名雪祐平

名雪祐平 18年12月29日放送

181229-01 Mohafiz M.H. Photography (www.lensa13.com)
普通の赤ちゃん

 It’s a girl.
 女の子だ。


医師は、帝王切開によって
その赤ちゃんをとりあげた。

1978年、7月25日、午後11時47分。
体重5ポンド12オンス。
元気な産声が響きわたる。

普通の出産シーンと、何ら変わらない。
唯一、違うこと。

女の子は、
世界初の試験管ベビーだった。

誕生の歴史的瞬間を
目撃するのなら、
YouTubeへ。

“First test tube baby Louise Brown (1978)”


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名雪祐平 18年12月29日放送

181229-02
普通の赤ちゃん

世界で初めて、
体外受精で産まれた赤ちゃんを
世界中は、こう呼んだ。

 試験管ベビー

生まれてすぐ、
調べた医師は、
最初に言った。

 普通の赤ちゃん

両親は、
普通の女の子の名前にした。

 ルイーズ・ブラウン

医師は、喜びを意味する
ミドルネームを
つけてくれた。

 “JOY”

これから全世界の人々と
喜びを分かち合うように、と。


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名雪祐平 18年12月29日放送

181229-03
普通の赤ちゃん

40年前、
世界初の体外受精によって
生まれた女の子、ルイーズ。

その誕生は、何を意味するのか?

科学者や宗教指導者から
一般市民まで巻きこみ、
世界中、賛否両論。

でも、ずっと不妊に悩んでいた
ルイーズの両親にとっての意味は、
たったひとつ。

 ついにできた、
 私たちの赤ちゃん!


家族を非難したり、
嫌がらせの手紙がつぎつぎ届いたが、
その一方で、
子どもに恵まれない世界中の夫婦から、
祝福の手紙が何百通と届いた。

ルイーズは、
新しい希望の子になった。


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名雪祐平 18年12月29日放送

181229-04 Maurice Pullin
普通の赤ちゃん

世界初の試験管ベビーと呼ばれた
ルイーズ・ブラウン。
今年、40歳になった。

ルイーズには魂がない、と
非道い言葉を浴びせられた過去もあった。

でも、それから体外受精で生まれた
赤ちゃんは、世界で800万人。

日本でもいま、
18人に1人が体外受精で生まれる。

とっくにもう、試験管ベビーという
特別な存在ではなく、

普通の赤ちゃん。

ルイーズはいま、
イギリス西部の港町で、
配送会社に勤めている。

ほかのみんなと同じように、
大人になり、
普通の女性になった。

生まれてくるのに、
科学の力を、
すこし必要としただけ。

ほかのみんなと、なんにも変わらない。


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名雪祐平 18年12月29日放送

181229-05
普通の赤ちゃん

中国で生まれた
双子の女の子、ルルとナナ。

その存在が、
世界を驚愕させた。

世界最大級のタブー。
ヒトの遺伝子を操作する
ゲノム編集によって生まれた、
と、中国の研究者が突然発表したのだ。

世界中から批判が殺到。
当の研究者は、
勤務する大学当局によって
軟禁されたという。

まだ謎ばかり。

ただひとつ、言えること。
ルルとナナは、生きている。
そしてこれからも、生きていく。

ルルとナナに、何も罪はない。
かけがえのない命があるだけだ。


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名雪祐平 18年11月24日放送

181124-01 Photo by Andrey Câmara on Unsplash
種の起源

バナナの遺伝子と、
ヒトの遺伝子。
その約60%は共通しているという。

全ての生物は、
一種、あるいはほんの数種の祖先から
進化したもの。

チャールズ・ダーウィンは
『種の起源』の中で、そう論じた。

運が良いのか、悪いのか。
わたしたちは
バナナにならず、ヒトになった。


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名雪祐平 18年11月24日放送

181124-02
種の起源

戦争でも、天変地異でもなく、
一冊の書物が、
世界をひっくり返すことがある。

159年前のきょう、11月24日。
チャールズ・ダーウィン
『種の起源』が出版された。

その直筆原稿が
ウェブサイト darwin-onlineで
公開されている。

一冊の革命を見よ。


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名雪祐平 18年11月24日放送

181124-03 ©️ Linda Hall Library
種の起源

1831年、ダーウィンは
イギリス軍艦ビーグル号に乗った。
生物学史上、最も重要な航海となる。

絶海のガラパゴス諸島で、
フィンチという鳥を見て、
ダーウィンはショックを受ける。

くちばしの形状が、島ごとに異なっていたのだ。
島によって違う餌を捕まえやすいように。

これは神様が、最初から島ごとに創造した鳥なのか。
それより、島ごとに独自に進化した結果ではないか。

そんな疑問が、
進化論『種の起源』の着想につながった。


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名雪祐平 18年11月24日放送

181124-04
種の起源

われわれは、どこから来たのか。

この世の全ては、神様が創造したもの。
というキリスト教的な考えは、
根強く信じられていた。

この神の創造説を、
真っ向否定するダーウィンの進化論
『種の起源』は衝撃だった。

英国国教会は、激しく非難した。
サルの祖先と一緒にするな!

ダーウィンは皮肉った。
 
 この理論が受け入れられるのには、
 種の進化と同じだけの時間がかかりそうだ。


ようやく150年後、英国国教会は
これまでの誤りをダーウィンに謝罪した。

ダーウィンの予想よりは早かったが。


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名雪祐平 18年11月24日放送

181124-05 Photo by Franck V. on Unsplash
種の起源

人は神になろうとするのか。

人工知能や生命工学など、
テクノロジーの進化が止まらない。

膨大なビッグデータをさらに膨張させながら、
遺伝子を組み換え、臓器を再生し、
不老不死へ近づくのか。

ダーウィンが『種の起源』を
発表してから159年。

どこかで新しい種の起源が
もう始まっているのかもしれない。

わたしたちは、
ほんとうに進化しているのか。
それとも、退化し、滅びるのか。


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