薄組・薄景子

石橋涼子 14年1月19日放送



誕生にまつわる話 ウィリアム・サローヤン

アメリカの作家、ウィリアム・サローヤン。

彼は貧しい移民の子として生まれ、
幼くして父を亡くし、
大恐慌時代に職を転々としながら青春期を過ごした。

恵まれた環境で育ったとは言い難い彼だが、
作品では庶民の生活を温かくユーモアたっぷりに描いた。
底抜けに明るくて、ときにセンチメンタルなストーリーは
大人からこどもまで多くの人に愛された。

彼はこんな言葉を残している。

 自分の誕生に我々は関与できないのであるから、
 生まれたということ自体、
 すでに「生きよ」という運命の結末なのである。

サローヤンは、
人が生まれや育ちを選べないことをよく知っていた。
「どう生きるか」を選べるのは自分だけ、ということも。

苦労を重ねた作家は、苦労をそのまま描かない。
ただ、人生は幸せばかりではないけれど、不幸ばかりでもない。
そんなささやかな日常を描き、
人々に明日への夢と希望を抱かせるのだ。

大きな夢ばかりが、アメリカンドリームではない。

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石橋涼子 14年1月19日放送



誕生にまつわる話 谷川俊太郎

芥川龍之介が描いた河童の世界では、
お腹の中の赤ちゃんに
この世に生まれたいかを問いかけ、選ばせる。

私たち人間はもちろん選べない。けれど
自分なりの答えを考えることができる。

10歳のこどもの質問
「人は、なにをしに生まれてくるのですか?」
に、詩人の谷川俊太郎さんはこう答えた。

 人は何かをしに生まれてくるわけではありません。

 生きているのが楽しくて

 幸せだと思えるように生きる、

 そのために生まれて、生きているんです。


さて、あなたの答えはどのようなものでしょう。

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小野麻利江 14年1月19日放送


ゆずか
誕生にまつわる話 大人の誕生

何歳の誕生日をすぎたあたりから、自分は大人になったんだろう。

もう子どもじゃない。もう大人なんだ。
そうはっきりと自覚した「あのとき」は、いつなんだろう。

詩人の長田弘は『深呼吸の必要』という詩集の中で、
その瞬間を、鮮やかに切り取ってみせる。

それはたとえば、自分についての全部のことを、
自分で決めなくてはならなくなったとき。

それはたとえば、歩くことの楽しさを無くしてしまったとき。

それはたとえば、ある日ふと、誰からも、
「遠くへ行ってはいけないよ」と言われなくなったとき。

それはたとえば、これ以上自分が大きくなれないんだと知ったとき。

それはたとえば、自分の人生で、
「こころが痛い」としか言えない痛みを、はじめて知ったとき。

九章からなる散文詩「あのときかもしれない」が見せてくれるのは
とりとめもないこととして片付けられるような、
でも、誰しもが通っている、火花のような瞬間の再体験。

子どもを大人にするのは、大人ではない。
子どもの中から、大人が生まれる。

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薄 景子 14年1月19日放送



誕生にまつわる話 宇宙カレンダー

アメリカの天文学者、カール・セーガンは
宇宙137億年の歴史を1年に圧縮した、
「宇宙カレンダー」なるものをつくった。

数字には諸説あるが、
宇宙の誕生を1月1日、
現在を12月31日と設定すると、
人類の誕生は12月31日20時48分、
キリストの誕生は12月31日23時59分56秒。

人生80年という時間は、わずか0.1秒だという。

きょうという日は、まさに一瞬の奇跡。
さて、どう過ごそうか。

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茂木彩海 14年1月19日放送


しで
誕生にまつわる話 幸田文の種

 心の中にはもの種がぎっしりと詰っていると、
 私は思っているのである。
 ものの種が芽に起き上がる時のちからは、
 土を押し破るほど強い。

幸田文、「崩れ」の一節。

40代で「種」を見つけた彼女は、
父の露伴を看取ったのち、文壇デビューを果たす。

種から発芽し、土を押し上げる誕生の瞬間に、
人は新しい自分を見る。

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茂木彩海 14年1月19日放送


poi beltran
誕生にまつわる話 ピクサー

1986年、スティーブ・ジョブスによって設立されたピクサー。

コンピューターで人間性のある動きを再現できるはずがない。
当時はその可能性に懐疑的なアニメーターがほとんどだった。

ところがその後、「トイ・ストーリー」の発表で世間は肝を抜かれる。

スティーブ・ジョブスという革命児と
ストーリー作りの天才、ジョン・ラセターの力で、
ピクサーは見事にコンピューターをアーティストの鉛筆にすげかえてみせた。

アカデミー賞を4度受賞し、「ウォレスとグルミット」に代表される
クレイアニメーションの第一人者、ニック・パークこう語る。

 ピクサーの映画は
 アートとテクノロジーの幸福な結婚から生まれた子供なんだ。

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薄景子 13年11月17日放送


Chickens in the Trees
アーティストの話 棟方志功

 愛してもアイシキレナイ

そう言いきるほど
板画を愛した世界的巨匠、棟方志功。
彼は一生の朝の数を

 三万六千五百朝

と表現した。
1年365日、100歳まで生きても
朝は3万6500回だけ。
だから、ひと朝だってムダにしない。
そんな棟方の板画家魂がこめられた言葉だ。

1日が生まれる朝は、
新しい何かが生まれる瞬間でもある。
うかうかしてはいられない。

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薄景子 13年11月17日放送



アーティストの話 淡谷のり子

20世紀を駆け抜けた
ブルース界のアーティスト、淡谷のり子。
戦時下で多くの慰問活動を行っていた淡谷の楽屋に、
ある時、若い兵士たちが来てこう言った。

自分たちは特攻隊員だから、
歌の途中で出ていくこともある、
その無礼を前もっておわびに来たのだと。

淡谷が一番を歌い終わると同時に、
その兵士たちはいっせいに立ち上がり、
舞台に向って敬礼をして出て行った。

もう帰ってこないかもしれない。
彼女は涙で、歌えなくなった。

 歌手は舞台で泣くものではありません。

淡谷のり子の信条が破られたのは、
生涯でこの一度だけ。

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茂木彩海 13年11月17日放送


quicheisinsane
アーティストの話 アニエス・ヴェルダ

フランス初の女性映画監督として知られる
アニエス・ヴェルダ。85歳。

ベルギーで幼少時代を過ごし、
第二次世界大戦に逃れて家族でフランスに渡った。

写真家として活動したのち、26歳で映画をつくり、
さらに2003年からはコンテンポラリーアーティストとしても活躍。

80歳半ばにして、3つ目の人生を歩みはじめた。

自分にしか撮れない写真を撮った。
監督した映画が話題になった。
新しい作風にチャレンジした。

誰が聞いてもアーティストらしい人生を送っている彼女だが、
自分の作品をアートと呼ばれるのは、あまり好きではないようだ。

 私は自分の作品を見てもらうのは嬉しいけれど、
 “芸術作品”なんて強制するのは大嫌い。
 重すぎるわ。ケーキに乗るさくらんぼのようなものよ。

無くても大丈夫だけれど、あったらもっと嬉しいもの。

自分の作品をそんな風に気楽に感じられたとき
アーティストはもっと自由になれるのかもしれない。

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茂木彩海 13年11月17日放送



アーティストの話 紫舟

社会人3年目で、夢を追いかけることを決意した
書道家、紫舟。

筆を運んだ痕跡をそのまま鉄のオブジェにしてみたり、
3Dのデジタル処理をしてみたり。
書道家として新しい試みをし続ける彼女には、ある夢がある。

 100年後に見ても新しいと感じさせる何かを持った書を書きたい。

アーティストとしての決意を込め、今日も筆を運んでいる。

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