保持壮太郎 09年4月5日放送

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カート・コバーン



10代でギターを握ったかつての少年たちにとって
ロックか、ロックじゃないかは、
ほとんど唯一と言ってもいい価値基準だった。

たとえば信長はロックだけど
家康はロックじゃない。
リンカーンはロックだけど
ベンツはロックじゃない。
みたいなことを、
本気で語りあったりしていた。



そんな1994年の4月5日。

グランジロックのカリスマ、
カート・コバーンが自ら命を絶った。
ニール・ヤングの歌詞を引用した
短い遺書をのこして。



じわじわ消えていくより、ぱっと燃え尽きたほうがましさ。



あの悲しみが、
ロックだったのか、
ロックじゃなかったのか。

あのころの少年たちは
もう結論を出しただろうか。




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正岡子規



彼のポジションは、
キャッチャーだった。



彼は、
遠く米国からやってきた
そのベースボールという
風変わりなスポーツに
心底熱中していた。



彼は、
そのスポーツを深く愛するあまり
自らの名を、“野球”と書いて
“のぼーる”と称することにした。
のちに“野球”は、
ベースボールをさす日本語となった。



九つの人九つの場をしめてベースボールの始まらんとす



正岡のぼーること、正岡子規。

彼の愛したベースボールが、
ことしも海の向こうで開幕する。





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リチャード・P・ファインマン



悲しみはいつも、ふとしたもので。



ノーベル賞物理学者
リチャード・P・ファインマンは、
若き日に、最愛の妻アーリーンを亡くした。



でも彼は、
わざわざ感傷にひたるなんてことはせずに、

アーリーンは死んだよ。ところで例のプロジェクトはどうなった?

そう言うと、
あとは仕事に没頭していた。



ただ、ある晴れた日に
オークリッジの街を歩いていて、
ショーウインドウの
うつくしいドレスにふと目をとめたとき

ああ、アーリーンの好きそうな服だな。

と思った。



たったそれだけのことだったけれど、
彼の涙をあふれさせるには充分だった。



気づくことは、ときに悲しい。





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ジョン・レノン



事実。
世界はとても不平等で。
そこには、持つものと、
持たざるものがいる。
たくさんのまずしさが、
誰かのたるんだ身体を
支えているなんてことも
さしてめずらしい話ではない。



けれども、
かつてジョン・レノンは言った。
英国王室主催のステージ、
女王陛下の目の前で。



貧乏な人は拍手をしてください、
お金持ちの人は宝石をジャラジャラさてください、
それでは次の曲『Twist And Shout』です。



そのとき、
たしかに世界は平等だった。



衛星のような


アルベルト・アインシュタイン



ものごとの真理を
見つめるという意味において。
物理学者のまなざしは、
ときに、文学者のそれに似ている。



アルベルト・アインシュタイン。

彼は、
相対性理論の “相対性”とはいったい何ですか?
と、たずねられたとき、こう答えた。



熱いストーブの上に
1分間手を乗せてみてください。
まるで1時間くらいに感じられることでしょう。
ところが可愛い女性のとなりに
1時間座っていても、
それは1分くらいにしか感じられない。
それが、相対性というものです。



そんなアインシュタインの妻、エルザは
同じ問いかけに、こう答えている。



相対性?相対性のことは、よくわからないけれど、
アインシュタインのことなら、何でもわかっていますよ。



なるほど、と
みんなが思った。







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長嶋茂雄



科学的で、論理的で、現実的な世の中で
人はいつでも奇跡に飢えている。
おこるはずのないことを期待している。



1958年4月5日 後楽園球場

偉大なる例外が、この日はじまった。



4打席連続空振り三振。
長島茂雄、鮮烈なプロデビュー。





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アンドリュー・ワイルズ



春ともなれば、
教室には、
数学を学ぶハメになった
子供たちのしかめっツラが並び、
そのうちの一人が、
決まって質問をする。



それは、いったい何の役に立つんですか。



かのフェルマーの最終定理が、
ついに証明されたときも
新聞記者の口をついてでたのは
やはりそんな質問だった。



フェルマーの定理は、いったい何の役に立つんですか。



すると、偉業をとげたばかりの
若き数学者アンドリュー・ワイルズは、胸をはって言った。



この定理は、はるか将来にも何の役にも立たないだろう。
でもそれでいい。私の数学が応用の奴隷に成り下がるなんて、
私には耐えられないことだから。



ワイルズらしい、美しく明快な解答だった。




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マイルス・デイビス



純粋なものはつよい。
純粋であることは
とてもとてもむづかしいことだけど。



モダン・ジャズの帝王マイルス・デイビスが、
かつて白人ピアニスト ビル・エヴァンスと組んだとき、
一部のリスナーはこんな批判した。



なんで白人なんかとツルむんだ。失望したぜ。



でも、マイルスの答えはとてもシンプルだった。



イカした演奏をするヤツなら、肌が緑色だって俺は雇うぜ。



そして彼の最高傑作のひとつ、
「カインド・オブ・ブルー」は生まれた。




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