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門田組・高田麦

高田麦 14年8月24日放送

140824-05
トーベ・ヤンソンが見た夢

日本ではかわいらしいキャラクターで知られている
ムーミンの物語は、実はかなり大人向けだった。

物語は、
トーベ・ヤンソンの手によって、
戦争中にフィンランドで生まれた。

次の言葉は、ムーミンママが、ムーミンに投げかけるものだ。

 さあ、あしたもまた長い、いい日でしょうよ。

 しかも、はじめからおわりまでおまえのものなのよ。

 とてもたのしいことじゃない!

ムーミン谷の物語に一貫しているテーマ。
それは、目の前のささやかな幸せは当たり前にあるとは限らない、
ということ。

隣のロシアやスウェーデンなどの強国に
脅かされ続けた小さな国で生まれ育った彼女は、
日常のささやかな幸せこそが夢だと知っていたのだ。


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高田麦 14年8月24日放送

140824-06 VIPlibrary
アルヴァ・アアルトが見た夢

19世紀末に生まれたフィンランドを代表する建築家、
アルヴァ・アアルト。
若い頃は、当時のグローバルな潮流であるモダニズム建築に
必死に食らいつこうとした。

しかし、結局、彼はこんな概念にたどりつく。

 「建築とそのディテールは、ある意味、生物学に属する。」
 「世界中で最もすぐれた規格化委員会は“自然界”である。」

そしてアアルトは、
木材と曲線を特徴とする、フィンランドの自然と風土に根差した
人間が暮らしやすい建築を数多く残した。

ごく普通の人たちのためにこの世のパラダイスを作り出したい
というのが、彼の夢となったのである。


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高田麦 14年8月24日放送

140824-07 mueredecine
アキ・カウリスマキがつくる夢

アキ・カウリスマキは、
社会では陽の当らないひとたちにスポットライトを当てる。
彼の映画を最初に見ると、誰もが面喰うだろう。

登場人物はみな無表情、
極限までそぎ落とされた台詞、
独特の間。

主人公はだいたい徹底的に不幸な目に遭う。
だけれど、そこかしこにただようユーモア。
弱者を弱者としてそのまま認めることが、救いになる。
作り手であるカウリスマキの、圧倒的にやさしいまなざし。

一貫して弱者を題材にする彼はこう言う。

「映画とは、一日一生懸命働いた人がその日の終わりにリラックスし、
楽しむために観るエンターテインメントだ」

彼の映画は、労働者の労働者による労働者のための、
つかの間の夢なのである。


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高田麦 14年2月15日放送


料理する人 森茉莉

真のお嬢様、森茉莉。
16歳まで父の膝の上で育ち、
お嫁に行っても
召使いにごはんを口元まで運ばせた。
 
中年になり貧乏になったときも、
彼女は決して「贅沢」を忘れなかった。
 
食にまつわる彼女のエッセイには、
こんな描写がある。

 マヨネエズの壜を出し、
 鎌倉ハムを出し、
 牛酪(バタ)を出し、

 片兎で卵(かたうでたまご)を出し、
 薔薇色がかった朱色の玲瑯珠(れいろうたま)の如きトマト

 (les tomates vermeilles)を二つ出し…


ただのサンドイッチだというのに、
こだわりが感じられ、実においしそう。
 
彼女にとって
料理をおいしくする一番のスパイスは、
高級な食材でも調味料でもなく、
「贅沢な精神」だった。


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高田麦 13年6月22日放送


夫婦の話(ヒッチコックとアルマ)

一人では天才になれないのかもしれない。

サスペンスの帝王、アルフレッド・ヒッチコックには、聡明な妻がいた。

脚本家として活躍していたアルマ・レヴィル。
よほど重要なことがない限り、
彼女は夫のセットへ姿を見せることはなかったが、
どの映画でも一番信頼できる意見を述べる相談役として、
ヒッチコックのキャリアで重要な役を果たした。

1959年、実在する殺人鬼エド・ゲインの伝記に
強い着想を得たヒッチコックは、
新作映画に取りかかろうとするが、
映画会社には残酷すぎる!と
ダメだしされ資金も集まらない。

自己資産を投入し、ようやく完成した映画は
最初の試写会でも散々酷評されるが、
妻だけが「あなたは編集の天才なんだから、
もう一度やり直せばいい」と励まし続けた。

開始30分でヒロインを殺すというセンセーショナルな展開、
有名なシャワーシーンへの印象的な音楽の挿入、
映画の最終的な編集は、彼女の助言によるものだ。

映画史に残る不朽の名作「サイコ」は、夫婦でつくりあげた映画だったのだ。


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高田麦 13年3月30日放送

thefoxling
チームワーク2 クエンティン・タランティーノ

爽快な黒人西部劇、「ジャンゴ 繋がれざる者」が公開中の
クエンティン・タランティーノ監督。
いつだって、あふれる映画への愛を作品に込めてきた。
彼の撮影現場ではこんな言葉が飛び交う。

テイクを撮り直す時、
タランティーノが「もう1回!」と言うと、
スタッフは「なぜ?」と返す。
そうしたら、監督もスタッフもみんなで
「なぜなら俺たちは映画が好きだから!」と叫ぶ。

まるで、子供同士の合い言葉。
同じものを好きだからこそ、
信頼し合い、まっすぐにゴールへと走っていける。
これを完成まで繰り返すうちに、
タランティーノ組の結束はさらに強いものになっていく。

類は友を呼ぶという言葉があるが
純粋な「好き」を共有できる仲間の仕事は、
よりよいものになるようだ。


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高田麦 13年3月30日放送


チームワーク3 ロバート・キャパ

世界で最高の戦場カメラマンと
称えられることも多いロバート・キャパ。

実は、「ロバート・キャパ」という名前の人間は存在せず、
これは元々、二人組のユニット名だった。

ロバート・キャパこと、
22歳のユダヤ人青年アンドレと3歳年上のゲルダ。
アンドレはゲルダに撮影技術を教え、
ゲルダはアンドレの作品作りにインスピレーションを与えた。

戦場に二人で赴き、写真を撮った。
スペイン内戦中、史上初めて兵士が撃たれる瞬間をとらえた
「崩れ落ちる兵士」という作品は
ロバート・キャパの名前を一躍有名にした。

残念ながらゲルダは内戦中、
27歳の若さで命を落とす。
彼女の死後、アンドレはキャパを名乗り、
より精力的に活動するようになる。

ふたりでひとり。ふたりだからできたこと。


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高田麦 13年3月30日放送


チームワーク5 高畑勲

たくさんの人が関わり、
ひとつの作品ができあがっていく、
アニメーションの制作現場。
いかに、チームとしてまとめていくか、について、
日本を代表する監督・高畑勲は、こう語っている。

チームワークの礎として大事なことは、

仕事の最中というよりは、むしろ、

仕事が佳境に入る以前のことでしょう。


いざ修羅場だというときにも、
おたがいに詳しく話しあわなくても

仕事を進めていけて、
それが悪い結果にならないこと。


仕事を通じてチームワークを築いていく、
というのは、当たり前のことなのかも知れない。
高畑のチームは、その先を行っている。


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高田麦 13年3月30日放送

Bsodmike
チームワーク6 開高健

昭和を代表する文豪、開高健。
彼は、1本の万年筆、
モンブラン149に特別な情を抱き、こう述べている。

こんなに長年一緒に同棲すると、
かわいくてならない。
かわいいというよりは、
手の指の一本になってしまっている。
つねに手もとから話さないようにと心がけているが、
何かのはずみで見つからなくなると。
不安で不安でジッとしていられなくなる。

世の中にはさまざまなチームというものがあるが、
それが、人間同士であるとは限らない。


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高田麦 12年12月9日放送


偶然を集める人 赤瀬川原平

世の中には、
意味のないものを愛でる人がいる。

ただ昇って降りるだけの意味不明な階段、
何を仕切っているのか推察不能なガードレール、
色あせて文字の一部が読めなくなっている看板など…。

70年代、これらの美しさを発見した赤瀬川原平は、
トマソンと名づける。
そして、街中で自分の感性が反応したものに
次々とカメラを向け、採集していった。

今も散歩を続ける赤瀬川の言葉。

 この世は偶然に満ちている。
 街はいづれ老朽化し、その隙間から、
 追い出された偶然がまた顔をのぞかせる。
 カメラにはそれが美味しい。


何の変哲もない風景も、
見る人間次第でまったく違うものとなるらしい。

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