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薄景子 19年10月27日放送


銀座のはなし  銀ぶら

明治5年、横浜―新橋間に日本初の鉄道が開通した。
新橋の駅前商店街として、銀座はにぎわいはじめ、
時計や洋服、洋食屋など、西欧からの輸入品や
目新しい商品の店が次々と開店した。

商人たちは、ショーウインドウを店先に作り、
江戸以前の「座売り」といわれた
店の奥から商品をもってくる販売方法をやめ、
履物を履いたまま、気軽に店内を眺められる
新しい買い物スタイルを切り拓いた。

明治後半には、今でいう百貨店が次々に誕生。
ウインドーショッピングや街並みを楽しみながら
銀座をぶらぶら歩くことは、のちに「銀ぶら」と呼ばれるようになった。

そんな100年ちょっと前の銀座を
想像しながらこの街を歩くのも
新しい「銀ぶら」の楽しみ方かもしれない。



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薄景子 19年9月29日放送


月のはなし 月の光

もしも、この世に月がなかったら、
生まれなかった物語はいくつあっただろう。

生まれなかった言葉は、歌は、
生まれなかった恋は、世界にいくつあっただろう。

ドビュッシーの名曲、「月の光」。
幻想的な月夜をイメージするこの曲は
フランスの詩人、ヴォルレーヌの詩「月の光」に
魅了されたドビュッシーが
その詩にあわせて歌曲をつくったのがはじまり。
彼はその曲を恋人、ヴァニエ夫人にささげ、
のちにピアノの音だけで「月の光」を表現したという。

静かで、どこか切なく、心にそっと寄り添うメロディは
月明りの夜、物想いにふけるのにちょうどいい。
ふと、会いたい人の顔が思い浮かんだら、
それは月の光が、あなたの胸を照らした証拠。



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薄景子 19年8月11日放送


太陽のはなし ウィルコックスの言葉

人生には、光もあれば闇もある。
暗闇のさなかにいるときは、
トンネルから永遠に抜けられないのではと
不安に駆られることもある。

そんな時に思い出したいのが
アメリカの詩人、
エラ・ウィーラー・ウィルコックスの言葉だ。

 ひとつひとつの悲しみには意味がある。
 時には、思いもよらない意味がある。
どんな悲しみであろうと、
 それは、このうえなく大切なもの。
太陽がいつも朝を連れてくるように、
 それは確かなことなのですよ。


不確かなことだらけの世の中で
太陽は、何十億年にもわたって、
毎日、裏切ることなく朝を連れてくる。

永遠に約束された光があるから
人は今日も前を向ける。


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薄景子 19年8月11日放送


太陽のはなし 太陽という万能薬

イタリアのことわざに、こんな言葉がある。

 陽が差し込まぬところに医者がくる。

逆を言えば、陽が差すところに医者はこない。
そう。太陽には、人間を健やかに保つ、
計り知れない力がある。

朝の光を浴びれば、体内時計がリセットされ、
眠気は覚め、夜の眠りの質も高められる。

また、太陽光を浴びることで、「幸せホルモン」といわれる
セロトニンの分泌が促され、鬱々とした気分も晴れる。

さらに、日光浴はビタミンDの体内生産を促し、
脳機能の維持、情緒の安定、骨粗しょう症の予防など
さまざまな効果をもたらすという。

太陽はすべての命を輝かせる万能薬。
美白ブームで忘れられがちな
その恩恵に、あらためて感謝したい。


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薄景子 19年6月30日放送


半分のはなし モンゴメリの言葉

今年もあっという間に半分が終わり
気がつけば、夏休みはもうすぐそこ。

旅をするならどこに行くか。
誰に会いに行くか。
そんな計画を立てている時間も
楽しみのひとつ。

「赤毛のアン」の作者、
ルーシー・モード・モンゴメリは
小説の中で、こんな名言を残している。

 何かを楽しみに待つということが、
 そのうれしいことの半分にあたるのよ。

 そのことはほんとうにならないかもしれないけれど、
 でもそれを待つときの楽しさだけはまちがいなく自分のものですもの。


なるほど。
実現できるかはさておいて
今年は最高の夏休みを妄想してみよう。
楽しみを待つ時間を、思いっきり楽しめば
人生は2倍楽しめるのだから。


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薄景子 19年5月26日放送

Sugikats
Beautiful Harmony 二十四節気七十二候

自然を愛しむ国、日本には、
季節の変化を細やかに表現する暦がある。

一年を二十四の季節に分けて表す暦、
二十四節気(にじゅうしせっき)。
そして、それをさらに約5日ごとに分けて
より繊細に季節のうつろいを表現する、
七十二候(しちじゅうにこう)。

春夏秋冬ですら、味わいきれずに
時の流れが加速してゆく現代に
こうした暦は教えてくれる。

自然の微細な変化を感じとる心があれば、
時は美しく穏やかに流れてゆくのだと。

令和は英語でBeautiful Harmony。
美しい自然と調和して生きた先人の感性を
この時代にこそ味わいたい。


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薄景子 19年4月28日放送

Photo by Cody Chan on Unsplash
平成よ、ありがとう。 「平成25年–2013年」

平成は「食」が
エンターテインメントとなった時代。
料理番組がショービズ化し、
SNS映えする食べものが次々とブームになった。

ティラミスからはじまるスイーツブームは、
パンケーキブロガーによってさらに火がつき、
イタリアン、フレンチ、エスニックなど
世界中のあらゆるグルメが、
ハイクオリティで楽しめる国へと進化した。

そんな中、平成25年
「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録される。
自然を敬い、季節の移ろいを繊細に表現する
日本食の技と美味しさに、国内外から賞賛の声が集まった。

世界の美食を追い続けてきた日本が、
和食で世界を彩る時代が、もうはじまっている。

平成よ、ありがとう。
いよいよ、令和へ。


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薄景子 19年3月31日放送

James Z
畑のはなし 豊作の予祝

日本中が桜の花に、
心を浮き立たせる今日この頃。

満開の桜を愛でながら人々が集うお花見には、
古来からある意味がこめられていた。

予習の「予」に「祝う」と書いて、「予祝(よしゅく)」。
お花見は秋の豊作を前もって祝う、
まさに予祝の儀礼だったという。

畑や田んぼに種を蒔いたばかりでも
桜の花を稲の実りに見立て
今年も豊作でよかったと、みなで集って歓び合う。
まるで本当にかなったかのように
心から祝うことで、
願いを現実に引き寄せるのだ。

そんな予祝の意をこめて
今年のお花見は、念願の夢が花開く、
未来の予習をしてはどうだろう。


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薄景子 19年2月24日放送

SeanJCPhoto
雪のはなし 鳴き雪の音

雪の上を歩くときに聞こえる、かわいい踏み音。
まるで雪が鳴いているように聞こえることから
「鳴き雪」というらしい。

その音は、雪の質や、気温や湿度、靴や踏み方によって、
楽器のように変化し、気温が低いほど高音になるという。
キュッキュッ、ギュッギュッ、サクサク、ザクザク。
どの音にも親しみを感じるのは、
鳴き雪の音が、人間の声の周波数に近いからかもしれない。

季節の音に耳を澄ませ、その微細な変化で
新しい季節の訪れを知る。
雪の音、風の音、せせらぎの音。
耳を澄ませば、少しずつ、春は近づいている。


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薄景子 19年1月27日放送

のりりん
お茶のはなし 一期一会

千利休が説いた、「一期一会」。
すべての茶会は、一生に一度の出会い。
そんな心構えで誠意を尽くす、茶道の真髄。

戦国時代、お茶は武将の嗜みだった。
刀をもって入れないように茶室は狭く作られ、
武将は刀を外において、ただお茶を嗜んだ。
戦がはじまれば、もう二度と会えないかもしれない。
そんな覚悟で、お茶に心をこめた。

一期一会は、私たちの毎日にもある。
当たり前のように顔を合わせる人でも
いつかは別れるときがくるのだ。
それに気づくだけで、
今日という日が、愛しく尊いものになる。


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