薄組・薄景子

石橋涼子 17年12月31日放送

171231-01

大晦日の話し 正岡子規の大晦日の一句

明治28年の今日、
正岡子規は根岸の家で療養中だった。
この年の春、日清戦争に従軍記者として赴くも、
帰りの船で喀血し、一時重体に陥った身だ。

しかし大晦日のこの日は、かねての約束通り
松山から夏目漱石が訪れ、高浜虚子もやってきたのだった。
まだ確たる地位も名声もない20代の若者が集まり
温かいこたつを囲んだ賑やかな年の瀬。
子規は、健康や将来への不安を一時忘れたに違いない。
この日に詠んだのは、飾らない歓びそのままの一句だ。

 漱石が来て 虚子が来て 大三十日(おおみそか)

今日は大晦日。
2017年最後の日。

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石橋涼子 17年12月31日放送

171231-02

大晦日の話し 大晦日

江戸時代では、大晦日と言えば、
ツケ払いをした買い物の支払いを清算する日でもあった。

井原西鶴の書いた『世間胸算用(せけんむねさんよう)』は、
大晦日に借金取りと奮闘する町人たちの物語だ。
居留守や仮病、ケンカなど、あらゆる手段で商人から逃げようとする
人間臭い駆け引きが、ユーモアたっぷりに描写され
西鶴晩年の傑作とも言われている。

西鶴は、大晦日にまつわるこんな句も残している

 大晦日 定めなき世の 定めかな

当時は徳川綱吉の治世で変化の慌ただしい世の中。
それでも大晦日は定め通りにやってくる。と、解釈することもできるが、
それでも大晦日の借金取りだけはちゃんとやってくる
と解釈することもできる。
人気者の西鶴先生も、町人と同じ苦労をしていたと考えれば
親しみも倍増するというものだ。

今日は大晦日。
2017年最後の日。

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茂木彩海 17年12月31日放送

171231-03

大晦日の話し 大晦日の決意

大晦日に立てた新年の目標を達成できた人は、
実際のところどれほどいるのだろう。

大抵は、ほこりを被った去年の目標をもう一度発掘したり、
大きな目標を新調したり。
進歩しているやら、していないやらで行ったり来たりしてしまう。

そんなあなたに、
女優、カレン・ラムの言葉を捧げたい。

 あなたは一年後、今日始めなかったことを後悔しているかもしれない

小さくても明日からすぐ始められる目標を考える。
今年はそんな大晦日でも良いかもしれない。

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小野麻利江 17年12月31日放送

171231-04
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大晦日の話し 蕎麦

大晦日に蕎麦を食べる由来には、諸説ある。
「細くて長いから、長寿につながる」とか、
逆に「切れやすいから、災いを断ち切れる」とか。

さらには、
金細工で飛び散った金粉を蕎麦粉で集めたことから、
「金(かね)を集めるもの」と縁起を担がれた、
という由来も有力だという。

今日は大晦日。
あなたはどんな願いをこめて
お蕎麦をすすりますか?

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小野麻利江 17年12月31日放送

171231-05

大晦日の話し 世界の大晦日

今日は大晦日。
日本では年越し蕎麦を食べ、
除夜の鐘をつきに、お寺に出かける人もいる。

今日は大晦日。
スイスでは、アイスクリームをスプーンですくって床に落とす。
「新しい年も幸運や平和、豊かさであふれるように」
という意味があるという。

今日は大晦日。
ルーマニアの一部の地域では悪霊を払うために、
クマの衣装に身を包み、ダンスをして年を越す。

今日は大晦日。
エストニアでは今日1日だけ、
7回・9回・12回など、何度も食事をする。
7・9・12が、エストニアの人にとっての
ラッキーナンバーだからだという。

国や地域によって過ごし方に違いはあれど、
「来年も良い年になるように」という願いは、世界共通。

今日は大晦日。
2017年最後の日。

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薄景子 17年12月31日放送

171231-06

大晦日の話し マザー・テレサの言葉

今年もあっという間だったなぁ…。

1年の終わりを迎えるたび、加速していくばかりの
時間の速さにため息がこぼれる。



できたこと、できなかったこと、

いろいろあるけれど、それはもう過ぎた話。

来年はどんな年にしようかと

思いをめぐらせていると、

ふと、マザーテレサの言葉を思い出す。



 大切なのは、
 どれだけたくさんのことをしたかではなく、
 どれだけ心をこめたかです。



あと少しで2018年。

来年は、心をこめて
何かをなしとげる年にしよう。

何をするかはさておいて。

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茂木彩海 17年12月31日放送

171231-07

大晦日の話し 除夜の鐘の音

大晦日の風物詩、除夜の鐘。

今年を振り返ったり、来年に思いを馳せたり。
鐘の音を聞いていよいよ年が変わることを実感するものである。

ところがこの鐘の音も、第二次世界大戦中には金属回収令により
釣鐘が失われ、聞くことができなかった。

鐘の音が無い大晦日を過ごした
歌人、高田保馬はその静けさをこんな短歌で表現している。

 除夜の鐘遂にをならず夜更けて今さらなれやこのゆゆしさは

大晦日。
響く鐘の音は、平和の証。

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石橋涼子 17年11月26日放送

171126-01
JeepersMedia
香りの話 香りと味の関係

料理の味は、8割近くが香りだという。
香ばしい醤油の匂い、肉の脂が焼ける匂い、
爽やかな柑橘の匂い、温かい煮込みの匂い。
美味しい匂いは、私たちの食欲を刺激する。

その一方で、こどもが苦手なピーマンに代表されるように、
体に良いものが、いい香りとは限らない。

アメリカのコラムニスト、ダグ・ラーソンの言葉。

 緑の野菜がもしベーコンのような匂いだったら、
 人間の平均寿命は格段に長くなっていただろう。

すっかり深まった食欲の秋。
栄養バランスも、大切に。

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石橋涼子 17年11月26日放送

171126-02
Dovima-2010
香りの話 ジバンシィのつくった香り

デザイナーのジバンシィは、
女優オードリー・ヘップバーンを
ファッションの面で支えた存在でもある。
『ティファニーで朝食を』と聞いて
誰もが思い浮かべる黒のドレスも、彼の作品だ。

ジバンシィはオードリーのために
ドレスだけでなく、香りもデザインした。
香水の名前は、ランテルディ。
「禁止」を意味するフランス語で、
この香りを気に入ったオードリーがジバンシィに
私以外に使わせてはダメよ
と言ったことから命名されたのだとか。

オリジナルのレシピは、
清楚でフローラルな中に芯の強さが感じられる、
ジバンシィのミューズにふさわしい香りだったという。

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小野麻利江 17年11月26日放送

171126-03
wiserbailey
香りの話 香りの街・グラース

フランス南東部の都市・グラースは
世界的な「香水の都」と称され、
今もなお、フランス産の香水の半分以上は
ここで生産されている。

もとは革製品が主要産業だったが、
革手袋を外したときに手に残る臭いの対策として
「香り付き手袋」を売り始めたのが、香水づくりの始まり。
ラベンダー、ジャスミン、ローズマリー、
ミモザ、オレンジフラワー・・・。
温暖な気候に恵まれたグラースには
香りの原料となる花たちが数多く自生し、
今もなお、稀代の調香師たちの感性を刺激する。

エルメスの香水を手がける調香師、ジャン・クロード・エレナも、
グラースで調香師をしていた父親から、
香りについての「教育」を施されたことを語っている。

父は何か食べる前あるいは飲む前に
その一つ一つの素材をまず嗅がせるということを
僕と兄弟にさせてきました。
慌てて飲み込まず、ゆっくりと呼吸し、
思考することの喜びを発見しました。

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