‘礒部建多’ タグのついている投稿

礒部建多 20年6月21日放送


神送り

人類は遥か昔から
疫病と向き合ってきた。

医療が発達していなかった頃、
疫病は悪い神が流行らせるものだと思われていた。

そんな邪神を送り出す「神送り」の儀式を、
落語の題材にしたものがある。その名も「風邪の神送り」。

町の人々が風邪の神を、
鐘や太鼓で囃し立てながら隣の町まで送っていく。
終いには川や海へ流してしまう。

しかし、「お名残り惜しい」と言う奴が現れる。
誰かと思ったら町内の薬屋であったのだ。

その夜、川に流れた風邪の神は、漁師の網に引っかかる。
発見した漁師が一言、「夜網に付け込んだな」と言って、
「弱み」にかけるのがオチである。

目には見えない敵を、漫談にして笑い飛ばす。
疫病も、人間の知恵とユーモアには敵わない。


topへ

礒部建多 20年6月21日放送


久松留守

人類は遥か昔から
疫病と向き合ってきた。

江戸時代。インフルエンザは、
「お染風邪」と呼ばれ恐れられていた。
対して人々は「久松留守」と書いた紙を
玄関や軒先に貼り付けて、疫病退散を願ったと言う。

これは、当時大流行した、
歌舞伎演目の「お染久松」に因んでいると言う。

内容は、お染と久松と言う男女の恋物語。
要は、「あなたの好きな久松さんは
留守をしておりますので、この家に来ないでくださいね」
と言うことらしい。

真剣なおまじないでありながらも、
洒落の心を忘れない。
そんな江戸の人々の心持ちに、学ぶことは多い。


topへ

礒部建多 20年4月19日放送


深海生物という先輩

今日はダーウィンの命日。
進化について考えたくなる日。

普段我々のような地上の生物は、
太陽の光をエネルギーに生きている。

一方、深海の生物たちは、
ほとんど光の届かない海底で生きる。
寒い、暗い、食料すら乏しい世界。

しかし、彼らはそんな世界でも優雅に暮らす。
独自の進化によって、生き抜く術を見出したのだ。

自家発電して光るサカナ。
自分の体で食べ物を作りだすカニ。
毒ガスを栄養に変えてしまうムシ。

不自由な状況を嘆かずに、自らを進化させる姿に、
今我々は学ぶことが多い。

太陽の光にも当たらず、家の中にいる時間は長くなる。
しかし、そんな生活すら優雅に過ごす進化を、みんなで考えてみよう。

深海生物にできるならば、人間にだってきっとできる。


topへ

礒部建多 20年4月19日放送


狩猟採集民の本能

今日はダーウィンの命日。
進化について考えたくなる日。

人類の歴史の9割以上は、
狩猟採集民として過ごしてきた。

だからこそ、常に変化する環境に適応するのは得意だが、
定住して同じことを繰り返す毎日は、生理的に耐えられなくなる。

その結果、本能的に外に出たくなってしまう。

しかし、それは過去の話。
いわんや現代においては外なんかに出ずとも、
新しいコトやモノに出会える。

集わなければできなかった、
飲み会さえも、今や遠隔で楽しめる。

体に組み込まれた、
狩猟採集民としての本能などに耳を傾けず、
現代人らしく、生活に変化を起こしてみよう。

想像力さえあれば、どこにいても人生は楽しめる。


topへ

礒部建多 20年2月15日放送

rhosoi
発酵と解毒

発酵しなければ、
食べられなかったものがある。

それは、フグの卵巣である。
青酸カリの1千倍とも言われる猛毒、
テドロトキシンが含まれているからだ。

石川県の郷土料理に、
フグの卵巣のぬか漬けがあるのを、ご存知だろうか。

4年もの時間、ぬかに漬けることで、
ぬか味噌の中に存在する乳酸菌が、卵巣の中で増殖。
テドロトキシンをエネルギーとして取り込むことで、
やっと解毒され、食すことができるのだ。

その味は濃厚で、
漬ける期間が長いせいもあり、
塩気がかなり強いのも特徴。酒の肴として好まれる。

高血圧の人にとっては、
ある意味「毒」なので、注意すべし。


topへ

礒部建多 20年2月15日放送

autan
くさや菌

くさやをつくるのは、
乳酸菌の一種の、くさや菌である。

くさや菌は、とても働き者であり、
もちろん上司の指示なんかなくとも、
テキパキ働いて、発酵を進めてくれる。

魚の内臓と塩水からなる「くさや液」の中に、
ムロアジなどの魚を漬けると、
くさや菌が、タンパク質や脂質を分解し、
旨味や、さらには抗菌性物質までを生み出す。
まさに、期待を超える働き。

しかし、漬けすぎれば、菌は減少する。
働かせすぎは、菌もご勘弁なのだ。
大切なのは、休ませること。
人も、くさや菌も、同じである。

老舗店のくさやが旨い理由。
それは、
くさや菌が働きやすい環境を整え続ける、
文字通りの優良企業だからである。


topへ

礒部建多 19年12月15日放送


魯山人のすき焼き

冬といえば、あたたかい鍋。

甘辛く煮たすき焼きは、定番とも言える。
しかし、北大路魯山人は、それを「甘くどい、ごちゃ煮」と酷評する。

決して、すき焼きが嫌いだった訳では無い。
魯山人なりのすき焼きの食べ方があったのだ。

まず、霜降りの牛肉を焼き、
すぐに酒を入れ、醤油と僅かなみりんで味をつけて、
焼きあがったら大根おろしを載せて食べる。砂糖は加えない。

その後、昆布と鰹の合わせだしを鍋に足し、
豆腐、白葱、春菊、椎茸などを入れて味をつけて煮込み、
それらに大根おろしを載せて味わう。

肉と野菜を一緒に煮込まずに、焼いては食べる、を繰り返すのだ。

今宵、魯山人の食べ方を試してみるもよし。
あなただけの食べ方を探すもよし。
鍋ほど、自由な料理はないのだから。


topへ

礒部建多 19年12月15日放送

GetHiroshima
水軍鍋

冬といえば、あたたかい鍋。

日本津々浦々、
風土が生んだ数々の鍋料理がある。

その中でも、
“水軍鍋”という響きは、異彩を放つ。

瀬戸内海の海老や蟹、鯛やサザエに蛤などの魚介類と
海草をふんだんに使い、昆布などを使った出汁で煮込んだ鍋料理。
今も、広島県尾道市や愛媛県今治市周辺で食べられている。

戦国時代にかけて因島を拠点に
活躍した海賊・村上水軍が出陣する際、
必勝祈願と士気向上のために食べていたのがその発祥とされる。

特に「八方の敵を喰う」という意味で、タコは必ず入れたと伝えられる。

鍋で験を担ぐ。
しかしそれ以上に、
一つの鍋を囲むことで、結束を強めていたのだろう。


topへ

礒部建多 19年10月20日放送


イザナギとイザナミ

10月20日(はつか)、今日は頭髪の日。

神々を生み出した、イザナギとその妻イザナミ。
イザナミは、火の神を生むと同時に、火傷の為に亡くなってしまう。

イザナギは悲しみ、死者の国・黄泉国(よもつくに)へ
妻を迎えに行ったがイザナミは姿を現さず、
あなたと一緒に帰れるかどうか確かめてくる間、
私の姿は絶対に見ないでくださいと言った。
しかし、イザナギは約束を破って
イザナミの変わり果てた姿を見てしまった。

恐ろしくなったイザナギは、黄泉国から逃げ出すが、
イザナミは、姿を見られた事への恥ずかしさのために憤慨し、
悪霊たちにイザナギを追わせた。

必死に逃げるイザナギは、
頭につけていた黒御鬘(くろみかづら)という髪飾りや櫛を投げ捨てると
そのたびに悪霊たちの足を止めることができたという。

江戸時代の国学者本居宣長によると
古代の日本人は長い髪を編んで草花や葛(かずら)を
飾っていたそうだ。



topへ

礒部建多 19年10月20日放送


洗髪休暇

10月20日(はつか)、今日は頭髪の日。

日本の歴史上、
最も有名な剣豪と言っても過言ではない、宮本武蔵。

人生のほとんどを放浪武士として過ごし、
13歳から29歳までに、60数回の決闘を行い、無敗だったいう伝説も残る。

映画やドラマに登場する武蔵は
ボサボサの長髪を、後ろで結わえているものが多い。

一説によると、
一年のうちでも余程の事がない限り、
髪を切るどころか、洗髪をする事もなかったという。

現代ほど、身なりを綺麗にする文化がなかったとはいえ
武蔵は別格だったようだ。

伝説の剣豪。
その強さの秘訣は、
身なりを整える時間も惜しまず、
剣技を磨いていた事にあったのかもしれない。



topへ


login