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藤本宗将 19年8月24日放送

SV01改
日本酒の多様性

日本酒のラベルを見ると、
精米歩合という数字が書かれている。

精米とは、酒の雑味をなくすために米粒の周囲を削り、
中心部の心白だけになるまで磨くこと。
大吟醸ともなると50%以下になる。

ついには昨年「0%」の日本酒まで登場した。
正確には0.85% なのだが、
精米歩合は小数点以下を切り捨てるため、0%表記となる。
かかった精米時間は5,297時間34分。
じつに7ヶ月を経てたどりついた究極の大吟醸酒だ。

ところがその一方で、
「低精米酒」というトレンドも生まれている。
大吟醸とは真逆の試みだ。
こちらは精米歩合96%というものまで現れた。
ほぼ玄米に近いが、これもまた旨い。

精米歩合の数字を競う時代は終わった。
日本酒の世界も「多様性の時代」なのだ。


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藤本宗将 19年7月20日放送

Blue-MauMau
世界とハンバーガー

アメリカから世界に広まったハンバーガーは
グローバル経済の象徴であり、豊かさの指標でもあった。

たとえば経済専門誌『エコノミスト』によって
考案された「ビッグマック指数」は、
ある国の国内通貨価値を知るための
指標として利用されている。

もうひとつ変わったところでは、
トーマス・フリードマンが提唱した
「黄金のM型アーチ理論」というものがある。

ある国の経済が発展して、
マクドナルドのチェーン展開を
支えられるくらい中流階級が増えると、
もはやその国の国民は戦争をしたがらなくなる、という主張だ。

確かにフリードマンがこの理論を思いついたとき、
マクドナルドのある国同士が
戦争を行った例はひとつもなかった。
しかし後にコソボ紛争などが起こり、この理論は破綻する。

「国が豊かになれば戦争はなくなる」と言えるほど
世界は単純なものではなかったのだ。
ハンバーガーがすべての国を笑顔にする日は、
もうすこし先になりそうだ。


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藤本宗将 19年6月22日放送

www.Stonehenge.News
夏至の話  イギリス

今日は、夏至。

太陽がいちばん高く昇るこの日は、
昔から神聖なものとして祝われてきた。

イギリスでも、夏至の日に
数万人が詰めかける場所がある。
それがストーンヘンジ。
中心にある祭壇石に朝日が差し込む光景を、
特別に遺跡の中で見ることができるのだ。

神々しい体験、と言いたいが
実際は日の出を待つあいだお祭り騒ぎ。
なかには泥酔して石を傷つける輩さえ現れる始末。
業を煮やした管理者側は
とうとう規制に乗り出した。

アルコール禁止。
寝袋禁止。
キャンプ禁止。

でも案外、古代人たちも
羽目を外して大騒ぎしていたのかも。


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藤本宗将 19年5月11日放送

Ippukucho
温泉の話・川原毛大湯滝

秋田県湯沢市にある「川原毛地獄(かわらげじごく)」
かつては硫黄の採掘場があったところで、
岩肌の至る所から水蒸気や火山性ガスが噴き出している。
古くからの霊場でもあり、
草木も生えず荒涼としたその光景は
まさに地獄さながらだ。

そこから湧いた温泉は沢の水と合流し、
落差20mほどの滝となる。
その名も川原毛大湯滝(かわらげおおゆたき)。
巨大な滝そのものが温泉になっているというわけだ。

ちなみに入浴できるのは滝壺とその周辺だけ。
川原毛地獄に湧き出ている温泉は
高温で危険なためご注意を。
かつて湯沢市のホームページには
こんなおそろしい警告文があったそうだ。

「誤って足を入れたりすると、
生きながらにして地獄を体験することになります。」

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藤本宗将 19年4月27日放送


平成よ、ありがとう。 「平成9年」

平成は「破綻」の時代でもあった。
上場企業の倒産は200件を超え、昭和の3倍のペース。

その象徴的な年が平成9年だ。
11月3日、三洋証券が破綻。
同じ月に北海道拓殖銀行・山一證券・徳陽シティ銀行が
連鎖するように破綻し、
多くの銀行で取りつけ騒ぎまで起きた。
護送船団方式によって守られてきた
「金融機関はつぶれない」という神話の崩壊だった。

以後さまざま々な改革が行われ、いまも模索は続く。
それは日本経済を鍛え直す過程だという
見方もできるかもしれない。

平成は失われた時代だったのか。
次の成長への準備期間だったのか。
それを決めるのは、これからを生きる私たちだ。

平成よ、ありがとう。
いよいよ、令和へ。


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藤本宗将 19年3月9日放送


切手のはなし レコードの切手

切手といえば、
コレクションを楽しむ人たちも多い。
そのため世界には、コレクター目当てに発行された
変わり種切手もたくさん存在する。

有名なのが、ブータンのレコード切手。
1970年代に発行されたこの切手は直径10数cm。
ちゃんと溝も刻まれており、
プレーヤーにかけるとブータン国歌や
ブータンの歴史を語る音声を聴くことができる。

ちなみにさらなる音質を求めたのか、
2008年にはCDの切手も発行されている。

さらに時は流れ、
手紙も、音楽もデータになってしまった時代。
これから果たしてどんな変わり種切手が
生まれてくるのだろう。


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藤本宗将 19年1月26日放送

preetamrai
発酵食品 豆腐餻と泡盛

沖縄独特の発酵食品といえば
「豆腐餻(とうふよう)」。
琉球王朝時代から代々伝えられてきた珍味で、
沖縄では泡盛を飲みながら、
箸や楊枝で少量ずつそいでゆっくり味わう。
その風味はエダムチーズのようだとも、
ウニのようだともいわれる。

つくりかたはシンプルで、島豆腐を
麹と塩、そして泡盛で漬けておくだけ。
麹菌による発酵に適した環境は
25~30℃の温度と高めの湿度だが、
それがまさに沖縄の気候というわけだ。

もちろん雑菌も増えやすい環境ではあるが、
そこで活躍するのが豆腐を漬ける泡盛。
高いアルコール度数で腐敗を防いでくれている。

泡盛があるから豆腐餻ができる。
豆腐餻があるから泡盛がうまい。
ふたつの発酵食品は、
沖縄が育んだ最高のコンビなのだ。


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藤本宗将 18年10月27日放送

181027-03
文字の日「チェロキー語」

アメリカ先住民族のチェロキー族に、
シクウォイアという銀細工師がいた。

白人と交流があった彼は
「文字」という概念に触れ、感銘を受ける。
そしてめざしたのは、
文字を持たないチェロキー語の
読み書きを可能にすること。

苦労の末に完成したのが
85文字の「チェロキー文字」。

形はアルファベットやアラビア数字にも似ているが、
表す音はまったく違う。
シクウォイアは既存の文字を参考にしたが、
それらを理解することはできなかったためだ。

ひとりの力で民族に文字体系をもたらす。
後にも先にも例のない偉業である。


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藤本宗将 18年8月25日放送

180825-04 Frank Kehren
空港のはなし 


テンジン・ヒラリー空港。
かの有名な登山家の名を冠したその空港は、
ネパール東部のルクラという街にある。

その名から想像できる通り、
エベレストのネパール側登山口として利用される。
だが登山家たちにとって、
この空港は最初の関門と言えるのだ。

山の天候が非常に変わりやすいというだけではない。
標高が2,800 mと高いために大気密度が低く、
エンジンの燃焼効率が悪くなり、翼も揚力を得にくい。
なのにこの空港では、
たった一本しかない滑走路の長さがわずか460m。
パイロットには高度な技術が要求される。

着陸の際は滑走路南側からの侵入となるが、
12%の上り勾配が付いており、その先は山と壁。
スピードを落としきれなければ壁に激突する。
引き返してのやり直しもきかない、一発勝負。

離陸の際は逆に滑走路の北側から
下り坂を直進していくかたちになる。
短い距離で速度を上げなければならないが、
滑走路の先は深さ600mの谷。
離陸に失敗すれば、奈落の底だ。

登山の前からこれほどの試練を与えるとは。
やはりエベレストは、世界一の山だけのことはある。


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藤本宗将 18年5月12日放送

180512-02
秋山徳蔵とニホンザリガニ

パリで修行中の料理人・秋山徳蔵が
日本に呼び戻されたのは、1913年のこと。
大正天皇の即位を祝う晩餐会のために、
彼の腕が必要とされたのだ。

そのメニューの目玉として秋山が考えたのが、
フランスでは高級食材である
ザリガニを使ったポタージュ。

しかし当時入手できるザリガニといえば、
北海道などに生息するニホンザリガニしかない。
しかも来賓客は2000人。
それでも諦めきれなかった秋山は、
なんと北海道の陸軍第七師団にザリガニ捕獲を依頼。
兵士を動員して3000匹ものザリガニを確保した。

晩餐会の真のミッションは、
海外からの来賓を一流のフランス料理でもてなし
日本を一等国と認めさせること。
史上最大のザリガニ捕りは、
国家の威信をかけたプロジェクトだったのだ。


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