蛭田組・飯國なつき

飯國なつき 14年12月7日放送

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贈り物① よさこい節

 土佐の高知の
 はりまや橋で
 坊さん
 かんざし買うを見た

高知県に伝わるよさこい節は、
江戸時代に起こった実話をもとにして、作られたと言われている。

竹林時のお坊さんであった純真は、
修行中の身でありながら、
お馬という女性と恋に落ちてしまう。

お坊さんであっても、恋い慕う気持ちはもちろん同じ。
お馬にあげるかんざしを、こっそりと買い求めた純真だったが、
街の人に目撃され、噂が立ってしまう。

駆け落ちを試みるも失敗し、
ついぞ、二人が添い遂げることはなかった。

純真の思いの丈のつまった一瞬は、
今も、民謡として歌い継がれている。

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飯國なつき 14年12月7日放送

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びぃ
贈り物② 伊藤理佐「おいピータン!」

漫画家、伊藤理佐さんの作品「おいピータン!」。
登場人物のひとり渡辺さんが、誕生日を迎えた時のこと。

同じ職場の彼氏は、なぜかその日はお休み。
「誕生日の私が働いているのに…」
と、いらいらする渡辺さん。

彼氏の家に行ってみると、思わず感激する。

大量の本を片付けるために棚が手作りされ、
電球は全部入れられ、
布団もちゃんと片付けられ…
渡辺さんがずっと気にしていたことを、全部やってくれていたのだった。

そして、おまけのプレゼントは、
渡辺さんが「一度やってみたい」と言っていた、
いくらの食べ放題で、大喜び。

どうすれば相手が喜んでくれるか。
それさえ大切にしていれば、
贈り物の形は、もっと自由になっていいのだ。

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飯國なつき 14年12月7日放送

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贈り物③ マルチン・ルター

クリスマスの贈り物に、
親はいつも悩まされるものだが。

1535年、まだ貧しい大学教授だった
宗教改革の創始者マルチン・ルターは
子供たちへの贈り物を買うお金にすら困っていた。

しかし妻から、
子供たちの好きな肉団子のスープを作るから大丈夫、
と励まされ、ルターは歌を作って贈り物にすることを決める。
山から抜いてきたもみの木の周りで歌った歌は、
翌年以降も一家の定番となった。

後にルターはこんな言葉を残している。

 ドイツの国をくれるといわれても、
 私は、それよりも、優しい妻がいる家庭を選ぶ。 

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飯國なつき 14年11月9日放送

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お風呂① 杉滝

吉田松陰の母、杉滝。
嫁いだ先は、極貧の武家だったが、
そんな中でも、彼女は「毎日お風呂に入る」と宣言した。

義理の父から猛反対を受けながらも、

「貧しさのあまり心まで貧しくなってしまっては
 どうしようもない。
 温かい湯につかることで、心まで温もり、
 翌日も頑張る意欲が生まれるはずだ」

と言いはり、お風呂に入り続けた。

滝は、子供たちを風呂に入れるのも大好きで、
吉田松陰が安政の大獄で処刑される前、
一日だけ帰宅を許された際にも、
松陰を風呂に入れ、無事の帰りを祈ったという。

風呂から伝わる母の愛は、
松陰の最後の一日を、きっと惜しみなく温めていた。

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飯國なつき 14年11月9日放送

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お風呂② 壇ふみ

女優の壇ふみは、
「風呂がないと、心が荒廃する」という。

彼女がオーストラリアに行った、ある夜のこと。
芯まで冷え切り、お湯につかりたいのに、
高さ二十センチのシャワータブしかない。

そこで彼女は、その二十センチにお湯をためて、浸かった。
刺身に醤油をつけるようにして、全身にお湯をなすりつけた。

湯に浸かる喜びを知らなければ、
そんな苦労も知らずに済んだろうに。

それでも壇ふみは、風呂の幸せについて、こう語る。

 背をそらす。腕を伸ばす。
「ああ、いい気持ち」と、お腹の底から言ってみる。
今日の凝りが疲れが、ゆるゆるとお湯の中にとけてゆく。

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飯國なつき 14年11月9日放送

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お風呂③ 絵本「おふろだいすき」

お風呂嫌いの小さな我が子に、毎晩、ひと苦労。
そんなお父さんお母さんへ、おすすめしたいのが、
絵本「おふろだいすき」だ。

おふろが大好きな主人公の男の子、まこちゃんがおふろに入っていると、
突然、巨大なカメ、双子のペンギン、オットセイ…
いろんな動物がお風呂の中から登場する。

絵本から湯気が立ちのぼるような、
林明子さんのやわらかいイラストとともに、描きだされる空想の世界。
摩訶不思議な物語はどんどん広がっていくが、
最後は、あたたかいお母さんのタオルの中へ到着する。

子供はもちろん、大人だって、
お風呂に入りたくなる一冊だ。

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飯國なつき 14年10月19日放送

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あの人の酒① 酒杉浦日向子の昼酒

江戸風俗研究家の杉浦日向子さん。
酒を愛した彼女の著書「ソバ屋で憩う」に、こんな一節がある。

 ソバ屋で憩う、昼酒の楽しみを知ってしまうと、
 すっかり暮れてから外で飲むのが淋しくなる。
 いまだ明るいうちに、ほろ酔いかげんで八百屋や総菜屋を巡って、
 翌日のめしの仕入れをしながら着く家路は、
 今日をたしかに過ごした張り合いがある。

一日をお酒で終わらせるのではなく、
昼酒の余韻を感じながら、買い物をぶらぶらと楽しむ。
粋を愛する、杉浦さんらしい飲み方だ。

たまには、きもちよく昼酒を楽しんでみませんか。

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飯國なつき 14年10月19日放送

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dogpong
あの人の酒② ヘミングウェイの愛したダイキリ

作家の思索に触れたい時、
その人の愛した酒を飲むのも一興だ。

飲みっぷりのよい作家のひとり、へミングウェイ。 
原稿執筆中はしらふを守り抜いたが、
いざ仕事が片付くと街に繰り出し、心ゆくまで酒を飲んだ。
お気に入りの一杯は、ラム酒の量をダブルにし、
砂糖を抜いた特注のフローズン・ダイキリ。

人生のおよそ3分の1を過ごした灼熱の国、キューバでは
清涼なダイキリがよく合っただろう。

彼が通いつめたバー、「ラ・フロリディータ」では、
いまでも、件の酒を味わうことができる。

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飯國なつき 14年10月19日放送

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あの人の酒③ ブラジルの濃厚な酒、カイピリーニャ

世界を放浪する漫画家、ヤマザキマリ。

イタリア、エジプト、ポルトガル、アメリカ…
世界中を移り住む彼女が、ときどき無性に行きたくなる国は、
ブラジルだ。

ブラジルの暑い屋外で、日差しに照らされながら、
“カイピリーニャ”という、40度を超す酒をあおるのが、
最高だという。
魚介料理のムケッカをほおばりながらだと、
「何杯飲んでも酔っぱらわない」と、ヤマザキさんは語る。

その時の様子を描いたエッセイ漫画では、
ページから、ブラジルの熱気が濃厚に立ちのぼる。

陽気な国ブラジルは、酒までエネルギッシュなのだ。

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飯國なつき 14年9月14日放送

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ESO
夜空を見る人①渡部潤一

南米チリ、標高5000メートルの砂漠に作られた、アルマ天文台。
高性能アンテナが並ぶその施設は、
「宇宙に一番近い天体観測施設」と言われている。

多くの天文学者が、夜空を見上げ、研究を続けている。
広大な宇宙の謎を解き明かしたい、その一心で。

アルマ天文台の設立にも関わった、国立天文台の副台長、
渡部潤一はこう語る。

 一千億の星の集まりの中心から、28,000光年という距離にある
 片田舎に、我々は住んでいるんです。

ずっと遠くの星では、誰かが夜空を見上げて、
我々と同じように想いを馳せているのかもしれない。

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