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森由里佳 20年5月10日放送


ナイチンゲール

「包帯と消毒液が足りないので、在庫を使いたい」
看護教育の母・ナイチンゲールはそう言って、軍医長官に詰め寄った。
しかし長官は、軍のルールを知らない彼女を笑い、
3週間後の委員会の決定がないとその箱は開けられない、と伝えた。

ナイチンゲールは、箱の蓋を叩き割った。
「開いたじゃないの。持って行きますからね」

いのちが失われようとしている瞬間に、
ハンコリレーに付き合ってはいられない。
いつの時代も医療現場の人びとは、
いのちのためにまっすぐ突き進む。

医療従事者への感謝を込めて。


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森由里佳 20年5月10日放送


ナイチンゲール

1853年、看護の世界が変わろうとしていた。

ナイチンゲールが、
ロンドンのある病院の看護監督に着任したのだ。

母や姉は大反対。
当時のイギリスでは、看護師は病人の単なる召使いとされ、
未亡人や職を失ったメイドが行き着く末のものとされていたからだ。

それでも彼女は
各地の病院の状況を調べて
専門教育を受けた看護師の必要性を訴え、
実際に従軍して兵士を救い、
時にはヴィクトリア女王まで味方にしながら、
着実に看護師の功績を内外に示していった。

看護教育の母と呼ばれる女性は、
看護師という職業に誇りを与えた女性でもある。

医療従事者への感謝を込めて。


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森由里佳 20年4月12日放送


パンの話 パンがなければ

「パンがなければケーキを食べればいいじゃない」

マリーアントワネットが言ったとか言わないとか、
諸説あるこの言葉は、無知への揶揄として使われる。

ところが実際は、
フランス語を英訳したものを和訳したせいで広まってしまった誤りだという。

原文では、ケーキではなく、ブリオッシュ。
バターや卵を使う贅沢品とされるが、
等級の低い小麦で作ることもでき、
パンの代用品として半額ほどの価格で売られていたのだ。


2020年4月。
いろんな憶測が飛び交うこんな春だからこそ、
凛とした心を忘れずにいたい。


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森由里佳 20年4月12日放送


パンの話 家で楽しむ

朝、トースターからただようパンのにおい。
香りの五線譜をたどって深呼吸すれば、
胃袋がグゥゥと歌いだす。

そのままかぶりつくのもいいが、
とけたバターが滲み込んだ
こがね色を楽しむのもいいし、
鮮やかなベリーのジャムの
てらてらとした輝きを楽しむのもいい。

ゆっくりとふたつに割れば、
白いふかふかの生地から
もわりと湯気がたちのぼる。
朝の光に湯気を透かせば、
光にきらめく粒たちが
ゆらりゆらりと遊んでいる。

いつもより、ゆっくり観察してみよう。
家にいても、世界はけっこう、おもしろい。


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森由里佳 20年3月8日放送

World Economic Forum (www.weforum.org)
彼女に感謝 緒方貞子

去年の秋、ひとりの女性が亡くなった。
日本人で初めて国連難民高等弁務官を務めた、緒方貞子さんだ。
彼女は言った。

日本のあらゆる若い世代に、
『何でもみてやろう』『何でもしてやろう』という姿勢を、
意識的に持ってもらいたいと思います。

多くの難民のみならず、
多くの日本人女性に勇気を与えてくれた緒方さん。
姿勢をただして、1歩ずつ進んでいきたいところです。

今日は国際女性デー。


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森由里佳 20年3月8日放送

The Official CTBTO Photostream
彼女に感謝 中満泉

国連事務次長を務める中満泉さん。
2018年、フォーチュン誌の
「世界の最も偉大なリーダー50人」に選ばれたほどの彼女は、
一体どうやって巨大な課題に挑んでいるのだろうか。

課題はたくさんあるので、自分が興味ある事を追求していけばいい。
安全保障、人権、女性、気候変動など。
そういう人たちが増えていくと、全体的に色々な課題が考えられると思います。

そうだ。課題は、気候変動や外交問題だけじゃない。
私たちにできることは、興味の数だけある。
なんだか背中を押していただきました。

今日は国際女性デー。


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森由里佳 20年2月9日放送

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肉  生け捕りジビエ

鹿、兎、鴨、イノシシ…
これらの動物に共通点があるとすれば、
ジビエと呼ばれて美食家たちに愛されていることだろうか。

自然の命をいただくのだから、最もおいしい食材にしないと申し訳ない。

あるジビエハンターは、そういって、鉄砲ではなく手作りの罠にこだわる。
鉄砲で傷つけてしまうのではなく、素手で捕獲し、生け捕りにするのだ。
そうして捕獲から解体、調理までのすべてを行うのだという。

自分でやりきるから、余すことなくいただける。
「いただきます」の本来の姿を、突き付けられた気がした。


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森由里佳 20年2月9日放送


肉  ジビエと人びと

ジビエとは、狩猟によって捕獲された野生の鳥と獣の食肉のことだ。
実は、ジビエ流行の裏側には、
ジビエ、いや、野生の獣による農作物の被害という問題がある。

捕獲した獣たちを殺処分するのではなく、
ジビエとしてその命のありがたみをいただけないか―?
そう考えた自治体や地域団体が、
衛生的な処理とスピーディな流通を実現させようと挑戦を続けている。

美味しくて高級、貴重なジビエ。
ナイフを入れる時には、さまざまな人の熱意にも感謝しながらいただきたい。


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森由里佳 20年1月12日放送


和服  呉服

着物のことを和服というが、
呉服、というのも聞いたことがあるのではないだろうか。

諸説あるが、呉服の呉は、
三国志にも出てくるあの呉だと言われている。
それまで麻などが中心だった日本に、
呉の国からシルクという新しい生地がもたらされ、
それが着物のはじまりとなった、というわけだ。

現代でも、ときおり街中で見かける「呉服屋」さん。
今なおその屋号をかかげる裏には、
外国の高級な生地で仕立てた服を売るのだという、
誇りのようものがあるのかもしれない。


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森由里佳 20年1月12日放送


和服  呉服屋

三越が呉服屋から始まったというのは有名な話だが、
呉服を一般の人びとに広めたのも三越だ。

「店前現銀無掛値」(たなさきげんきんかけねなし)
これは三越が1683年に掲げたスローガン。
きちんと店頭で、定価で売りますよ、という意味だ。

当時、決まった値段は示されず、
裕福な人間しか購入できなかった呉服。
そんな中、三越は価格を抑え、定価の値札を提示することで、
呉服をふつうの人びとにも開放したのだ。

ちなみに、世界でこの販売方法が始まったのは
アメリカ・フィラデルフィア、1876年。
三越の、およそ200年も後のことである。


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