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小野麻利江 18年10月28日放送

181028-06

パンダのはなし パンダと伝説

どうもパンダという存在は、伝説と相性がいいようだ。

中国では古来から、
しばしば伝説の生き物・獏(ばく)と混同されてきた。

紀元前200年頃に編まれたという類語辞典
『爾雅(じが)』では、
「竹を食べる白黒模様をしたクマのような動物」のことを
獏と呼んでいたり、

「パンダの毛皮を寝具にすると、
未来を予知する夢を見ることができる」と、
獏の伝説がパンダの話として
信じられていたこともあったという。

そして時は移り、
1972年、上野動物園に、二頭のパンダが「来日」すると、
その日だけで5万6000人が集まるという
熱狂をもって迎えられ、

昨年も、上野動物園で初めて、
メスのパンダ・シャンシャンが生まれると、
日本中が再び、パンダブームで盛り上がった。

二千年以上ものあいだ、様々な伝説で
人々を惹きつける、パンダの最大の魅力。
それはきっと、白と黒のツートンカラー。

しかし、なぜパンダの体は白黒模様なのかは、
驚くことに、つい昨年まで、
きちんと解明されていなかった。

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小野麻利江 18年9月30日放送

180930-05
Photo by Daniel Sturgess
大地のはなし 大地を深掘りしていくと

大地の成分は、岩と土。

マグマが急速に、あるいは、
ゆっくりと冷やされたことで、できた岩。
生物の死骸が集まり、積み重なって、できた岩。
そんな岩たちが水や風で砕かれたり、
地下の奥深くで強い作用を受けたりして、できた岩。

それら岩石の細かい粒子がベースとなり、
そこに火山灰や、
動物・植物・微生物の死骸と排せつ物、
微生物によって分解された有機物などが
混じり合って、土になる。

土の中にはたくさんのすき間があり、
そのすき間は水と、
二酸化炭素や窒素を多く含んだ空気で満ちている。
たくさんの微生物や、動物たちも生きている。

大地を深掘りしていくと、
はるか宇宙の、
見知らぬ惑星のような風景が見えてくる。

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小野麻利江 18年9月30日放送

180930-06

大地のはなし 『菜根譚』より・天地と心根

 天地は、元来、広大なものであるが、
 心根の卑しい者が、自ら狭くする。

これは、明の時代末期の中国で書かれた、
『菜根譚』という処世訓の中にある言葉。

すべては心の持ちかた次第。
いまの自分の環境が
何だかせせこましいなと思ったら、

視野を広げて、広い自然・広い大地の中に、
身を置いてもいいのかも。

それをするには、
これからますます、いい季節です。

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小野麻利江 18年8月26日放送

180826-01

宿題のはなし 溜めてしまった宿題に

8月最後の日曜日。

夏休みの宿題を溜めてしまい、
頭を抱えているお子さんが、
もしいたら。

江戸時代中期、山形は米沢藩の
財政を立て直した名君、
上杉鷹山(うえすぎようざん)公が
家臣に示した、
こんな言葉を贈りたい。

 なせば成る なさねば成らぬ 何事も

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小野麻利江 18年8月26日放送

180826-02

宿題のはなし 先延ばしの偉人

明日やろう。明日こそはやろう。
子どもの頃の「夏休みの宿題」に始まり、
人は、幾つになっても、
気が進まないことを先延ばしにしがち。

しかし、安心してください。
かの天才、レオナルド・ダ・ヴィンチも、
先延ばしすることが、多かった模様。

たとえば、7ヶ月で完成させる契約だった
「岩窟の聖母」という絵画が、
実際に完成したのは、なんと25年後。

好奇心旺盛でひとつのことに集中できず、
途中で投げ出した作品も多いそう。

あなたにも、もし、「先延ばしグセ」があるとしたら。
ひょっとするとそれ、
「天才のしるし」かもしれません。

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小野麻利江 18年6月24日放送

180624-03

空のはなし 星座の空

人工的な照明によって
夜空が薄明るくなる、はるか前。
人間にとって、空はコンパスであり、時計だった。

夜空を動く、星の流れ。
遊牧民族はそれらの動きで自分の位置を知り、
農耕民族は、作物の種まきや収穫の時期の目安とした。

いまどの星が、空のどこにあるのか。
それを分かりやすく、伝えやすくするために、
いつしか生み出されたのが「星座」。

隣り合う明るい星を、いくつかのまとまりにして。
さらに覚えやすくするために、
そこに、祖先から伝わる伝説などのモチーフを当てはめた。

星座は、世界じゅうで発生したどの文化にも存在しているという。
しかし、現在もっとも良く知られている88の星座の多くは、
古代メソポタミア文明からエジプトを経由し、
古代ギリシアで神話が追加されたものがベースとなっている。

人工的な照明によって
夜空は薄明るくなってしまったが、
数々の星座の存在は今もなお、
空の豊かな物語の、目次となっている。

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茂木彩海 18年6月24日放送

180624-04

空のはなし 荘子の空

古代中国の思想家・荘子(そうし)の言葉が、
こんな格言になっている。

 管を用いて天をうかがう  

細い管から空をのぞいて、
それを天だと思い込む。

しかしそのような狭い視野で、
空全体を知ることは到底できない。

たとえ話にすると、想像するだけで滑稽だ。
しかし案外、普段の私たちが、陥りがちな状況だ。

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小野麻利江 18年5月27日放送

180527-08

うたのはなし 越路吹雪のうた

いいうたって、なんだろう。

圧倒的な表現力でシャンソンを歌い上げた、
歌手・越路吹雪。

しかし何千回も歌っている「愛の讃歌」ですら、
歌うたびに、1からつくりあげようとした。

「あなたの燃える手で」とは、どんな手?
むつかしい。どうやって歌おうか。
じっくり掘り起こし、
稽古が終わる頃には、クタクタになっていたという。

越路自身も晩年、
TV番組のインタビューの中で、こう語っている。

 歌になるまでには時間がかかります、消化するまで。

いいうたには、愚直なまでの情熱が宿っている。

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小野麻利江 18年4月29日放送

180429-03

わたしのはなし パブロ・ピカソと模写

わたしとは、なんだろう。

画家、パブロ・ピカソは、
生涯の中で作風を
目まぐるしく変えていった。

青色を主に用い陰鬱なテーマを描いた、「青の時代」。

恋人をモデルにし、明るい色調の作風が続いた「ばら色の時代」。

セザンヌからの影響をきっかけとした、「キュビズムの時代」。

丸みを帯びた写実的な描写になった
「新古典主義の時代」。

そして、非現実的で怪物のようなモチーフを
数多く描いた、「シュルレアリスムの時代」。

なぜここまで、過激に変化したのか。
そのヒントが、ピカソのこんな言葉から読み取れる。

 他人を模写するのは
 必要なことである。
 しかし、
 自分を模写するのは哀れなものだ。

ピカソにとっての「わたし」。
それは、一瞬たりとも同じであることが
許されない存在、なのかもしれない。

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小野麻利江 18年4月29日放送

180429-04
Ars Electronica
わたしのはなし 石黒浩とアイデンティティ

わたしとは、なんだろう。

自分そっくりのアンドロイドをつくり、
人間とロボットの未来を模索する
ロボット工学者・石黒浩は、
こんな持論を展開している。

 相手に伝わってこそのアイデンティティですから。
 名前なんか、毎日変えたっていいんです。
 顔はあんまり変えないほうがいい。
 服は絶対に変えないほうがいい。

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