古居利康 13年8月25日放送


ykanazawa1999
タルコフスキーの日記から ⑤1971年10月23日

『10月23日
 日本は驚くべき国だ。
 ヨーロッパともアメリカとも、
 何ひとつ共通するところがない。偉大な国だ。
 だれもチップを受け取ろうとしない。
 失業者もいない。』

と、映画監督タルコフスキーは
1971年の日記に書いた。

映画『惑星ソラリス』のロケから帰国して1週間。
165分の映画の中で約6分間、カットなしで
使用された首都高速からの移動撮影は、
われわれが見慣れた東京とはまるで別ものに見える。

赤坂トンネルから新宿方面に向かう首都高。
タクシーやトラックが追い抜いていく。
見覚えのあるホテルや高層ビルが左右に映り、
左手に中央線の車両が飛ぶように過ぎ去ったかと
思えば、その先になぜか銀座と羽田の分岐点が来て、
振り出しに戻るかのように一ノ橋から飯倉へ
疾走する風景・・。

ソヴィエトで製作された映画『デルス・ウザーラ』
が縁で、親交を深めていた黒澤明が、
タルコフスキーの日本ロケに協力したと言う。
映画に登場する首都高の風景は、
タルコフスキーが滞在していたホテルから
黒澤の事務所に向かう道筋だった、という説もある。

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