薄組・薄景子

Vision収録見学記録 part3-(2)

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熊埜御堂由香-HP版と収録版

リスナーでお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、
このVision・HP版にのっている原稿と、
実際、放送されている原稿が
ちょっと違うことがあります。

書き上げた原稿を、収録現場で直すことが多々あるんです。
なので収録に立ち会うと、書いた人と、
演出する人が一緒に相談しながら原稿を直せるというメリットも。
今回はそのメリットをすっかり逃してしまいましたが・・・

たとえば、10月18日放送分の薄組の原稿だと、

(HP版)
琳派の創始者であり、
国宝「風塵雷神図」を描いた、俵屋宗達。

(収録版)
江戸時代の一大芸術、琳派の創始者であり、
国宝「風塵雷神図」を描いた、俵屋宗達。

(原稿版)
フェリックス・ゴンザレス=トレスの「気休めの薬」という作品だ。

(収録版)
13年前にエイズで他界した、コンセプチュアル・アートの鬼才、
フェリックス・ゴンザレス=トレスの「気休めの薬」という作品だ。

(原稿版)
スペインの建築家、アントニオ・ガウディ。
あのサグラダ・ファミリアの設計者。

(収録版)
スペインの天才建築家、アントニオ・ガウディ。
あの世界遺産として有名なサグラダ・ファミリアの設計者。

ずいぶん丁寧に、ネタを調べなおしていることがわかります。

VieVieさん曰く、Visionは言葉と言葉の間に、
ミックスした音楽も楽しんでほしいので、
意識的に間をとってミックスしているそう。
なので、主語を丁寧に繰り返してあげることと、
リスナーの知識はばらばらなので、
とりあげる人になるべく分かりやすい形容詞を補足することが
多いようです。

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Vision収録見学記 part3-(1)

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 熊埜御堂由香-遅刻しました!

10月17日、薄組の原稿収録に立ち会ってきました。
ほんの一瞬ですが・・・。
15時くらいから日曜分を撮るとディレクターのCさんからお伺いしていた
のですが、ついたらほとんど撮り終えていていたんです。
でも、じつはちょっと遅刻もしたんです。
その日は東京国際映画祭のオープニングで六本木は、人人人。
レッドカーペットならぬグリーンカーペットが、けやき坂に敷かれていました。
人を、かきわけ、かきわけ、スタジオについたら、
Cさんが、もう終わっちゃうよーと笑っていました。
今日はほぼ1発撮りですいすい進んだそうです。

なので、今回は、収録記というよりはVisionよもやま話に切り替えさせて
頂いていいでしょうか?いいですよね!?

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薄組・熊埜御堂由香 09年10月18日放送

せつない時計


せつない時計

同じテンポで時を刻んでいたふたつの時計がズレはじめ
やがて、どちらかが先に止まる。
アーティスト、フェリックス・ゴンザレス・トレスの代表作、
「パーフェクト・ラバーズ」。

どんなに完璧な恋人たちも、ずっと一緒にはいられない。
時間の残酷さを、時計は告げる。

ありきたりな掛け時計なのに
止まった時計の隣で動き続ける姿はせつなくて
恋人に先立たれたトレスの心と重なる。

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旅する時間 気休めの薬 

自分の体重とぴったり同じ重量のキャンディが床に
散りばめられている。

フェリックス・ゴンザレス・トレスの
「気休めの薬」という作品だ。

来場者は、ひとりひとつ、キャンディを持ち帰ることができる。
そのキャンディがポケットの中で旅する時間も、
どこかの国で、誰かの口の中でとけていく時間も、
彼の作品の一部なのだ。

常に持ち去られ補充されるキャンディは
彼の作品を継続させようとする人々の意思によって
作者の死後も、活発に活動している。

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薄組・石橋涼子 09年10月18日放送

時を越える


時を越える アントニオ・ガウディ

 人は2つのタイプにわかれる。
 ことばの人と行動の人だ。
 私は後者に属する。

そう語ったのは、スペインの建築家
アントニオ・ガウディ。
そう、あのサグラダ・ファミリア教会の設計者。

幼いころから手先が器用だった彼は
自らの手で作りながら設計することを好んだ。
一方で、自らの考えを伝えたり、
他人の理解を得るために
文章や図面を書くことは大の苦手。

おかげで、着工から120年という膨大な時間の経つ
サグラダ・ファミリアは、今もまだ建築中だ。
なにしろ、ガウディ先生は
たった一枚のスケッチしか
ヒントを残してくれなかったのだから。

晩年、完成までの年月を聞かれるたびに、
彼はこう言ったのだった。

 神様は完成をお急ぎではないよ。

きっと、人は2つのタイプにわかれる。
時間に囚われる人と
時間を越える人。
そして、後者にだけ与えられるのが、
未来に遺せる創造力なのだろう。

400年前からの手紙


400年前からの手紙 俵屋宗達

琳派(りんぱ)の創始者であり、
国宝「風神雷神図」を描いた、俵屋宗達。

その生涯は
自伝もなく、日記もなく、謎に包まれている。
自筆で残されているのは筍のお礼状一通だけだ。

 醍醐のむしたけ、五本送り下され、かたじけなく存じ候

彼が生きた時代から約400年。
自分の記録を残さず、作品のみを残した俵屋宗達が
いっそ潔く見えてくる。

愛の賞味期限


愛の賞味期限 鈴木三重吉

愛情は最高の調味料。
食べ物に対する愛情もその料理をおいしくする。

作家 鈴木三重吉の
湯豆腐に対する愛情は半端なものではなかった。

レシピを訊ねる友人に
4メートル近い巻物に
延々と湯豆腐へのこだわりを書いて送った。

そこまで愛情をそそがれたら、
湯豆腐だってとびきりおいしくなる以外に道は無い。

止まっている時間


止まっている時間 遠藤新(あらた)

1923年9月1日午前11時58分32秒。
その日、そのとき
後に関東大震災と呼ばれるマグニチュード7.9の揺れが起こった。

そして、その日、その時。
帝国ホテルの竣工記念パーティーが
まさに始まろうとしていた。

避難しようと慌てふためく人々の
悲鳴と怒号が飛び交うなか
ひとり、時間がとまったかのように、
ホールで大の字になって寝ている男がいた。

遠藤新。

天才建築家フランク・ロイド・ライトの片腕として
また、ライトが去った後の総責任者として
帝国ホテルを完成させた男である。

彼は言った。

この広い東京のなかで、今、最も安全な場所がここだ。

事実、崩壊と復興でめまぐるしい東京の街に
毅然と建ち続ける は
そこだけ時間が止まっているようだった。

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薄組・薄景子 09年10月18日放送

魂の待ち時間


魂の待ち時間 ミヒャエル・エンデ

時間どろぼうを描いた「モモ」で知られる、
ドイツ人作家、ミヒャエル・エンデ。
彼のコラムに、インディアンの興味深い話がある。

中米奥地の発掘調査団が
荷物の運搬役としてインディアンのグループを雇ったときのこと。

初日からすべり出し好調。
作業は予想以上にすすむが、
5日目、インディアンたちは地べたに座り込み、
無言のまま、ぴたりと動かなくなった。

叱っても、脅しても、全く動じない。
調査団も根をあげたその2日後、彼らは突然立ち上がり、
荷物を担ぎ上げ、予定の道を歩き出したという。

ずっと後になって、
インディアンのひとりが初めて答えを明かした。

 「わしらの魂があとから追いつくのを、
 待っておらねばなりませんでした」

スピード化、効率化、24時間営業。
次なる便利を求めて、前へ走り続ける文明社会に
もはやゴールは存在しない。

エンデが空想した「時間どろぼう」が
現実となった今。
私たちが、腰をすえて
置き去りにした魂を待つには、果たして何年かかるだろう。

見つかる時間


見つかる時間 森 瑶子

あの17年間は、なんだったんだろう。

与えられたレールにのって
大嫌いだったヴァイオリンを
泣きながら練習した日々。
しかしこの先、一生ガマンすることに耐え切れず、
17年のヴァイオリン人生を捨てる。

その後、彼女は
誰からも教えられたことのない小説を
すらりと書き上げた。

森瑶子38歳。
処女作「情事」、すばる文学賞受賞。

彼女は言う。

 「何かを好きで好きでたまらないほど、
 好きになれるのは、天賦の才なのだ」

その「何か」が見つかるまでの時間は、
人それぞれ、
寿命のように定められているのかもしれない。

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Vision収録見学記 part2-(3)

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石橋涼子-閑話休題オヤツのはなし

ちょこっと脱線ですが。
j-waveのスタジオ内は、禁酒禁煙はモチロンのこと、飲食もNGです。
ドアのすぐ外にワゴンがあって、
そこに飲み物やお菓子が置いてあるのです。

Visionの現場のオヤツ係は、ナレーターのVieVieさんです。
誰が決めたわけでもありません。自主的オヤツ係です。

VieVieさんのオヤツセンスはステキです。
今日のオヤツは「醤油チョコ」って。
普通、買いませんでしょ。
薦められたとき、以前、韓国土産でもらった
「キムチチョコ」の悪夢がよみがえりそうでした。
あと、「名古屋コーチンパイ」の白昼夢。
(なぜかうなぎパイに唐辛子が乗っています)

が!!
これが、おいしいんです!!
醤油とチョコのハーモニー!!
そのまんまですが。
なんか、おいしいんです!!!
(・・・伝わってますか?)

さっそくコンビニで探したところ、
全く見つかりません。
確かに、私が店長だったら入荷は躊躇する・・・

というわけで「醤油チョコ」の情報を
お持ちの方がいらっしゃいましたら、
コメント欄にお寄せ頂けますと幸いです!
お待ちしております。

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Vision見学記Part2-(2)

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石橋涼子ー現場の勢い

Visionは毎土曜日に土日放送分をまとめて録ります。

ディレクターさんは事前に原稿を読んで
音楽の間やイメージをぼんやりと描きます。
が、実際に音楽を選ぶのは、当日。
どんなに頭の中で考えても、
NAを聴いてみないとわからないから。

たとえば千利休。
和風な音をイメージしていたけれど、
この品のある感じはクラシックが似合いそうだ、と、
急遽バッハに変更してみたり。

その場でいくつも曲を聴いて
原稿の内容に、そしてVieVieさんの声に、
しっくりくるものを選んでいるのです。
「これだこれだ!」
ぴったりの曲を見つけたときの、ディレクターさんの
嬉しそうな声は
現場に勢いを与えてくれます。

そんなこんなで、迷ったり考えたり試したりしながら
選曲→録音→視聴を経てVisionはオンエアに至ります。
スピーディー。
(「納品」はありません。ここが放送局だから。うらやましい!!)

というか、あれ?本日の収録終了が18時です。
1本目はすでにオンエア済みじゃないですか!
夏休みの宿題を7月中にやるタイプだった私には
ちょっぴりスリリングなスケジュール感・・・

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Vision収録見学記part2-(1)

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石橋涼子-一発勝負のライブ感

再びVision収録現場におジャマしてきました
薄組の石橋です。
今回の収録、またまたラジオCMとの違いで
驚いたことがありました。

VisionはVieVieさんのナレーションと音楽を
同時に!録音しているのです!同録!!

セリフを噛んだら全部録りなおし。
音楽も一曲使用ならともかく、
数曲を組み合わせる場合は
ナレーションに合わせて一発勝負のミックスです。

すごーいすごーい!!

と、驚いていたら、プロデューサーさんに
なんで?と逆に驚かれました。
生放送が多いラジオとしては
これくらいの尺ならば一発で録れるのが常識なのです。

かっこいー。

モチロン、一発録り至上主義!というわけではありません。
ナレーション、音楽、SEそれぞれが素材としてスタンバイする中で、
何度かテイクを重ねながら、
30秒や60秒を仕上げていくラジオCMのつくり方も大好きなんですが。

とはいえ、VieVieさんとディレクターさんの息の合った
ライブ感には興奮です。
聴いているだけでドキドキです。楽しい!

そして!隣のスタジオではまさに番組生放送中。
ゲストに某アイドルグループ。の卒業生が来ていました。
「かわいいなあ」と、カメラ片手にちらちら覗いていたので、
スタッフさんにすっごく訝しげな顔をされました。
次回、Vision立会い不許可になったらすみません!

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Vision収録見学記(10)

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熊埜御堂由香―書く人と録る人

アイスクリームを落としただけで泣く石橋さんのお話は
Vision薄組の打ち合わせの場で飛び出した彼女の思い出話でした。

薄組は、薄景子さんを座長に、
薄さん、くまのみどう、石橋さんが原稿を持ち寄り
お互いの原稿を見ながら共通のテーマを見つけて
1日分、7~8本の原稿をまとめていきます。

打ち合わせで薄さん、石橋さんと話していたら、
わたしも小さい頃のことを思い出しました。
母親の長い、長い、お買い物が終わるまで
「ここで待ってるのよ」と言われ、手渡された
2段重ねのアイスクリームのこと。
ご褒美のはずの、それを食べきれずに
ドロドロに溶かしてひとり泣いたこと。

Visionの原稿を持ちよる、打ち合わせは
好きなひとの名前をこっそりだれかに
教えるような、なんともいえない恥ずかしさがあります。

だけど、どうでもいい話も、仕舞い込んでいた話も、
ついついしてしまう
そういう打ち合わせはたいそう盛り上がるのです。

収録の終わりにVieVieさんに言われました
「書き言葉と読み言葉で伝わることの違いをよく考えて原稿を書いてみてね。」

原稿で「哀しい」という言葉を使ったことに対する
アドバイスです。「哀しい」と「悲しい」のニュアンスの違い。
そう、原稿にした森茉莉というひとは
「哀しく、甘美で、幸せな」
人生をおくったひとですが、
「悲しい」人生を送ったひとではなかった。
そういう気持ちで書いていて、
そんな気持ちまで汲み取ってくれて収録するひとがいる。

自分が書いたものに他者のメスが入る、
おもしろさとおっかなさ。

収録から帰ってラジオをつけっぱなしにしていました。
VieVieさんの声がして、
自分が書いた言葉が、あたらしい音色で流れてきました。

(第一部 おわり)

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Vision収録見学記(9)

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石橋涼子―再び現場へ

そのころ収録現場では、
「男の人の涙って、理屈っぽくって、うすっぺらで、ダメね」
という言葉は、男性否定に飛びすぎでは?という意見が出ていました。

原稿を書いているときは、否定的なニュアンスにならずに
仕上げられるかと思っていたのですが、
Vision制作チームのみなさんとあーでもないこーでもないと
話し合っているうちに、もっと違うシメ方もあるなと思い直しました。

ドラとピカソの涙を比較してみるとか、
女の涙も男の涙も等しく肯定してみるとか、その場でうんうん考えました。

考えているうちに、個人的な恨みはさておき
「やっぱり涙に理屈っていらないんじゃないかな」
という自分の気持ちは変わらないことに気づきまして。

最終的に
「涙に理屈なんていらないのに」
という言葉で収録していただきました。

現場で迷うといつも、他のスタッフを不安にするかしらとか
現場の貴重な時間を私のせいで・・・とか
良からぬことを考えてしまうのですが。
Visionの現場は誰もが意見を言える雰囲気で、
つまり私も自分の意見をばんばか言えるし言わなきゃいけないし、
という、とてもとても有意義な雰囲気。

ぐずぐず悩むヒマがあったらコピーを1本でも多く書くべし!
と、コピーライターとして当然といえば当然のことを
胸に刻んだ一日でありました。

余談ですが、私はアイスクリームを落としただけで泣きますが、
みなさまいかがお泣きでしょうか。 (つづく)

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