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澁江組・田中真輝

田中真輝 17年7月23日放送

170723-01 DonkeyHotey
SFとはなにか

SFとは何かを一言で表すのは困難だ。

「夏の扉」を描いた巨匠、ロバート・A・ハインラインは
「過去や現在の現実社会や、科学的手法の性質と重要性の
十分な知識に基づいた、可能な未来の出来事に関する
現実的な推測」と定義した。

「ロボット三原則」で有名な
アイザック・アシモフは、「価値観の転倒、つまり
センス・オブ・ワンダーがなければならない」と語った。

そして、現代のSF作家、ケン・リュウはこう語る。
「地球が、宇宙の中の小さな星であることを思い出すことで、
自分自身についてではなく人類について考えさせてくれること
こそがSFの力である」

グローバル化が進む現代。より大きなパースペクティブを
もたらす装置として、SFはこれまで以上に
求められているのかもしれない。


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田中真輝 17年7月23日放送

170723-02
メッセージ

“Stories of Your Life and Others”
これは、今話題の映画「メッセージ」の原作タイトル。

著者は、中国系アメリカ人作家、テッド・チャン。
映画に登場する謎の宇宙船が
お菓子の「ばかうけ」に似ているということでも話題になった本作だが、
従来の派手な演出を駆使したSFにはない
静かで深い思想性が見る者を惹きつけてやまない。

一見、人間と宇宙人のファーストコンタクトを描いた
物語、と受け取られがちだが、その奥に潜むのは、
母親の愛情、人間とは何かという深い洞察である。

映画を見て興味を持たれた方はぜひ原作をご一読
頂きたい。映画では描ききれなかったものを
そこに見いだすはずだ。

時間の不条理さと
それを超える深い愛情こそが、この物語の真の
メッセージである。


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田中真輝 17年7月23日放送

170723-07 Rikki Chan
泣けるSF

アメリカ人作家、ケン・リュウ。
彼は今、SFシーンで、最も注目される作家の一人である。

又吉直樹が紹介したことで話題になった
「紙の動物園」を含め、その著作には中国や台湾、
そして日本など、アジアを舞台にした作品が多い。
そこにあるのは、西洋的な合理性への東洋思想的な
視点からのアンチテーゼだ。

彼はあるインタビューでこう語っている。
「現代社会は合理性を追求して発展してきたけれど、
ぼくはそれが正しいことだとは思わない。
合理性は感情を追い払ってしまうからだ。

そして最も道徳的なコミットメントとは、
合理的に行われるものではなく、感情的に
行われるものだからだ


その言葉の通り、彼の著作はとにかく、泣ける。
SFで泣くなんて、そう思ったあなたにぜひ
お勧めしたい作家である。


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田中真輝 17年7月23日放送

170723-08 strogoscope
SFの未来

小説「ニューロマンサー」でサイバーパンクという
SFの一ジャンルを拓いた作家、ウィリアム・ギブソン。

彼の世界観に影響を受けた作品は、「攻殻機動隊」や
映画「マトリックス」を始め、枚挙に暇がない。
そんな彼の有名な言葉。

「もう未来は到来している。ただ均等に与えられて
いないだけだ」

インターネットの出現によって、わたしたちは
ダイナミックかつ加速度的な変化に直面している。
AI、VR、そしてブロックチェーン。

飛び交う言葉や概念は最早SFとも見まごうばかり。
未来はもう到来している。しかもかなり均等に。
であるならば、今、わたしたちを駆り立てる
未来は、一体どこにあるのか。

現実よりもさらに速く、SFは加速しなければならない。
想像力の果てを超えて。


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田中真輝 17年5月14日放送

170514-02 西表カイネコ
ハウリング・ウルフ

明日5月15日は、沖縄が日本に復帰した日。

「沖縄のジミヘン」と
呼ばれた人物をご存知だろうか。
彼の名は、登川誠仁。
沖縄民謡界の巨人とも称される
三線の名手で特に早弾きを得意とすることから、
その異名がついた。

沖縄民謡だけではなく、
エレキギターを使った演奏や
洋楽を大胆にアレンジするジャンルを超えたその
スタイルは、登川のソウルに貫かれている。

苦みばしったその声と、三線の調べから漂うのは
ブルースにも似た悲しみと突き抜ける明るさ。
ソロアルバム「ハウリング・ウルフ」には、
そんな魂の叫びが詰まっている。
その歌声は、沖縄の抜けるような青空に
どこまでも吸い込まれていく。


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田中真輝 17年5月14日放送

170514-04
ブシマツムラ

明日5月15日は、沖縄が日本に復帰した日。

東京オリンピックで正式種目に採用された「空手」。
その起源とも言われる琉球空手、草創期の偉人に、
松村宗棍(まつむらそうこん)という人物がいる。

「ブシマツムラ」と呼ばれ
世の名声を欲しいままにした武術家松村には、
こんなエピソードが残されている。

ある時、王の命を受けて、
猛牛と戦うことになった松村は、
毎日、黒装束に鉄の扇を持って牛舎に通い、
猛り狂う猛牛の頭にその扇を打ち下ろし続けた。

松村への恐怖を植え付けられた
猛牛は、戦いの当日、
彼の姿を見るなり
恐怖の叫びとともに逃げ去ったという。

戦うことなく勝利を収める。
武術だけではなく智術にも長けた人物だからこそ、
偉人となりえたことを表す痛快なエピソードである。


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田中真輝 17年5月14日放送

170514-07
飛び安里たち

明日5月15日は、沖縄が日本に復帰した日。

沖縄には、
ライト兄弟よりも早く空を飛んだ人物がいる、
そう聞いたら、あなたは
まゆにつばをつけるかもしれない。

安里周當(あさと しゅうとう)は、
18世紀、琉球王家に仕えた花火職人。
空を飛びたいという夢に取り憑かれ、
飛行実験を繰り返した彼は、
やがて「飛び安里」と呼ばれるようになる。

一説には、
オーソニコプターと呼ばれる仕組みの飛行機で、
1787年、彼は空を飛んだ、と伝えられている。

残念ながら、その設計図は消失し、
伝承としてその逸話が残るのみ。

しかし、
歴史として残っているものだけが真実とは限らない。
大空に挑戦しその夢を叶えた者が、
私たちが知る歴史の裏側に、
数え切れないほど存在するかもしれない。
琉球の花火職人、飛び安里のように。


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田中真輝 17年5月14日放送

170514-08
ぬちどぅ宝

明日5月15日は、沖縄が日本に復帰した日。

琉球王朝最後の王、尚泰王。
1879年、明治政府によって行われた廃藩置県により、
琉球王朝は消滅、彼は首里城を去ることになる。

 戦世(いくさゆ)んしまち
 みるく世ややがてぃ
 嘆くなよ臣下 命(ぬち)どぅ宝


 「戦世」は終わった
 平和な「弥勒世」がやがて来る
 嘆くなよ、おまえたち、命こそ宝


この言葉は、
琉球王国の終焉を描いた沖縄芝居の中で
城を去る尚泰王が口にしたセリフだと言われている。

琉球、そして沖縄。
時代を超えて、その地に生きる
人々の祈りが込められた言葉。
それは日本に生きるすべての者が、
深く胸に刻むべき言葉でもある。


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田中真輝 17年3月12日放送

170312-06
絶望という力

今日は、ヒッピーの父、ジャック・ケルアックの誕生日。

ヒッピー運動とともに反戦のシンボルとして
世界中に広まった、ピースマーク。
これをデザインしたイギリス人アーティスト、
ジェラード・ホルトムは、ピースマークが
表すものについて、こう語っている。

 それは、ゴヤの描いた銃殺される直前の農民の姿。
 腕を下ろし、手のひらを外側に向けている。
 わたしが描いたのは、絶望する人間の姿であり、
 わたし自身の姿でもあるのだ。


平和を象徴するマークは、実は絶望の象徴でもある。
浮ついた理想ではなく、悲しみと怒りに彩られた
デザインだからこそ、強い力を持ち得たのかもしれない。


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田中真輝 17年3月12日放送

170312-07
ヒッピーのおかげ

今日は、ヒッピーの父、ジャック・ケルアックの誕生日。

ヒッピーコミューンを支えるために生まれた
伝説的な雑誌、「ホール・アース・カタログ」。
この雑誌を創刊したスチュアート・ブランドは
「すべてはヒッピーのおかげ」というエッセイで
こう語っている。

 カウンターカルチャーが中央の権威に対して持つ軽蔑が、
 リーダーのいないインターネットばかりか、すべての
 パーソナル・コンピューター革命の哲学的基礎となった。


そして、この雑誌が廃刊するときに、裏表紙を
飾った言葉こそ、“Stay hungry, Stay foolish”
スティーブ・ジョブズがその言葉を引用したという
事実は、あまりに多くを物語っている。


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