薄組・薄景子

熊埜御堂由香 15年12月27日放送

151227-05

掃除のはなし 川上弘美の幸田文ごっこ

芥川賞作家の川上弘美さん。
彼女のエッセイでは、たびたび、主婦としての家事のあれこれが
ちょっととぼけた味で描かれる。

震災のとき、節電のために掃除機を使うのをやめて
ほうきと雑巾を使って掃除をしていた時のこと。
文豪、幸田露伴に家事を厳しくしつけられた
娘の幸田文になりきって、掃除をしてみようと思いついた。
幸田文ごっこと名付けてルールも設定した。
雑巾を絞る時、きっちり絞りきれているか?
隅から隅まで拭き残しはないか?
ほうきは正しく使えているか?
こんな具合に自分を厳しく叱りながら掃除をする。

家事の中で一番掃除が嫌いという川上さん。
ちょっとした現実逃避で、日常の掃除もなんとかやりきれる。
主婦の生活の知恵は、時に涙ぐましい。

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薄景子 15年12月27日放送

151227-06

掃除のはなし NYを変えたデヴィット・ガン

掃除。それは、環境を整えるだけでなく
人の心理や行動を変える偉大な力がある。

1980年代のニューヨークの犯罪件数を
激減させたのが、まさにこの掃除だ。

当時、地下鉄公団の総裁だったデヴィット・ガンは
地下鉄車両の落書きを徹底的に消すという対策を打ち出した。

すべての落書きが消された後、
増加する一方だった犯罪件数は90年代に激減、
年に60万件以上起きていた
地下鉄の重罪事件は75%も減ったという。

掃除は人の乱れを正し、心を磨いてくれるのだ。

来年の良い運気を願うなら、
今年の大掃除はいつもより気合をいれてはどうだろう。

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茂木彩海 15年12月27日放送

151227-07
白石准
掃除のはなし なくてもいいものを考える

掃除とは、捨てること。と一般的には解釈されるが
なくても良いものを選ぶ作業、とも言えるのではないだろうか。

掃除機で有名なダイソンは、
羽根をなくす、という掃除を
ある家電にほどこした。

そこで生まれたのが、羽根のない扇風機。

何十年も続く常識を、一掃することで
また新しい必要なものを生み出していく。

かの、スティーブ・ジョブスもこんな言葉を遺している。

 必要なものを考えるのは重要じゃない。
 必要じゃないものをどれだけ考えられるかだ。

ものの選び方ひとつで、いつもの掃除がちょっぴり楽になるのだとしたら。
この冬、試さない手は無いかもしれない。

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茂木彩海 15年12月27日放送

151227-08

掃除のはなし 掃除に必要な音楽

年末ともなると、頭にチラつく大掃除の3文字。
なんとか少しでも気分が乗るように、
掃除をするときは、お気に入りの音楽を流しながら。
そんな人も多いのではないだろうか。

ところが、昔の写真などを整理しているときに、
これまた昔の思い出がつまった曲が流れてしまうと話は違う。

手は止まり、なんとなくぼんやりしながら過去に身を馳せて
気づいたら時間が過ぎている。

そんなとき参考にしたいのが、
暮しの手帖社出版 「暮らしのヒント集」のこんな言葉。

 明日は起きぬけに行進曲をかけてみましょう。
 支度がテキパキとはかどるみたいです。

掃除をするぞ、と決めた日は、
音楽をつかって掃除にぴったりの空気に身を投じる。

そこまでしないと動かない、ずぼらな自分をちょっぴり笑ってやりながら、
大掃除。ぼちぼちはじめてみましょうか。

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薄景子 15年11月8日放送

151108-01

夫婦のはなし 手を握る

女性のストレスは、夫の手を握ることで軽減される。
そんな研究結果がバージニア大学の
ジェームズ・コーン博士らによって発表されている。

この研究によれば、幸せな結婚生活を送る女性が、
ストレスを感じた際に夫の手を握ると、
ストレスが即座に解消されることが、
脳のスキャンではっきりと示されたという。 

コーン博士は、夫の手を握ることが
女性のストレスの程度に与える影響の大きさに驚いたと話す。

街で手をつなぐ老夫婦を見かけると
幸せな気持ちになるのは、
ストレスを癒す手のぬくもりの
おすそわけかもしれない。

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薄景子 15年11月8日放送

151108-02
quinn.anya
夫婦のはなし 行正り香

料理研究家、行正り香(ゆきまさりか)。
その人気のヒミツは、手軽でおいしいレシピだけでなく
女性の共感を呼ぶエッセイの数々だ。

彼女の独身時代のエッセイにこんな話がある。
留学していたときの友人に会いに、ジェノヴァに行ったときのこと。
友人の大家族に囲まれて歓迎を受ける中、
そのひいおじいちゃん夫婦から行正はつっこみを受ける。
「彼氏がおるのか?」「まだ結婚しないのか?」

「まあ、いないことはないんだけど、価値観が合わないし…」
そうこたえると、老夫婦はいったという。

「わしら、70年以上一緒にいると会話もない。
 じゃが、毎日グラス2杯のワインを飲んで、ばーさんのつくったものを
 食べるのがただひとつの楽しみじゃ」

夫婦の共通点は、ひとつだけあればいい。
料理はとかく、そのひとつになりやすい。

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石橋涼子 15年11月8日放送

151108-03
matsukawa1971
夫婦のはなし 小津安二郎が描いた夫婦

小津安二郎の映画「お茶漬けの味」は
裕福だけれど、かみ合わない夫婦の物語だ。

真面目で努力家で無口な夫と
派手好きでお嬢様育ちの妻。
味噌汁かけごはんが好きな夫と
それを下品だと言って怒る妻。

育った環境も価値観もまるで違うふたりは、
話し合うことも歩み寄ることもせず
互いに距離を置く。
そんな夫婦の関係が変わるのが、
深夜にお茶漬けを食べる場面だ。

家事が苦手な妻と夫でたどたどしく準備をし、
ふたりで食卓につく。
夫が美味い。というと、
妻も美味しいわ。とつぶやく。
ひとりごとのような会話から、
わだかまりが溶け、ふたりの本音がこぼれ始める。

食卓を囲む風景が仲直りの象徴となるのは、
恋人ではなく、夫婦の物語ならではだ。

最後に夫がぽそりと言う。
これだよ、夫婦はお茶漬けの味なのさ

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石橋涼子 15年11月8日放送

151108-04

夫婦のはなし 前島密の家の顔

郵便制度の創始者であり一円切手の肖像・前島密は
先見の明を持ち行動力に溢れる一方、
自他ともに厳しく、真面目で質素な性格だった。

なにしろ、ある時期にテレビ局が
前島密を題材にドラマをつくろうとしたが、
面白みや華やかさが足りないという理由で
企画が途中で没になったのだという。

ところが夫婦で過ごす時間はまた別の印象だ。
歳を重ねても夫婦水入らずで旅行を楽しみ、
家では得意の尺八を妻の三味線と合奏する。
夫婦で映っている記念写真は
一円切手の肖像とは対極の、目じりの下がった笑顔だった。

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小野麻利江 15年11月8日放送

151108-05
MacBeales
夫婦のはなし 2時間差で天に召された夫婦

94歳の夫と、92歳の妻。
そんな夫婦が、なんと、
2時間差で息を引き取った。

ニュージーランドで暮らしていた、
ヒュー・ニーズさんと、妻のジョアンさん。
67年ものあいだ連れ添った2人は
常日頃から、

私たちはお互いがいなければ生きていけない。

そう、口にし合っていたという。

ウェリントン郊外にある療養所に
夫婦そろって入ってから、じつに2ヶ月後。

闘病中だった夫・ヒューさんの死を看取った、
たった2時間後に
ジョアンさんは脳卒中で倒れ、
ヒューさんのあとを追うかのように
息を引き取ったという。

後日、地元紙の取材を受け、
ヒューさんとジョアンさんの
2人の子どもたちはこう語った。

両親を次々と喪って
私たちは喪失感と悲しみでいっぱいですが、
本人たちにとっては
幸せな旅立ちであったのだと思います。
奇跡としか言いようがありません。

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小野麻利江 15年11月8日放送

151108-06
Konstantin Leonov
夫婦のはなし 田辺聖子の「夫婦の幸福」

『人生は、だましだまし』というエッセイの中で、
作家の田辺聖子は、「夫婦の幸福」とはどういうものだろう
と思いを巡らせる。

「幸福」に相当する大阪弁は<エエ調子>。
夫婦がエエ調子でやっていくには、どうあればいいか。
そう考えて出した結論は、

 人生には<ナアナア>ですます、
 ということが時として必要であるが、
 その<ナアナア>度が一致するのが、仲のいい夫婦である。

というもの。

わざわざこんなアフォリズム・金言風にして
己の身に刻もうとしている時点で、
田辺自身も、まだまだ<ナアナアの度合い>が低い、と断じて
この考察は終わるが、
白黒つけようとせず、清濁を併せ呑む。
それが夫婦の幸福、という達観ぶり。

何年連れ添えば、
そんな境地になれるものやら。

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