2010 年 のアーカイブ

三國菜恵 10年12月05日放送



つくる人のことば/菊池敬一

こんな本屋、アリなんだ。

そんな声が聞こえてきそうな本屋、
ビレッジバンガード。

創始者である菊池敬一さんは、
自らの店を「遊べる本屋」と称する。


 棚を作っていくことを「編集」と呼んでいます。

SFマンガのとなりに、星座の本。
その隣には、地球儀。

連想ゲームのような本棚に、最初は拒絶を示す人もいた。
けれど、今では全国に300店舗。

誰かのルールで並べるのではなく、
自分のルールであたらしくつくる。

そんな本棚は、みんなの心をたのしませた。



つくる人のことば/萩尾望都

「ポーの一族」などで知られる
少女漫画家・萩尾望都(はぎお・もと)。
彼女は、漫画についてこんな考え方をしている。


 少年漫画のほうが、比較的ドラマの起伏、事件が起こることが大事。
 でも、心理が細かくないと女の子は読んでくれない。

彼女はきっと
男女の違いに気づいてるからこそ、
女の子のための漫画が描ける。



つくる人のことば/藤牧義夫

その人は、東京を描いた。
毎日のように、同じ場所から。

群馬県・館林生まれの版画家、藤牧義夫。
故郷を離れ、出てきた東京で
いくつかの版画を残している。

鉄橋、給油所、沈む夕陽。
その多くは、隅田川からの景色ばかり。

彼は、こんな言葉を残している。


 強烈な光が、音響が、色彩が、間断なく迫るその中に、
 不安な気持ちで生存する事実
 それを唄いつつ 自分は常に強く行く。

生きていることを実感できる景色。
それは、故郷を出てはじめて出会うものなのかもしれない。

topへ

佐藤延夫 10年12月04日放送


ピーナッツの話/チャールズ・シュルツ

スヌーピーとチャーリー・ブラウンの生みの親、
チャールズ・シュルツ。

自分の描いた絵が初めて褒められたのは、
幼稚園の初日のことだった。
白い紙と黒いクレヨンを渡されたので、
雪かきをしている男の絵を描いた。
ただ、思うままに。

みんなの絵を見て回っていた先生が、
彼の前で止まり、こう言った。

チャールズ、あなたはきっと絵描きさんになるわ

この優しい予言は、少年の心に永遠に残る。


ピーナッツの話/ルール

チャールズ・シュルツの漫画「ピーナッツ」には、
ひとつのルールがある。

スヌーピー、チャーリー・ブラウン、ルーシー、ウッドストックなど
登場人物は多いが、作品の中に大人を出すことは一度も無かった。
その理由は、いたって単純だ。

場所がないから。

子供の視線で描かれた子供サイズの構図に、
大人が入りこむ隙はない。

読者は知らず知らずのうち、
子供のひとりとして漫画に参加している。

ここでは、子供になることがルールだ。


ピーナッツの話/犬

漫画「ピーナッツ」の作者、チャールズ・シュルツは、
幼いときに犬を買っていた。

名前は、スパイク。

漫画にもスパイクという犬が登場する。
スヌーピーの兄という設定で。

雑種で気性が荒かった本物のスパイク。
漫画の中ではビーグル犬になり、
孤独を愛し、砂漠で穏やかに暮らしている。

漫画家は、うらやましい。
自分の思い出に、命を吹き込むことができるんだから。


ピーナッツの話/チャーリー・ブラウン

作者曰く、普通の人の代表。
これが、ピーナッツに登場する丸顔の少年、チャーリー・ブラウンだ。

好きな女の子の顔も見られないシャイな性格だけど、
ときどき、ものごとの核心を突く。
たとえば「安心」という意味について聞かれたとき。

安心感ってのは、車の後ろの席で眠ることだよ。
前の席にはパパとママがいて、心配事はぜんぶ引き受けてくれる。

そしてチャーリー・ブラウンは興奮して続ける。

でも、それはいつまでも続かない!
あるとき突然、きみはおとなになって、
もう二度と同じ気持ちは味わえないんだ!

私たち読者は、なるほど、と感心する。
でも、そういった言葉の多くは、ガールフレンドに軽々と切り返されてしまう。

  女の子って、男の子に哲学的な話をされるのは好きじゃないのよ。

私たち読者は再び思う。なるほど。


ピーナッツの話/スヌーピー1

1960年代初頭に始まった、アメリカのアポロ宇宙計画。
数年後、そのキャラクターに任命されたのが、スヌーピーだった。

アポロ10号の月面着陸船の名前は、「スヌーピー」。
司令船は、「チャーリー・ブラウン」と名付けられた。

もちろん当時の漫画にも、宇宙服を着たスヌーピーが登場する。

  ここは月。
  やった!月に立った最初のビーグル犬だ!
  ロシアに勝ったぞ・・・
  みんなに勝ったぞ・・・
  隣に住んでる馬鹿な猫にも勝った!

スヌーピーは、アメリカの象徴。
この小さな犬には、世の中の全てを巻き込むほどの力があった。


ピーナッツの話/スヌーピー2

スヌーピーは、よく寝ている。
犬小屋の上で。
テントの上で。
ときには岩を枕にして。
そうかと思えば、タイプライターで何かを打ち込んでいる。

あるとき、犬小屋から落ちたあと
スヌーピーは呟いた。

世の中、厳しい現実に満ちている。

スヌーピーは、哲学者なのだ。


ピーナッツの話/声

チャーリー・ブラウンは独り言を言う。
  精神科医によれば、ピーナッツバターサンドイッチを食べる人は孤独なんだって。
  その通りだと思うよ。

スヌーピーは呟く。
  先生にあてられて「ミシシッピー」のスペルを聞かれたら、困ったことになるな。

リランは、ぼやく。
  初日から「戦争と平和」を読まされるんじゃないだろうね。

ペパーミント・パティは愚痴をこぼす。
  わたしは、人生の歩道の敷石の間から
  必死で伸び上がろうとしている、みじめな、みにくい雑草なの!

シュローダーは、ピアノを弾きながら叫ぶ。
  お金なんて関係ない!これは芸術なんだ。

ルーシーは、小言を言う。
  世界が抱える様々な問題を知ったら、そんな嬉しそうな顔はしていられないわよ!

大人でもドキッとするような言葉は、
漫画「ピーナッツ」の中で、財宝のようにきらきら輝いている。

このめまぐるしく美しい台詞を訳しているのは、谷川俊太郎さんだ。

topへ

フカフカくん

ご近所には珍しい長毛な猫。
しかも白地に茶虎。
カメラを持って近づくと案の定逃げたが
なにかに気を取られて逃げるのを忘れたところを
一枚撮らせていただいた。

猫は忘れっぽい。
あれ、いま俺はなにをしてたんだっけ??
ということがよくある。

うちの愚猫はドタドタと走って来たくせに
目的地に到着したときには
目的そのものを忘れ果てて「あれ?」という顔をすることが多い。
どうして猫ってそうなのだろう(玉子)

topへ

いまさらですが「RDO」の使いかた

Vision、コピーライターの左ポケット、Tokyo Copywriters’ Streetの執筆者は
RDO(http://www.01-radio.com/)に名前と写真を掲載しています。
そこにはいくつかのボタンがあり
「CM一覧」ボタンをクリックすればその人の仕事を見ることができます。
「Vision」ボタンをクリックするとVisionの原稿が表示されます。

RDOの表紙には上の写真のようなバーがあります。
「Archives」にポインタを当てると
「TVCM一覧」「ラジオCM一覧」などと一緒に
「コピーライターで探す」という項目が表示されます。
コピーライターはそこからさがしてください。

なお、RDOに登録しているメンバーで
新しく自分の仕事として紹介したいものがあれば
事務局までご連絡ください(玉子)

topへ

撮らばひっかく

上の猫は友人宅の猫だが
写真が嫌いで、カメラを向けると怒る。
アップで撮ろうとすると前足が伸びてくる。
「いつでも引っ掻いたるぞ」の構えである。

しかしかわいい顔をしている。
撮りたくなる。
うーうー唸られ、シャーシャー威嚇され
やっと撮影させていただいた。

それにしても、完全に室内飼いの猫が
これほどまでに写真嫌いに育ったのはなぜなんだ(玉子)

topへ

いちご大福 佐藤理人くん登場

いちご大福とあだ名される佐藤理人くんは
焼肉を2kgほど食した後にいちご大福まで食べる強者であります。
来年Visionに参戦します。

topへ

名雪祐平 10年11月28日放送



星野哲郎

11月15日、
作詞家・星野哲郎が亡くなった。
85歳だった。

告別式で、
歌手の水前寺清子は、
生前に星野から託された
未発表の詩を読み上げた。

詩の冒頭は、こう始まる。


 あけみちゃんてば あけみちゃん
 再婚しようよ 天国で

それは16年前に先に亡くなった
妻へ伝える、
情感あふれる詩だった。



アーネスト・シャクルトン1

20世紀の初め。
ロンドンの新聞に載った広告が
話題をさらった。


 探検隊員求む。至難の旅。
 わずかな報酬。極寒。暗黒の長い月日。
 絶えざる危険。生命の保証無し。
 ただし、成功の暁には名誉と賞賛を得る。

これは、探検家アーネスト・シャクルトンが掲げた
南極探検隊員の募集広告。

この文を読んで、
心を熱くした者だけが
苦難を乗り越えられる資格をもつ。

この広告で、
シャクルトンの卓越したリーダーシップが
すでに発揮されていたのだった。



アーネスト・シャクルトン2

アーネスト・シャクルトン隊長は、
隊員27人を率いて
南極横断の探検に出発した。

そこは一夜にして
数十キロの海が氷るような極寒地。

南極を目前に巨大な氷に阻まれ、
船が座礁してしまった。

ついに沈没した船から脱出し、白い地獄を彷徨う。
それから20カ月も氷の上を漂流し、
耐え続けることになろうとは…。

絶望的な危機に、
隊長は考えた。

全隊員に生きる希望を与え続けよう。
希望とは仕事だった。

毎日時間割で仕事を担当させ、
使命と責任、緊張を維持した。


 人は命令では動かない。
 人は階級では動かない。

机上のリーダー論では命を守れない。
生きるんだ。

そしてシャクルトン隊長は、
素晴らしいリーダーシップで
一人も犠牲者を出すことなく、全員生還させたのだ。



ロッシーニ

tournedos rossini
牛ヒレ肉のロッシーニ風

この“ロッシーニ”とは
イタリア最高の作曲家ともいわれる
ロッシーニのこと。

フォアグラやトリュフを使ったレシピを考え、
料理に自分の名がつくほどの
美食家であった。

ある日、知人の家でご馳走になった後、
「また食べにいらして」と言われて、こう返した。

今でもいいのですが…。

古今東西、食いしん坊はどこか憎めない。



ラブレター1 カフカ

過去にもらった、
あのラブレターは、
いまどこにあるだろう。

作家カフカは、
恋人ができると情熱的に、
短期間に何百通も手紙を送った。

恋人たちは、まだ無名だったカフカからの
手紙を捨てずに、
別れてもずっともっていた。

きっと、カフカの手紙には言葉に命があった。
捨てられない。大切に残したい。
そんな魅力でいっぱいだったに違いない。

カフカの死後、多数の手紙は、
受け取った恋人の名前がつく本となった。
『フェリーツェへの手紙』は700ページ、
『ミレナへの手紙』は400ページを超えた。

逆にカフカ自身は、恋が終わると
女性から受け取った手紙は処分していたという。

だから、まさか自分が書いたラブレターが
世の中に公開されるとは。

天国で顔を赤くしたかもしれない。



三船敏郎

映画俳優、三船敏郎は、
『スター・ウォーズ』と
『スター・ウォーズ/ジェダイの復讐』
の出演依頼を2度とも断った。

いろいろな理由があったにしろ、
『七人の侍』の菊千代そっくりと言われる
一本気な性格が、どこかで影響してしまったのか。

それにしても…

仮面をかぶらないダースベイダー、
三船がライトセーバーを振り回す姿。

ぜひ観たかったもの。

映画ファンとして、
ほんとうに惜しいエピソード。



江戸川乱歩

平井太郎は、
貿易会社で働き始めたが
1年しか続かなかった。

それから、いろいろな仕事に手を出した。
古本屋、新聞記者、ポマード工場の支配人。
チャルメラを吹いて夜泣きそばを
売り歩いたこともあった。

そして、何度目かの失業のとき、
賞金目当てで小説を書き始める。

2週間で書き上げた処女作『二銭銅貨』は
見事雑誌に掲載されたのだった。

こうして平井太郎は、江戸川乱歩になった。

就職できても、
天職にめぐりあうまで
シューカツは続くのかもしれない。
乱歩のように。



ラブレター2 短い告白

一枚の便せんに
太宰治が書いた、
たった4文字のラブレター。

「こひしい」

はるか遠く、
南極越冬隊の夫にあてた妻からの、
たった3文字のモールス信号。

「あなた」

日本中で
送受信されているかもしれない、
たった2文字のメール。

「すき」

たったそれだけの、
すばらしい言葉。

さて、1文字だったら…
と考えながら、
夜は深まって。

topへ

蛭田瑞穂 10年11月27日放送


ミステリーの夜①エドガー・アラン・ポー

アメリカ人作家エドガー・アラン・ポーが
1841年に発表した小説『モルグ街の殺人』。
これが史上初の推理小説と言われる。

今日、推理小説で使われるさまざまなトリックは、
そのほとんどがポーによって発明されたと言ってもいい。

密室殺人、暗号のトリック、
探偵自身が犯人だったというドンデン返し。

探偵の活躍を探偵自身ではなく、
友人役が語るというシャーロック・ホームズでお馴染みの手法も
ポーが最初に使った。

エドガー・アラン・ポー。
彼こそが推理小説の父である。


ミステリーの夜②ヴァン・ダイン

ミステリーの巨匠ヴァン・ダインがつくった、
推理小説を書く上で作者が守らなければならない20のルール。
通称「ヴァン・ダインの二十則」。

たとえば、
「事件の謎を解く手がかりは、
すべて明確に記述されていなくてはならない」。

あるいは、
「探偵は論理的な推理によって
 犯人を決定しなければならない」。

それからこんなことも。
「占いや心霊術、読唇術などで
 犯罪の真相を告げてはならない」。

推理小説とはいわば、作者と読者の謎解きゲーム。
ゲームをおもしろくするには厳格なルールがなければならない。


ミステリーの夜③コナン・ドイル

1882年、スコットランドの若い医者が
眼科を専門とする診療所を開いた。
しかし、客足はさっぱりだった。

暇をもてあました彼は、
小遣い稼ぎのために小説を書き始める。
探偵が主人公の推理小説だった。

小説を書き上げると原稿をいくつかの出版社に送った。
しかし、出版社からはことごとく掲載を拒否され、
数カ月後にようやく採用されたものの、
原稿料はたった25ポンドだった。

その小説が『緋色の研究』。
アーサー・コナン・ドイルのデビュー作にして、
探偵シャーロック・ホームズを生み出した作品である。

まったく、人生には何が起きるかわからない。


ミステリーの夜④シャーロック・ホームズ

かの名探偵シャーロック・ホームズは一度殺害されたことがある。
犯人は誰あろう、作者のコナン・ドイルである。

ホームズの一連の作品によって
人気作家となったコナン・ドイルだが、
彼が本来書きたかったのは推理小説ではなかった。

そこで、ドイルはシリーズに終止符を打つべく、
『最後の事件』という小説を執筆し、
水煙を上げる滝壺の中にホームズを突き落とした。

ところが、事の顛末はドイルの目論見どおりに進まなかった。

シャーロック・ホームズの死に納得のいかない読者から、
抗議の手紙が出版社に殺到する。
その声におされてドイルはホームズの復活を決心するのである。

作者に殺され、読者に命を救われる。
名探偵の人生はじつに波乱に満ちている。


ミステリーの夜⑤フィリップ・マーロウ

作家レイモンド・チャンドラーが生みだした探偵、
フィリップ・マーロウ。

古今東西、さまざまな探偵がいるけれど、
彼ほど魅力にあふれる探偵はいないだろう。

貧しいけれど、誇り高い。
男らしく正義感が強いが、
女性らしい繊細さも持ち合わせている。

そんな彼だけに、粋なセリフがよく似合う。

「さよならを言うのは、少しだけ死ぬことだ」

「タフでなければ生きて行けない。
 優しくなければ生きている資格がない」

フィリップ・マーロウ。
その名はハードボイルドの代名詞。


ミステリーの夜⑥刑事コロンボ

くたびれた背広に、着古したレインコート。
櫛の通っていないボサボサの髪の毛。
いつも安物の葉巻を持ち歩き、
ところかまわず吹かそうとする。
口癖は「うちのカミさんがねぇ」。

テレビドラマから生まれ、
俳優ピーター・フォークが演じた刑事コロンボ。
風貌は冴えないが、
鋭い推理で知能犯の犯行を暴き、人気を博した。

 あのー、ちょっといいですか?

コロンボにそう声をかけられたが最後、
犯人はもう落ちるしかない。


ミステリーの夜⑦ヒッチコック

サスペンスの神様、アルフレッド・ヒッチコックは、
「サスペンス」と「スリル」と「ショック」の違いについて、
こう説明している。

乗るべき汽車の時刻に間に合うかどうかと必死に駅に駆けつける。
これがサスペンス。

ホームに駆け上がり、発車間際の列車のステップにしがみつく。
これぞスリル。

座席に落ち着き、ふと考えなおしてみると、
自分が乗るはずの列車じゃなかった、と悟るその一瞬がショック。

夜の長いこれからの季節。
ヒッチコックの映画を観て、ドキドキしてみませんか?

topへ

なるほど…

topへ

梅男くん

黒くて長い毛の猫がときどき庭に来るので
黒毛長丸と呼んでいたところ、迷子札に「梅男」と書いてあった。
区民農園の向こうのアパートに住むOLの飼い猫というのも判明した。

飼い猫とわかれば餌はあげない。
飼い主が何を食べさせているかわからないからだ。
たとえばドライフードで飼っている猫に缶詰をあげて
うっかりそれが気に入ってしまうと飼い主が困るからだ。

ところが、梅男くんは盗み食いをする。
うちで世話をしている迷い猫ハエタローが残したひと口を
知らない間に食っている。
わあぁ、いかんいかん。
取り上げるとうらめしそうな顔で見上げている。
猫に怨まれるのはどうも居心地が悪い。

しかも梅男くんは窓の外に30分くらい平気で座り込む。
なかなかあきらめない。
猫はどうしてそんなに暇なのだろう(玉子)

topへ


login