石橋涼子―再び現場へ
そのころ収録現場では、
「男の人の涙って、理屈っぽくって、うすっぺらで、ダメね」
という言葉は、男性否定に飛びすぎでは?という意見が出ていました。
原稿を書いているときは、否定的なニュアンスにならずに
仕上げられるかと思っていたのですが、
Vision制作チームのみなさんとあーでもないこーでもないと
話し合っているうちに、もっと違うシメ方もあるなと思い直しました。
ドラとピカソの涙を比較してみるとか、
女の涙も男の涙も等しく肯定してみるとか、その場でうんうん考えました。
考えているうちに、個人的な恨みはさておき
「やっぱり涙に理屈っていらないんじゃないかな」
という自分の気持ちは変わらないことに気づきまして。
最終的に
「涙に理屈なんていらないのに」
という言葉で収録していただきました。
現場で迷うといつも、他のスタッフを不安にするかしらとか
現場の貴重な時間を私のせいで・・・とか
良からぬことを考えてしまうのですが。
Visionの現場は誰もが意見を言える雰囲気で、
つまり私も自分の意見をばんばか言えるし言わなきゃいけないし、
という、とてもとても有意義な雰囲気。
ぐずぐず悩むヒマがあったらコピーを1本でも多く書くべし!
と、コピーライターとして当然といえば当然のことを
胸に刻んだ一日でありました。
余談ですが、私はアイスクリームを落としただけで泣きますが、
みなさまいかがお泣きでしょうか。 (つづく)
Vision収録見学記
Vision収録見学記(9)
Vision収録見学記(8)
石橋涼子―現場ときどき脱線
収録が続きます。
私は今回2本の原稿を書かせて頂いたのですが
事件はピカソの愛人ドラ・マールによってもたらされました。
本能で泣く女ドラ・マールに対して、
一度だけ涙を見せたピカソ。
ドラが涙の理由を聞くと、
「人生はあまりにもひどい、という以外に説明ができない」
なんて言っちゃって、しっかり説明しちゃうんですね。
時代はスペイン内戦の真っ只中、
ピカソがゲルニカを制作していた頃。
ここでいう「人生」は、ピカソ個人の人生というよりも
運命とか、人の世の愚かさとか、もっと大きな意味ですね。
でも、私がこの話を読んだときに感じたのは、
原稿の最後に書いた一文、
「男の人の涙って、理屈っぽくって、うすっぺらで、ダメね」
という気持ちだったんです。
さて、また脱線します。
私事で恐縮ですが、学生のころの話でございます。
ある日、私への恋心が冷め切った恋人から、
とーとつに別れを切り出されました。とほほ。
そのとき、なぜか彼は、
意味の無い理屈を言いやがったのです。
「二人の成長のためにも、別れるしかないんだよ」
なぜ「冷めました」と素直に言えないのでしょうか。
理屈とか説明とかいらないから!
それ、自分のための言い訳であって、私のためじゃないから!
どあほー!!
あ、遠くに行ってばかりですみません!
Visionに戻ります! (つづく)
Vision収録見学記(7)
熊埜御堂由香―美しい音色の意味は?
Visionの最後には、
なにやらおしゃれなフランス語がMIXされています。
語学がさっぱりなわたしには、
「もにょもにょもにょもにょ、Vision」と聞えるけれど、
心地よいサウンドロゴみたいな、詩みたいなあの音色。
あらかじめ用意してあるひとつの素材をあてて
作っていると思ったら・・・
VieVieさんがその都度読んでいるではないですかー!!??
フレーズも数種類あって、
毎回、その場の判断で使い分けているそうです。
私の原稿にくっつく、あの「もにょもにょ」は
いま、読み上げられたあの音色、
世界にひとつしかないのかと思うとありがたさ倍増。
「もにょもにょ」は、日本語に訳しても美しい響きを持つ言葉です。
Vision du passé, (ヴィジョン・デュ・パッセ)
過去のヴィジョン
du present, (デュ・プレザン)
現在のヴィジョン
du future, (デュ・フューチュー)
未来のヴィジョン
Le future etait deja la. (ル・フュチュー・エテ・デジャ・ラ)
未来はもうそこにあった。
Vision
(つづく)
Vision収録見学記(6)
熊埜御堂―憧れの所作
収録の現場でうっとりさせられる所作がありました。
ディレクターのCさんが、
ガラス越しにDJブースのVieVieさんに送るその合図。
指揮者が、演奏の幕を開けるタクトを振るように。
そっと、でも、その場を確かに操る、
手を天にかざす仕草です。
最初は、なんだろ、あれは?と思っていました。
でもだんだんと、
ああ、あの手つきを合図にVieVieさんは
原稿の読み始めを判断しているんだな
と分かってきました。
つまり、それはQ出しの合図です。
私たちコピーライターがラジオCMをつくるスタジオには
キューボタンといわれるスイッチが機材に組み込まれています。
そのボタンを押すと
防音ガラスに隔てられたナレーターさんの目の前のランプが光って
「今から原稿を読み始めて!」という合図が
送れるようになっているのです。
まさにそれと同じやりとりが
ガラス越しに向かい合うCさんとVieVieさんの間では
かざした手とまなざしの交換で行われていました。
単に習慣の違いと言えば、それまでなんですが
そのQ出しの所作が、Cさんのダンディないでたちと相まって、
なんとも言えずかっこいい!!
次、私がラジオCMを演出・収録できる機会がきたら
かざしたその手で、Q出ししてみようかなー
なんて思いました。 (つづく)
Vision収録見学記(5)
石橋涼子ー音楽のこと
収録中にメモしたフジ子・ヘミングの「トロイカ」を
CDショップで捜索中の石橋です。
音楽の話を私も少々。
Visionはラジオのショートプログラムであり、
ラジオCMではありません。
というわけで、使える楽曲の幅がとても広いのです。
スタジオ内には古今の名盤が山高く積まれていて、
この中のどの曲を使ってもいいのね!と思うと
興奮してワクワクそわそわモジモジします。
関係各位には言わずもがなの話ですみません。
それ以上に、一般の方にわかりにくい話ですみません!
音楽には色々と、そう、権利とか権利とか権利とかがあるんです。
保持(ホジと書いてヤスモチと読む)さんは、
CMでは使用不可能と言われるビートルズの音源を
使うためだけにジョン・レノンの原稿を書いたのだとか。
(いや、それだけじゃないと思いますけど)
私はエリック・サティの曲が好きなので、
この機会にリクエストしちゃおっかなーなんて思って
にやにやしていました。
そして思い出しました。
サティは死後50年経っているから、
音源によっては権利がフリーだ・・・
ディレクターさんが一生懸命MIXしている横で
そんなことを考えながら一人にやけたり、
がっくりしたり、気味の悪い百面相をしていました。
収録って楽しい・・・ (つづく)
Vision収録見学記 (4)
熊埜御堂―すすむ収録
石橋涼子さんの華麗なる脱線を軌道修正に参りました、
熊埜御堂由香です。
Visionはレギュラーで原稿を担当するメンバーに、
われわれ薄組のようにたまにお邪魔するゲストメンバーを加えると、
20 人以上のコピーライターが原稿を書いています。
収録は毎回、立ち会うわけではなく、
J-WAVEの方も、この原稿を書いたのはどんなひとなんだろうかと
いろいろな想像をふくらませていたよう。
名刺交換をして、
VieVieさんが、熊埜御堂という珍名にひとしきり驚いたあと、
「そういえば、ほじさんってどんなひとですか?うすいさんは?」
とキラキラしたまなざしでたずねてきました。
ほじに、うすい・・・??
そんな、メンバーにいないはず・・・、
あっ!
「保持(やすもち)に、薄(すすき)ですね。」
こんど、3人で珍名Visionチームを組もうかなぁと思うくらい、
紛らわしい名前!
そんな会話から、和やかな雰囲気に。
ディレクターのCさんが原稿にあう楽曲を
その場で選びMIXしていきます。
フジ子・ヘミングの原稿に当てられた彼女の楽曲を
石橋さんが気に入って、CD名を聞いてメモしていたり、
わいわいと、収録は進んでいきます。
その場でいろんな音源をききながらMIXしていくライブ感が新鮮!
広告の仕事では、納品してから、
OAや掲出までが1ヶ月以上空くこともざらです。
常に作業は前倒し。真夏にクリスマスの原稿を書いたり、
冬にキンキンに冷えたビールの
原稿を書くことも。
現在、土曜の15時。
そういえば、いま収録しているものが
数時間後にはもう放送網に乗っかって
世の中に届けられていくんだなぁと思うと
少し不思議な気持ちになりました。
(つづく)
Vision収録見学記(3)
石橋―前置き、またの名を脱線その2
厚焼玉子さんからは
「ヒルズはセキュリティが厳しい!
トイレに出たら、もう戻れない~!!」
と5回くらいアドバイスされて、いや、脅されていました。
佐藤さんから来客用セキュリティカードをいただいた時は
これでトイレに行ける!!と感動したものです。
しかしトイレの恐怖はセキュリティだけではありません。
六本木ヒルズでは、目的地に着けずにおろおろしている
埼玉(仮)のおばちゃんをよく見かけますが、
オフィスフロアもかなり複雑なラビリンスなのです。
トイレに行ったら、もうJ-WAVEがどこにあるのかわからない。
案内のお姉さんもいないし、案内板もない。
これも一種のセキュリティ・・・!?
というわけで、私がトイレをどうしたかというと、
ガマンしました。はい。
冷えのキビしい冬だったらやばかったです。
またまた脱線してしまいました。
今度こそ・・・
収録は、J-WAVE内のスタジオで
プロデューサーさん、ディレクターさん、ミキサーさん、
そしてナレーターのVieVieさんの4名で進められます。
みなさんで、侃々諤々と意見をぶつけあったり
それぞれの解釈を述べたり、談笑したりしながら
Visionは作られているのです。
ラジオへの愛がだばだばと溢れる現場です。
森でマイナスイオンを浴びるより元気になれます。
われわれもご挨拶をさせて頂いて。
さあ、収録が始まります。
(つづく)























