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藤本組・村山覚

村山覚 18年9月8日放送

180908-03
星のはなし ハレー彗星

西暦1835年の秋。76年ぶりに地球に近づいた
ハレー彗星が世界中で観測されていた。

ちょうど同じ頃、アメリカ・ミズーリ州で
ひとりの男の子がこの世に生をうけた。
ミシシッピー川のほとりですくすくと育ったサム少年は、
船舶の水先案内人や新聞記者を経て、小説家になる。
彼の代表作は「トム・ソーヤーの冒険」。
マーク・トウェインというペンネームは
日本人にもお馴染みだろう。

時は流れて1909年。彼は自分の死期が近づいていることを
悟ったのか「来年また彗星がくる。私は彗星とともに
この世を去りたい」と告げた。
そして1910年。ハレー彗星がもっとも地球に近づいた日の
翌日にマーク・トウェインは静かに息を引き取った。

彗星に乗って地球にやってきたかのような男の生涯。
彼が紡いだ物語は、これからもなお輝き続ける。


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村山覚 18年9月8日放送

180908-04
星のはなし 冥王星

水金地火木土天冥海

あれ?自分が習ったものと違う、と思われた方もいるかもしれません。
地球から48億kmも離れた冥王星にまつわる壮大な物語。

冥王星が発見されたのは1930年。
1979年から1999年までは海王星よりも太陽に近いところを
まわっていたため、当時の学校の授業では
<水金地火木土天冥海>という順番で惑星を覚えた。

しかし今現在、学校で習うのは<水金地火木土天海>。
外側に次々と新しい天体が発見されたことや、
冥王星のサイズや質量が思いのほか小さかったこともあり、
国際天文学連合によって「惑星ではない」と定義されたのだとか。

そんな冥王星までたどり着いた小型探査機がある。
名前はNew Horizons。太陽電池ではなく原子力電池を搭載し、
8GBのメモリで写真を記録。奇しくも冥王星が惑星ではないとされた
2006年に地球から打ち上げられ、9年半かけて冥王星に接近。
何度かトラブルに見舞われながらも、多くの写真を撮影・送信。

New Horizonsには、冥王星を発見した天文学者の遺灰も載っていて
今もなお宇宙空間を飛びつづけている。


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村山覚 18年9月8日放送

180908-05
星のはなし 人工流れ星

いつの時代も、国や宗教、言葉が違えど
人々はまたたく星に魅せられてきた。
コンパスやGPSがなかった時代は
方角や季節を知るために星が活用されていたし、
星座にまつわる物語は世界中にある。
そして、人々が崇めたり、時に恐れたり、
願いを込めたりしてきたものといえば、流れ星だ。

いつどこに現れるか予測できず、見えたとしても
1秒ほどで消えてしまう儚い存在。そんな流れ星を
人工的につくろうというプロジェクトがある。

上空400km。地球上を周回する小型の人工衛星から
直径1cmの金属粒を放出。何十もの流れ星が
5秒から10秒間、夜空を彩るという。

予定では2年後に、広島にて。

この星の平和を願う人たちが、
宇宙初の流れ星を見上げるだろう。


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村山覚 18年8月25日放送

180825-02 Stefan Sjögren
空港のはなし ストックホルム・アーランダ空港

ストックホルム・アーランダ空港。
誘導路の横に10年以上動いていない
ジャンボジェット・ボーイング747が停まっている。

ジャンボ機の真下で記念撮影をする旅行者もいれば、
大きな翼の上を歩く人も。翼の下にある
4つのエンジン部分にはなぜかドアが付いている。
飛行機内に入ると制服を着たクルーはいるが、
離陸の準備をする様子もなくにこやかに接客している。

実はこのジャンボ機、現在は宿泊施設として営業中。
2002年までは世界中を飛び回っていたが、
今は1マイルも動かずに、
世界中からやってくる航空ファンを楽しませている。

操縦桿が残るコックピットや、
ジェットエンジンがあった場所のベッドで見る夢は……
やはり大空を飛ぶ夢なのだろうか。


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村山覚 18年7月28日放送

180728-01
海の印象 クロード・モネ

印象派の画家、クロード・モネは
フランスの港町ルアーブルで育った。
30歳を過ぎた頃、故郷に帰って海を描いた。
タイトルは『印象、日の出』。

きらめく海、朝もやに包まれた空、
昇ったばかりの真っ赤な太陽。
当時の美術界では、ものや人物を
正確に再現した絵が良しとされた。
筆の跡が目立ち、舟も水平線もぼやけた
モネの絵は“印象で書きなぐった落書き”と
揶揄された。

モネは86歳で亡くなるまで、
この世界の印象を明るい色彩で描きつづけた。
刻一刻と変化する海や空、人間や植物が
輝く瞬間をキャンバスに閉じ込めた。

100年以上前のモネの気持ちと、
スマートフォンで海や空を撮影する
私たちの気持ちは、
きっとどこかで繋がっている。


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村山覚 18年7月28日放送

180728-04 Photo by Masaaki Komori on Unsplash
海の底へ リンゴ・スター

イギリス北西部の港町で生まれ育った
ジョン、ポール、ジョージ、リンゴ。
言わずと知れた、ザ・ビートルズ。
彼らは海にまつわる曲を何曲か残している。

もっとも有名な曲は「Yellow Submarine」だろう。
リンゴ・スターによる優しくほのぼのとした歌声が
印象的だ。しかし今日ご紹介したいのは
リンゴが作詞作曲を手がけた「Octopus’s Garden」。
ユニークな歌詞と親しみやすいメロディで描かれる
“タコの庭”は、地上のどんな庭よりもハッピーで
居心地が良さそうだ。

解散直前の数年間、4人の仲はギクシャクしていた。
リンゴは一番温厚な性格だったそうだが、
ドラム演奏にケチをつけられて「やめてやる!」と
スタジオから出ていったことも。
そんな悩ましい時期、地中海でバカンスをしていたら
タコ料理が出てきた。“タコは小石や光るものを集めて
海底に庭を作る習性がある”と聞いた彼は、
Octopus’s Gardenに君と行きたいという曲を書いた。

人間関係に悩んだ時、海でひと潜りしてみれば
タコが出迎えてくれるかもしれませんよ。



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村山覚 18年2月17日放送

180217-02 Allagash Brewing
作曲家の朝食 ベートーヴェン

一杯のコーヒーはインスピレーションを与え、
一杯のブランデーは苦悩を取り除く。

作曲家・ベートーヴェンの一日は、コーヒー豆を数えることから始まる。
豆の数は、毎朝決まって60粒。
1粒ずつ正確に数えて、満足げに豆を挽くもじゃもじゃ頭の男。
その姿を想像するだけで、なんだか可笑しい。

耳が不自由で、テンポを正確に刻むメトロノームを愛用したという
ベートーヴェンのことだから、コーヒーミルをがりがりと回すリズムも
きっと一定だったろう。

4拍子?それとも3拍子?毎朝同じ数の豆を挽くという単純作業は、
さながら、オーケストラが演奏会の前に行うチューニングのようだ。
はじまりの合図であり、体と心を整える儀式。

さあ、はじめるぞ。がりがりがり。


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村山覚 17年12月16日放送

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電話のはなし スティーブ・ウォズニアック

1971年。
21歳のエンジニア、スティーブ・ウォズニアックは
年下の友人スティーブ・ジョブズに興奮しながら電話をかけた。
雑誌で見かけた「小さなブルーボックスの大きな秘密」という
記事の内容をジョブズに読んで聞かせた。

ブルーボックスとは電話をタダでかけられる機械。
二人のスティーブは改良したブルーボックスを製作し
世界中にいたずら電話をかけた。ウォズは言う。

 僕のエンジニアリング力と
 彼のビジョンで何ができるのか、
 それがなんとなく分かったのは大きかった。


その後、彼らは違法なハッキングツールではなく
Appleという名のコンピュータをつくり始める。

時は流れて、2011年。
ジョブズが亡くなった直後に販売されたiPhone 4Sを
求める行列に盟友ウォズもいた。あの一本の電話がなければ
存在しなかったかもしれない「小さなスマートフォン」は
いま世界中の手の中にある。



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村山覚 17年9月30日放送

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翻訳のはなし 村上春樹

村上春樹。
日本を代表する小説家であると同時に、翻訳家でもある。

  翻訳というのは言い換えれば、
  「もっとも効率の悪い読書」のことです。
  でも実際に自分の手を動かして
  テキストを置き換えて行くことによって、
  自分の中に染み込んでいくことはすごくあると思うんです。


机の左手に気に入った英語のテキストを置き、
それを右手にある白紙に日本語の文章として立ちあげていく。
村上春樹が翻訳をする理由。

  僕は文章というものがすごく好きだから、
  優れた文章に浸かりたいんだと思います。

高校時代からアメリカ文学にどっぷりと浸かり、
独特のリズムと文体を確立。
「たまたま日本語で書いているアメリカの作家」とも言われる
彼の小説を、時には英語翻訳版で読んでみるというのも
悪くない選択だ。

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村山覚 17年6月10日放送

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時の記念日 上原ひろみ「Time Travel」

ジャズピアニスト、上原ひろみは
10年前に「Time Control」というアルバムを出した。
収録曲はすべて《時間》をテーマにしている。

音楽は、時間の芸術であると言われる。
ミュージシャンが放つ一音一音は
矢のように飛んで、あっという間に消えていく。

アルバムの3曲目「Time Travel」という
曲の解説で、上原ひろみはこう綴っている。

 研究に研究を重ねても、出来ない時間旅行。
 科学的には無理でも、心の中では常にしている。
 過去を思い、未来を想う。


いまこの瞬間に聴いた音は、二度と戻ってこない。

しかし私たちは、
ラジオから好きな曲が流れてきた瞬間、
時間も空間も飛び越えられる。
そう、音楽はタイムマシンなのだ。

きょうは、時の記念日。


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