 20年1月26日放送


白のはなし 白い雁

古代中国の有名な思想書『老子』には、
こんな言葉がある。

白い雁は水を浴びずとも白し。

これは、人が自分自身であるために
何かをする必要はない。
ありのままの自分でいれば良い
という教えだ。

まだ始まったばかりの令和2年。
ああなりたい、こうしたい、と張り切るのも良いけれど、
程よく力を抜いて、
まっさらな自分と向き合おう。


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野村隆文 20年1月25日放送

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サマセット・モームの秘密

今から150年ほど前のこと。
パリのシャンゼリゼに、「美女と野獣」と噂された夫婦がいた。

大使館の顧問弁護士をつとめる教養人の夫と、
名家の出身で、たいそう美人な妻。
パリの社交界でも花形だったその夫婦に、1874年の今日、
六人兄弟の末っ子が生まれた。

少年の名は、サマセット・モーム。
のちに「月と六ペンス」を執筆し、
世界的なベストセラーとなる。

 思い煩うことはない。人生に意味はないのだ。

と語った大作家の、数奇な人生がはじまった。


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野村隆文 20年1月25日放送


サマセット・モームの秘密

サマセット・モーム。
数々のベストセラーを生んだ大作家には、
実は裏の顔があった。

語学が堪能で、旅行好きだったモームは、
あのジェームズ・ボンドと同じイギリスのスパイ機関
MI6に所属していた。
コードネームは“サマーヴィル”。

1917年には、革命の渦中であるロシアにも潜入。
後にその経験を下敷きに、
スパイ小説の古典『アシェンデン』も執筆している。

 矛盾だらけのさまざまな性質を
 束ねたものが人間だ


激動の時代に作家をつづけていくための、
一級の処世術だったのかもしれない。


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