薄組・薄景子

Vision収録見学記(8)

  • 森タワー090909


石橋涼子―現場ときどき脱線

収録が続きます。

私は今回2本の原稿を書かせて頂いたのですが
事件はピカソの愛人ドラ・マールによってもたらされました。

本能で泣く女ドラ・マールに対して、
一度だけ涙を見せたピカソ。
ドラが涙の理由を聞くと、

「人生はあまりにもひどい、という以外に説明ができない」

なんて言っちゃって、しっかり説明しちゃうんですね。

時代はスペイン内戦の真っ只中、
ピカソがゲルニカを制作していた頃。
ここでいう「人生」は、ピカソ個人の人生というよりも
運命とか、人の世の愚かさとか、もっと大きな意味ですね。

でも、私がこの話を読んだときに感じたのは、
原稿の最後に書いた一文、
「男の人の涙って、理屈っぽくって、うすっぺらで、ダメね」
という気持ちだったんです。

さて、また脱線します。

私事で恐縮ですが、学生のころの話でございます。
ある日、私への恋心が冷め切った恋人から、
とーとつに別れを切り出されました。とほほ。
そのとき、なぜか彼は、
意味の無い理屈を言いやがったのです。
「二人の成長のためにも、別れるしかないんだよ」

なぜ「冷めました」と素直に言えないのでしょうか。
理屈とか説明とかいらないから!
それ、自分のための言い訳であって、私のためじゃないから!
どあほー!!

あ、遠くに行ってばかりですみません!
Visionに戻ります! (つづく)

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Vision収録見学記(7)

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熊埜御堂由香―美しい音色の意味は?

Visionの最後には、
なにやらおしゃれなフランス語がMIXされています。
語学がさっぱりなわたしには、
「もにょもにょもにょもにょ、Vision」と聞えるけれど、
心地よいサウンドロゴみたいな、詩みたいなあの音色。
あらかじめ用意してあるひとつの素材をあてて
作っていると思ったら・・・

VieVieさんがその都度読んでいるではないですかー!!??

フレーズも数種類あって、
毎回、その場の判断で使い分けているそうです。

私の原稿にくっつく、あの「もにょもにょ」は
いま、読み上げられたあの音色、
世界にひとつしかないのかと思うとありがたさ倍増。

「もにょもにょ」は、日本語に訳しても美しい響きを持つ言葉です。

Vision du passé, (ヴィジョン・デュ・パッセ) 
過去のヴィジョン
du present, (デュ・プレザン)       
現在のヴィジョン
du future, (デュ・フューチュー)     
未来のヴィジョン

Le future etait deja la.  (ル・フュチュー・エテ・デジャ・ラ)
未来はもうそこにあった。
Vision

(つづく)

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Vision収録見学記(6)

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熊埜御堂―憧れの所作

収録の現場でうっとりさせられる所作がありました。

ディレクターのCさんが、
ガラス越しにDJブースのVieVieさんに送るその合図。

指揮者が、演奏の幕を開けるタクトを振るように。
そっと、でも、その場を確かに操る、
手を天にかざす仕草です。

最初は、なんだろ、あれは?と思っていました。

でもだんだんと、
ああ、あの手つきを合図にVieVieさんは
原稿の読み始めを判断しているんだな
と分かってきました。

つまり、それはQ出しの合図です。

私たちコピーライターがラジオCMをつくるスタジオには
キューボタンといわれるスイッチが機材に組み込まれています。

そのボタンを押すと
防音ガラスに隔てられたナレーターさんの目の前のランプが光って
「今から原稿を読み始めて!」という合図が
送れるようになっているのです。

まさにそれと同じやりとりが
ガラス越しに向かい合うCさんとVieVieさんの間では
かざした手とまなざしの交換で行われていました。

単に習慣の違いと言えば、それまでなんですが
そのQ出しの所作が、Cさんのダンディないでたちと相まって、
なんとも言えずかっこいい!!

次、私がラジオCMを演出・収録できる機会がきたら
かざしたその手で、Q出ししてみようかなー
なんて思いました。 (つづく)

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熊埜御堂由香 09年9月6日放送

元祖スイーツ男子


あの人の食 元祖スイーツ男子

スィーツ男子が流行だという。
スイーツ男子というのは甘党の男性だ。
甘いもの好きと、自然に言いやすい世の中になったのだろう。

けれども、甘党の真打ちは明治の昔にいる。
お汁粉を食べ過ぎて胃潰瘍を悪化させ
大量の血を吐いてもビスケットを食べたがり
臨終の床でもアイスクリームをせがんだ夏目漱石先生だ。

それでも自分では甘党だと思っていなかったので
こんなことをぬけぬけとおっしゃっている。

 あれば食うという位で、わざわざ買って食いたいというほどではない

甘党もここまでくると、ハードボイルドで男らしい。

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薄景子 09年9月6日放送

秋山豊寛


あの人の食 秋山豊寛

「これ本番ですか?」
世界初の宇宙飛行ジャーナリスト、秋山豊寛が、
衛星から発した第一声は有名である。

彼が地上400kmから見た
青い地球は、まさに「命の塊」だった。

そんな秋山が、宇宙の次に選んだ旅先は、農業。
現在、福島県で米や椎茸などの有機農業を実践している。

彼は言う。
 「人間が生物であることと、
 いちばん身近にある仕事が、農業だ」

命の塊であるこの星の、命をつなぐ食べ物をつくる。
農業ブームとは一線を画す、生きものとしての営みに
ジャーナリストの探求の旅は、果てしなく続く。

佐藤初女


あの人の食 佐藤初女

佐藤初女さんのおむすびを食べて、
自殺をとどまった青年がいる、という。
その理由は、「おむすびがタオルにくるんであったから」

彼女は、おむすびをにぎると、
ラップではお米が呼吸できないので
赤ちゃんをおくるみで包むように、
タオルでそっとくるんでおく。

そうして、「食」という命と
向き合っている。

標高400メートル、
岩木山の麓にひっそり佇む「森のイスキア」。
初女さんが「みんなのお家」と呼ぶここには、
声もしおれ、水さえのどを通らない人が、
心の重荷を下ろしにやってくる。

夜中にチャイムが鳴るときも
初女さんは身支度をして玄関にでる。
開けていいのか、一瞬の葛藤。
意を決して開ける扉は、彼女の心の扉なのだ。

受け入れられた旅人は、
やがて、ぽつりぽつりと言葉を発し、
初女さんのおむすびを食べ、
気づけば、自分で重荷を下ろして帰っていく。

佐藤初女、87歳。何をやっている人かときけば、
「食べることを大切にしています」

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石橋涼子 09年9月6日放送

向田邦子


あの人の食 向田邦子

向田邦子は、
ドラマ「寺内貫太郎一家」で
ささやかだけれど
確かなぬくもりのある
昭和の家族の生活を描いた。

朝食のシーンのト書きには、
毎回献立が書かれていた。

アジの干物に大根おろし、
豆腐と茗荷の味噌汁、
などなど

ある日、向田はメニューの最後にこう書いた。

ゆうべのカレーの残り

そこには、ドラマのワンシーンではなく、
昨日も今日も、明日も続く、
寺内家の生活が確かに描かれていた。

ロッシーニ


あの人の食 ロッシーニ

食いしん坊という存在は、
なんだか愛らしい。
食い意地が張っている、
というのとはちょっと違う。

「食べる」という行為を
心から愛し、無邪気に楽しんでいるから
ではないだろうか。

ロッシーニは本物の食いしん坊だった。
オペラ作曲家として人気も実力も絶頂の37歳で
「食」に専念する、という理由で
引退してしまったのだから。

大好きな料理を楽しむためにレストランをつくり、
大好きなトリュフを探すために豚を育て、
大好きなワインを楽しむためにレシピを考えた。

彼の音楽的才能を惜しんだワーグナーが熱心に説得しても
ロッシーニはラム肉の焼き加減を気にしてばかり。

そんな彼が心から涙を流したのは、生涯で二回だけだという。

一度目は、パガニーニの演奏を聴いたとき。
二度目は、トリュフがたっぷり詰まった七面鳥を
落としてしまったとき。

食に向かうとき、その人がどんな人間かがよく見える。

トーマス・エジソン


あの人の食 トーマス・エジソン

発明家トーマス・エジソンといえば、
電球を発明したこと。
よりも、

発電から送電までの
電気事業を整備したこと。
が、評価されている。

そんな天才エジソンがある日言い出した。

一日二食では健康に良くない。
一日三食にするべきだ。

こうして、アメリカ国民は健康のために
朝食を食べるようになった。

エジソンが発明したトースターで焼いた
こんがりキツネ色のトーストを。

モノをつくるだけでは売れないことを
彼は知っていた。
同時にマーケットもつくらないと。
エジソンは、本当の発明家だった。

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熊埜御堂由香 09年9月6日放送

森鴎外


あの人の食 森鴎外の秘密

家庭の中だけの、ちょっとマニアックな食の嗜好、
ひとつやふたつ、ひとにはあるものだ。

硬派な文豪、森鴎外の場合は・・・
ご飯に饅頭を割って載せ、煎茶をかける、饅頭茶漬け。

饅頭茶漬けは門外不出の家庭の秘密だったけれど
鴎外が死んだ後、
娘が書いたエッセイで世に知れわたってしまった。

お汁粉のようでおいしい、と娘は書いているが
天国の鴎外先生はどんな顔をしているだろう。

幸田文


あの人の食 父と娘の台所

幸田文(あや)は自分を「台所育ち」だと言った。

幼いころに母をなくし、
父、幸田露伴が家事全般を躾けた。

その台所仕事の手始めは、
文が7歳の頃から毎日の献立を記録する「だいどころ帖」
文が「とうふのおみよつけ」と、たどたどしく書けば、
露伴は、「味噌汁 つかみどうふ もみのり散らして」と
一言一句、きびしく直す。

露伴は文に言った。
 この帳面から音が聞こえてくるようにならなくちゃね

女学校に入って台所をあずかるようになった文は、
献立に迷うと、かつてつけていた「だいどころ帖」を何度も思い返した。

父の死後、文は食を題材にした小説やエッセイを数多く残したが
そのひとつにこんな短編がある。「台所のおと」

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Vision収録見学記(5)



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石橋涼子ー音楽のこと

収録中にメモしたフジ子・ヘミングの「トロイカ」を
CDショップで捜索中の石橋です。

音楽の話を私も少々。

Visionはラジオのショートプログラムであり、
ラジオCMではありません。
というわけで、使える楽曲の幅がとても広いのです。

スタジオ内には古今の名盤が山高く積まれていて、
この中のどの曲を使ってもいいのね!と思うと
興奮してワクワクそわそわモジモジします。

関係各位には言わずもがなの話ですみません。
それ以上に、一般の方にわかりにくい話ですみません!
音楽には色々と、そう、権利とか権利とか権利とかがあるんです。

保持(ホジと書いてヤスモチと読む)さんは、
CMでは使用不可能と言われるビートルズの音源を
使うためだけにジョン・レノンの原稿を書いたのだとか。
(いや、それだけじゃないと思いますけど)

私はエリック・サティの曲が好きなので、
この機会にリクエストしちゃおっかなーなんて思って
にやにやしていました。

そして思い出しました。
サティは死後50年経っているから、
音源によっては権利がフリーだ・・・

ディレクターさんが一生懸命MIXしている横で
そんなことを考えながら一人にやけたり、
がっくりしたり、気味の悪い百面相をしていました。

収録って楽しい・・・ (つづく)

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Vision収録見学記 (4)

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熊埜御堂―すすむ収録

石橋涼子さんの華麗なる脱線を軌道修正に参りました、
熊埜御堂由香です。
Visionはレギュラーで原稿を担当するメンバーに、
われわれ薄組のようにたまにお邪魔するゲストメンバーを加えると、
20 人以上のコピーライターが原稿を書いています。

収録は毎回、立ち会うわけではなく、
J-WAVEの方も、この原稿を書いたのはどんなひとなんだろうかと
いろいろな想像をふくらませていたよう。

名刺交換をして、
VieVieさんが、熊埜御堂という珍名にひとしきり驚いたあと、
「そういえば、ほじさんってどんなひとですか?うすいさんは?」
とキラキラしたまなざしでたずねてきました。

ほじに、うすい・・・??
そんな、メンバーにいないはず・・・、
あっ!

「保持(やすもち)に、薄(すすき)ですね。」
こんど、3人で珍名Visionチームを組もうかなぁと思うくらい、
紛らわしい名前!

そんな会話から、和やかな雰囲気に。

ディレクターのCさんが原稿にあう楽曲を
その場で選びMIXしていきます。
フジ子・ヘミングの原稿に当てられた彼女の楽曲を
石橋さんが気に入って、CD名を聞いてメモしていたり、
わいわいと、収録は進んでいきます。

その場でいろんな音源をききながらMIXしていくライブ感が新鮮!
広告の仕事では、納品してから、
OAや掲出までが1ヶ月以上空くこともざらです。
常に作業は前倒し。真夏にクリスマスの原稿を書いたり、
冬にキンキンに冷えたビールの
原稿を書くことも。

現在、土曜の15時。
そういえば、いま収録しているものが
数時間後にはもう放送網に乗っかって
世の中に届けられていくんだなぁと思うと
少し不思議な気持ちになりました。
(つづく)

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Vision収録見学記(3)



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石橋―前置き、またの名を脱線その2

厚焼玉子さんからは
「ヒルズはセキュリティが厳しい!
 トイレに出たら、もう戻れない~!!」
と5回くらいアドバイスされて、いや、脅されていました。

佐藤さんから来客用セキュリティカードをいただいた時は
これでトイレに行ける!!と感動したものです。

しかしトイレの恐怖はセキュリティだけではありません。

六本木ヒルズでは、目的地に着けずにおろおろしている
埼玉(仮)のおばちゃんをよく見かけますが、
オフィスフロアもかなり複雑なラビリンスなのです。
トイレに行ったら、もうJ-WAVEがどこにあるのかわからない。
案内のお姉さんもいないし、案内板もない。
これも一種のセキュリティ・・・!?

というわけで、私がトイレをどうしたかというと、
ガマンしました。はい。
冷えのキビしい冬だったらやばかったです。

またまた脱線してしまいました。
今度こそ・・・

収録は、J-WAVE内のスタジオで
プロデューサーさん、ディレクターさん、ミキサーさん、
そしてナレーターのVieVieさんの4名で進められます。

みなさんで、侃々諤々と意見をぶつけあったり
それぞれの解釈を述べたり、談笑したりしながら
Visionは作られているのです。
ラジオへの愛がだばだばと溢れる現場です。
森でマイナスイオンを浴びるより元気になれます。

われわれもご挨拶をさせて頂いて。
さあ、収録が始まります。

(つづく)

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