2010 年 7 月 3 日 のアーカイブ

佐藤延夫 10年07月03日放送


南アフリカに浮かぶ星1

午後11時と、午前3時半。
毎日この時刻を気にするようになったのは、
7時間も時差のある南アフリカのせいだ。

寝不足もやむなしと諦めるようになったのは、
世界中から集まった足の器用な男たちのせいだ。

そして、選手ではないのに注目を集める小太りの男。
彼は以前に、こんな言葉を残していた。

  母国の監督をやりたい。給料なんかいらないし、今すぐでも構わない。

ピッチの脇で、選手よりも激しく動き回る彼は、
今日もどんなパフォーマンスを見せてくれるのか。
マラドーナ監督、楽しみにしてますよ。


南アフリカに浮かぶ星2

サッカーは、スポーツなのか、戦争なのか。

グループリーグから
鮮やかなサッカーで注目を集めるドイツ代表。
よく見ると、ベンチに目を見張るようなイケメンが座っていた。
ヨアヒム・レーブ監督だ。
現役時代は無名の選手だったが、
その戦術とサッカー理論は高く評価されている。
彼の爽やかな横顔を見ていると、サッカーはスポーツなんだと思える。

今回のワールドカップが始まる前、
レーブ監督は警戒するチームを挙げた。

  オランダの攻撃には、機関銃、追撃砲、大砲のすべてがある。

なるほど、やっぱりワールドカップは、戦争なんだ。


南アフリカに浮かぶ星3

草食男子、メガネ男子、弁当男子・・・
いろんな男子が出てきたけれど、
そのうち、ビッグマウス男子が流行るかもしれない。
ワールドカップ日本代表、本田圭佑をリスペクトする男子は多い。

  僕自身はベスト4ではなく、優勝を目指していいと思う。

誰もがグループリーグ敗退を予感している中、
彼だけは大風呂敷を広げていた。
そして自身による2つのゴールで、
見事に風呂敷を畳んでみせた。

ところで、ビッグマウス男子を狙う皆さん。
実力が伴わないと、
仕事も女ゴコロもゴールは決められないので
くれぐれもご注意を。


南アフリカに浮かぶ星4

なにしろエピソードの多い人だ。

彼について、オランダ史上最高と言われるサッカー選手は言った。
「マラドーナには、選手として全てかなわない。」

現役時代、1000回近くもゴールネットを揺らしたブラジルの英雄は言った。
「サッカー界でスーパースターと呼べるのはマラドーナだけだ。」

神様と呼ばれる男は言った。
「私とマラドーナを比べることは、彼に失礼だ。」

将軍と呼ばれる男も言った。
「ジダンがボールでやることを、マラドーナならオレンジでできる。」

そのジダンは言った。
「彼とは比べないでほしい。彼は惑星の選手なのだから。」

当のマラドーナは、引退後に言った。
「私は、サッカーボールのように太っている。」

薬物依存、不摂生による肥満、娘との確執と和解。
いろいろなことがあったけど、
今また、時代はマラドーナに味方している。
一日でも長く、あなたの姿を見ていたい。


南アフリカに浮かぶ星5

トルコ移民のトルコ家系に生まれた青年は、
ドイツの国籍を取得し、今、ドイツ人としてピッチに立っている。

メスト・エジルという
サッカー選手らしからぬ優しい顔をした青年は、
毒々しいほどのテクニックと視野の広さを持つ。

しかしコメントは、優等生のように清々しい。
たとえばこれは、ガーナ戦で勝ったときのインタビュー。

  僕はただボールを蹴っただけだよ。チームメイトがたくさんサポートしてくれたんだ。

21歳の謙虚な司令塔は、
限りない才能と、限りない将来を手に入れている。


南アフリカに浮かぶ星6

思えば、今年の4月、
ワールドカップが始まる少し前。
欧州チャンピオンズリーグの準々決勝で
リオネル・メッシは、強豪アーセナルを相手に
たった一人で4得点をあげた。
敗軍の将、ベンゲル監督は、こんな表現で試合を振り返った。

  メッシは、まるでプレイステーションの選手のようだ

今日はマラドーナ監督の手元にも注目してみよう。
もしかしたら、コントローラーを握っているかもしれない。


南アフリカに浮かぶ星7

  岡ちゃん、ごめん
  正直、3戦全敗だと思ってました。

日本がデンマークを破り、
決勝トーナメント出場を決めた直後、
ツイッターは、岡田監督への謝罪の声であふれ返った。

強化試合で結果を出せず、
チームの不協和音が報じられたとき
日本のファンは、あらゆる期待を放棄していた。

一億総ペシミストになったこの国。
でも、サッカーには、国民の意識を変える力があった。

華々しいフリーキックと
タフな戦いに耐える同胞を見て、
人々は息を吹き返す。

ブブゼラの鳴り止まないスタジアムで
岡田監督は、絶対的な信頼を手にした。
それでも彼は、いつもどおりに口をヘの字に曲げている。

6月30日、午前2時。
あの悲観的だった国民は、みんな思っていた。

  岡ちゃん、ありがとう。

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