藤本組・藤本宗将

村山覚 13年7月27日放送



眠りの話 昼寝るチャーチル

イギリスの政治家、ウィンストン・チャーチル。
彼は当時としては珍しく、90歳まで生きた。

ある軍人が
「私は酒を飲まないし、葉巻も吸わない。よく眠る。
これが100%健康でいられる理由だ」
と言ったのに対し、チャーチルはこう返した。
「私はよく飲むし、次々に葉巻をふかす。 少ししか寝ない。
これが200%健康でいられる理由だ」

「少ししか寝ない」とうそぶいたチャーチルだが、実は毎日昼寝をしていた。
戦争中の司令室のすぐ横にはベッドルームがあったし、
国会議事堂の中にも昼寝用ベッドがあったそうだ。
チャーチルは昼寝でリフレッシュし、そのぶん深夜遅くまで働いた。

ノンフィクションの作家としてノーベル文学賞も受賞している
チャーチルらしい言葉を紹介しよう。

「私には元気づけてくれる夢など必要なかった。
 事実は、夢にまさるのである」

topへ

藤本宗将 13年7月27日放送


ROSS HONG KONG
眠りの話 阿佐田哲也の病

「麻雀放浪記」の作者・阿佐田哲也のペンネームは、
麻雀で徹夜を繰り返していた頃に
「朝だ!徹夜だ!」と言ったことに由来する。

けれど、あるときから徹夜ができなくなった。
ナルコレプシーという病気で苦しむようになったからだ。
突然強い眠気に襲われ、何をしていても眠ってしまう。

麻雀の途中でも一巡するごとに眠り、
また起こされては寝ぼけたまま牌を切る。
友人だった井上陽水によれば、
横にあったすし桶のトロをつまんで切ったこともあったという。
つかめない人だよね、と陽水は笑う。

病の苦しみを感じさせないポーカーフェイス。
彼は天性のギャンブラーだった。

topへ

藤本宗将 13年7月27日放送



眠りの話 左甚五郎の猫

日光東照宮の東回廊。奥宮(おくみや)の入り口に、
「眠り猫」と呼ばれる有名な彫刻がある。

一説によれば、日の光を浴びて眠る猫の姿で
「日光」を表現しているともいう。

しかし作者とされる名匠・左甚五郎には
実在したという証拠がない。

それは夢だったのか。
ただ、素晴らしい作品だけが現実に残されている。

topへ

藤本宗将 13年7月27日放送


F1-history
眠りの話 シューマッハのスタート

1991年8月23日、F1ベルギーグランプリ初日。
ひとりのドライバーが、念願のF1デビューを迎えていた。

ピンチヒッターとして突然転がり込んできたビッグチャンス。
しかし、緊張のピークであるはずの予選スタート前、
この新人はとんでもないことをやらかした。

当時のチームマネージャーはこう証言する。
「これから神経を研ぎ澄ませてタイムアタックしなければならないのに、
 この男はとてもリラックスしていたんだ。
 コクピットで居眠りする奴なんて聞いたことがない!」

だが本当に驚くのはスタート後だった。
下見もろくにしていないコースを彼はこともなげに攻略。
決勝こそリタイヤに終わったものの、
目の覚めるような走りで関係者の度肝を抜き、
わずか一戦でトップチームに引き抜かれた。

ミハエル・シューマッハ22歳のデビューレースであった。

topへ

藤本宗将 13年3月16日放送


milanissimo
導く言葉 1 アリゴ・サッキ監督

ACミラン監督をつとめたアリゴ・サッキ。
彼は80年代後半「ゾーンプレス」という戦術を生み出し、
サッカーに革命を起こした。

相手から組織的にボールを奪い、攻撃につなげる。
そのために必要とされるものは数多い。
高い運動能力と技術。スタミナ。そして献身的な精神。

そんな高度な戦術を浸透させるための練習もまた、
高度で厳しいものだった。
これじゃ全然楽しくありません、と選手が不平をもらすほど。

しかしサッキは、平然と言い放ったという。

 「楽しむのはこっちの役割じゃない」

そのかわり、攻撃的サッカーによるミランの快進撃は
熱狂的な観客をずいぶんと楽しませた。

topへ

藤本宗将 13年3月16日放送



導く言葉 イビチャ・オシム監督

かつてJリーグでジェフユナイテッド千葉を率い、
日本代表監督も務めたイビチャ・オシム。

彼のめざしたスタイルをひとことで言えば、「走るサッカー」。
試合でも、練習でも、とにかく選手を走らせる。
走ったぶんだけ彼の率いるチームは確実に強くなっていった。

とはいえ長いシーズンを闘うためには、
身体を休めることも必要だ。
あるとき選手たちに二日間の休みを与えることになったが、
そんなときでさえオシムはこう言った。

 「忘れないでもらいたい。休みから学ぶものはない」

走っていないときも、プレーのことを考えつづけよ。
プロならば、すべてをサッカーに捧げよ。
それがオシムの考えだった。

topへ

藤本宗将 13年3月16日放送


gordonflood.com
導く言葉 アレックス・ファーガソン監督

25年以上に渡ってマンチェスター・ユナイテッドを率いる
サッカー監督、アレックス・ファーガソン。

マンチェスター・ユナイテッドといえば
世界有数のスター軍団。
カントナ。ベッカム。クリスティアーノ・ロナウド。
ファーガソンがこれまで育ててきた教え子たちは、
卓越した技術をもった選手ばかりだ。

それでもファーガソンは、
スーパースターたちに
地味で基礎的な練習を何度も徹底的に繰り返させる。

 「練習は常に完璧なプレーを
  約束するものではないかもしれない。
  だが、より良いプレーを約束することは間違いない」

数多の才能を束ねる求心力は、強い確信から生まれる。

topへ

藤本宗将 13年3月16日放送


duycomposer
導く言葉 ジョゼ・モウリーニョ監督 1

ジョゼ・モウリーニョが
本格的にサッカーの指導をすることになった最初のクラブは、
決して強くない地元のジュニアチーム。

しかもライバルチームには、
若き日のフィーゴやルイ・コスタといった
才能あふれる選手がいた。

「勝てるはずがない」と尻込みする選手たちに、
モウリーニョは勝てると信じ込ませることからはじめた。
そして、そのための的確な戦術を与えた。

ひとつ勝つたび、少年たちの顔つきが変わる。
気がつけばチームは連勝街道をひた走っていた。

とはいえ永遠に勝ちつづけることはできない。
連勝は、14でストップする。

負けた翌日、肩を落として練習に現れた選手たちに、
モウリーニョからあるものが手渡された。
配られたのは、メダル。
そこにはこんな文字が刻まれていた。

 「トータル1260分間勝ち続けたことを讃える」

手にした自信と誇りを忘れるな。それがモウリーニョの教えだった。

topへ

藤本宗将 13年3月16日放送


duycomposer
導く言葉 ジョゼ・モウリーニョ監督 2

どんなときも自信たっぷり。
自分はスペシャルな存在だと公言して憚らず、
過激な発言で相手を挑発する。
それがサッカー監督ジョゼ・モウリーニョ。

しかし、その攻撃的なイメージとは裏腹に、
選手たちに対しては決して批判の矛先を向けない。

チームのために全力のプレーを厳しく要求する。
しかし結果が伴わなかったとしても、責任は自分が取る。
指揮官として、彼にはそれだけの覚悟があった。

2008-09年のチャンピオンズリーグ。
当時率いていたインテルが
マンチェスター・ユナイテッドとの大一番に敗れたあと、
モウリーニョはこう言い放った。

 「選手たちを批判したいなら、まず私を殺してからにしてほしい」

topへ

藤本宗将 13年3月16日放送


tpower1978
導く言葉 ジョゼップ・グアルディオラ 1

スペインリーグの強豪、バルセロナを率いた
サッカー監督ジョゼップ・グアルディオラ。

彼はとても研究熱心なことで知られる。
なにしろ、ある表彰式を欠席したときのコメントがこうだ。

「次の対戦相手の映像を3本
 分析しなければならないから」

それだけが理由かどうかは、わからない。
もしかしたら彼は自らの行動で、
選手たちに示したかったのかもしれない。

過去を賞賛されることよりも
これから賞賛されるための努力に時間を割くべきだと。

topへ


login