薄組・若杉茜

若杉茜 20年3月29日放送

Pauline-Mak
春野菜のはなし  黒キャベツ

春キャベツは、みずみずしくて柔らかく、
甘い春の訪れを告げる。

ところでイタリアのトスカーナ地方では、
この地方の固定種である「黒キャベツ」が
その役目を担っている。

黒キャベツはケールの仲間の野菜で、
細長く、縮れた葉を持つ。
味が濃く、しっかりとした葉を持つので、
シンプルに茹でて塩をしたり、
さっと炒めたり、コトコト煮込んだり。

故郷のトスカーナ地方には、
豆と固くなったバゲット、
そして黒キャベツを一緒に煮込んだ
リッボリータという郷土料理も。

この春は、
深い深い緑色を持った
黒キャベツを迎えて、
食卓の春の彩りを
さらに豊かにしたい。


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若杉茜 20年2月23日放送


4. 富士山のはなし  芙蓉峰   


2月23日、今日は富士山の日。
富士山は、又の名を芙蓉峰と言う。

芙蓉は花の名であり、
夏から秋にかけて淡い紅色や白色の大きな花を咲かせる。

一日で散ってしまう儚さや、その姿形の美しさから、
しばしば美女を形容する言葉としてもその名が使われてきた。

富士と芙蓉。
そのどちらの名前にも、
二つとない神秘的で美しい山という意味がこめられている。

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若杉 茜 20年1月26日放送


白のはなし  白い雪

江戸中期に活躍した画家、伊藤若冲。 
その展覧会に多くの人が押し寄せたことは記憶に新しい。 
彼は、白い雪を愛した画家だった。 
 
日本画で一般的に使われる、貝殻から作った1種の白の塗料のみを使い、 
考えられないほどの様々な雪を表現した。 
 
椿の上に厚く積もるこんもりとした雪、 
葉の上の少し溶けかかった雪、 
ひさしの影になった、少し硬く鈍い色の雪。 
 
それらを、塗料の塗り重ねや、濃さ、 
そしてある時には裏から塗り足すことにより繊細に表すのだ。 
 
年が明け、寒さも深まる今日この頃。 
雪景色に出会えた時は、若冲の繊細な雪に想いを馳せたい。


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若杉茜 19年12月29日放送


年の瀬のはなし  おせち

お正月の楽しみのひとつ、おせち料理。
おせち、という言葉の起源は古く弥生時代と言われている。
節(せち)といわれる季節の変わり目ごとに、
神様にお供え物をした「節供」(せちく)がその始まりだ。

おせちの料理のひとつひとつに意味が込められるようになったのは
江戸後期のことで、
例えば紅白かまぼこは、「日の出」を象徴する、
年の始まりに欠かせないもの。

昆布巻きは、「喜ぶ」の言葉にかけて、
一族の繁栄を願った縁起物。

黒豆は、「まめ」という言葉が元来意味する
健康・丈夫というところから、まめに働けますように、と。

黄金色の財宝のような栗きんとんは、
豊かな1年を願う。

さて、令和元年もそろそろ終わり。
買うもよし、作るもよし。
新しい年の始まりに、
おせちに顔をほころばせる家々が、たくさんありますように。


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若杉茜 19年11月24日放送


紅葉のはなし 尾崎紅葉

紅葉は世界中で愛される美しい風景だが、
紅葉やその地を愛するあまり自分の名前も紅葉にしてしまおう−−−−
という人はそういないだろう。

明治期に活躍した文豪・尾崎紅葉は、その奇特な人物だ。
東京・港区の芝に生まれ、
生まれ故郷にある増上寺の紅葉山にちなんで
ペンネームを紅葉とした。当時そこには紅葉館という料亭があり、
そこで紅葉は他の文豪たちとの親交を深めたという。
紅葉館は東京大空襲で焼失し、
その跡地には、赤い東京タワーが建っている。



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若杉茜 19年9月29日放送

magnusvk
月のはなし 絵のない絵本

アンデルセンの作品、『絵のない絵本』。
主人公は貧しく孤独な絵描きの青年。
夜、寂しさに襲われて、彼が窓の外を見上げると、
そこには故郷と変わりなく輝く懐かしい月がいた。

月は時折やってきて、彼に自分が世界中で見てきたお話しを聞かせるようになる。
彼は、それを絵に描いていく。月が彼に聞かせるのは、絵を持たない絵本なのだ。

月はどこにいても出会える懐かしい存在として、優しく世界を照らしてくれる。
そして今日も私たちの人生を、そっと見守っている。
ずいぶん遠くにきてしまったなあ、
と思った時には、月を見上げてみるのもいいかもしれない。



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若杉茜 19年8月11日放送


太陽のはなし たんぽぽのお酒

レイ・ブラッドベリの名作、『たんぽぽのお酒』。

少年ダグラスの目を通してみた、1928年のひと夏が描かれた小説だ。
彼の見たみずみずしい夏は、太陽が昇るシーンから始まる。

夏の始まり、丘の上から「みんなおきて」と街の人々に呼びかけるダグラス。
さながら、指揮者のように。
最後にダグラスがパチン、と指を鳴らすと
太陽がゆっくりと昇ってくるのだ。

たんぽぽのお酒は、小説の中で夏の間毎日作られる。
そして、1日1日のラベルを付けて、夏の終わりには棚にずらりと並ぶ。
1928年の太陽が注がれたお酒は、いったいどんな眩しい味がするのだろう。


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