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澁江組・田中真輝

田中真輝 17年3月12日放送

170312-06
絶望という力

今日は、ヒッピーの父、ジャック・ケルアックの誕生日。

ヒッピー運動とともに反戦のシンボルとして
世界中に広まった、ピースマーク。
これをデザインしたイギリス人アーティスト、
ジェラード・ホルトムは、ピースマークが
表すものについて、こう語っている。

 それは、ゴヤの描いた銃殺される直前の農民の姿。
 腕を下ろし、手のひらを外側に向けている。
 わたしが描いたのは、絶望する人間の姿であり、
 わたし自身の姿でもあるのだ。


平和を象徴するマークは、実は絶望の象徴でもある。
浮ついた理想ではなく、悲しみと怒りに彩られた
デザインだからこそ、強い力を持ち得たのかもしれない。


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田中真輝 17年3月12日放送

170312-07
ヒッピーのおかげ

今日は、ヒッピーの父、ジャック・ケルアックの誕生日。

ヒッピーコミューンを支えるために生まれた
伝説的な雑誌、「ホール・アース・カタログ」。
この雑誌を創刊したスチュアート・ブランドは
「すべてはヒッピーのおかげ」というエッセイで
こう語っている。

 カウンターカルチャーが中央の権威に対して持つ軽蔑が、
 リーダーのいないインターネットばかりか、すべての
 パーソナル・コンピューター革命の哲学的基礎となった。


そして、この雑誌が廃刊するときに、裏表紙を
飾った言葉こそ、“Stay hungry, Stay foolish”
スティーブ・ジョブズがその言葉を引用したという
事実は、あまりに多くを物語っている。


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田中真輝 17年3月12日放送

170312-08 Winston J.Vargas
魂の歌声

今日は、ヒッピーの父、ジャック・ケルアックの誕生日。

彼がヒッピーの父なら、
ヒッピーの母とも呼ぶべき人物は、
ジャニス・ジョプリンかもしれない。

ボヘミアンファッションに身を包み、全身全霊で
愛と孤独を歌った女性シンガー、ジャニス・ジョプリンは
ヒッピー世代のアイコンとして、27年という短い人生を
駆け抜けた。

彼女は言う。
あなたは、あなたが妥協したものになる。
そして、妥協せず、戦い続ければ最後には
なりたいものになれる、と。

彼女の戦い続けた魂は、歌声となって、
今も、わたしたちに問いかける。
あなたは妥協せずに戦い続けているか、と。


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田中真輝 17年1月15日放送

170115-02
オーデュポンの魂

今年、2017年は、酉年。
ジョン・ジェームズ・オーデュポンは
アメリカの画家・鳥類研究家。

1827年、彼は12年の歳月をかけて完成させた
全4巻の図鑑「アメリカの鳥類」を出版する。
そこには彼が描いた453枚の彩色銅版画が
収められていた。驚くべきはそのサイズ。
この図鑑、縦が1メートル、横が68センチもあり、
大人二人掛かりでないと持ち運べないほどの超大判なのだ。

実物大で生き生きと描かれた鳥類の姿は、
見るものを、ただ圧倒する。
それは、人生をかけて鳥を見つめ続けた
オーデュポンの魂そのものを、そこに
見るからに他ならない。


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澁江俊一 17年1月15日放送

170115-04 Augustus Binu
恐怖に魅せられた男

今年、2017年は、酉年。

アルフレッド・ヒッチコック監督の映画、
「鳥」は、大量の鳥たちに訳もなく襲われ続ける
人々の姿が描かれるサスペンスムービーの傑作。
その不条理さ、得体の知れない怖さに、
ヒッチコックの真骨頂を見ることができる。

ではなぜ、鳥なのか。
ヒッチコックはあるインタビューでこう答えている。
「恐怖を取り除く唯一の方法は、
 それを映画にしてしまうことだ」
ヒッチコックは、鳥に得体の知れない恐ろしさを感じ、
また一方で、その恐怖に魅せられていたに違いない。


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澁江俊一 17年1月15日放送

170115-06
天才絵師のトリック

今年、2017年は、酉年。

江戸時代に活躍した天才絵師、伊藤若冲。
彼は鶏をこよなく愛し、動植物をモチーフにした
作品集「動植綵絵(どうしょくさいえ)」シリーズ
全30点のうち、実に8点が鶏を描いたものである。

中でも「群鶏図」は圧巻。
13羽の鶏が絵の中でひしめきあい、あたかも
動き回っているような錯覚すら覚える。

実は、この錯覚を引き起こすために、若冲は
様々な仕掛けを意図的に施している。
せわしなく動き回る鶏たちを眺めながら、
次はどんな仕掛けで驚かせてやろうか、と
ほくそ笑む若冲の姿が眼に浮かぶようだ。


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澁江俊一 17年1月15日放送

170115-08
飛翔への憧れ

今年、2017年は、酉年。

レオナルド・ダ・ヴィンチが残した
膨大な手稿の中に、36ページからなる
「鳥の飛翔に関する手稿」というメモがある。
そこには、鳥が飛翔するための力学構造についての
考察が詳細にまとめられている。
この先見性と挑戦心に満ちた手稿の裏表紙に、
ダ・ヴィンチはこう記している。

「巨大な鳥は、偉大なチェチェロ山の頂きから初飛行を行い、
 全世界を驚嘆の声で満たし、すべての書物をその名声で
 満たすであろう。」


その予言は現実となり、わたしたちは、空へ、そして
さらなる宇宙へと飛び立とうとしている。
鳥たちへの憧れを胸に。


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田中真輝 16年11月20日放送

161120-07
窓際のトットちゃん

今日は、世界子どもの日。

小説「窓際のトットちゃん」は、黒柳徹子作の
ノンフィクション自伝。
そこには、落ち着きがない問題児として、
転校を余儀なくされたトットちゃんが、
「トモエ学園」という新しい小学校で、
のびのびと成長していく姿が描かれている。
人と同じようにできないことから、幼心に疎外感を
抱えたトットちゃんに、トモエ学園の校長先生は
繰り返し、こう語りかける。

「君は、本当は、いい子なんだよ」

トットちゃんを導いたのは、薄っぺらな教育論
ではなく、心から子供を信じ、寄り添おうとする、
ひとりの人間の声だったのではないだろうか。


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田中真輝 16年11月20日放送

161120-08
木をかこう

今日は、世界子どもの日。

多彩な顔を持つイタリア人デザイナー、ブルーノ・ムナーリ。
彼の著作には「木をかこう」というかわいい絵本がある。

そこには、「木」の本質的な構造をわかりやすく伝えながら、
そこからありとあらゆる形に広がっていく木の姿が描かれ、
創造性の広さに気づかせてくれる。

子供はみんなアーティストである。
しかし、大切なのは、ただ紙とペンだけを手渡すだけではなく、
同時に、モノの本質についての学びも手渡すこと。
彼の子供と向き合う姿勢に、学ぶべきことは多い。


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田中真輝 16年9月11日放送

160911-04 Joao Carlos Medau
悼む人

今日、9月11日は、
アメリカ同時多発テロ事件が
発生した日。

この事件をきっかけにして紡がれた物語がある。
作家、天童荒太による「悼む人」。

911以降、世界中に広がる怒りの連鎖への
無力感の中で生まれたのが、
死者を悼んで旅する男の物語だった。

「なぜ、私たちは、すべての死者を平等に
追悼することができないのか」

その問いかけを胸に、天童は実際に、
各地で亡くなった人を悼む旅に出る。
そして、実に7年という歳月の果てに、
天童は「悼む人」を上梓する。
そこに描かれているのは、怒りに包まれる
世界への、天童からの静かだが、
力強いメッセージだ。


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