三島邦彦 12年8月26日放送



夏の終わりに  正岡子規

病の床で正岡子規は、
一年前の夏を思い出していた。
フランクリン大統領の自伝を読むことを日課にしていた夏だった。

 去年はこの日課を読んでしまうと、
 夕顔の白い花に風がそよいで
 初めて人心地がつくのであったが、
 今年は夕顔の花がないので暑苦しくて仕方がない。

晩夏の厳しい日射しの中で、
子規の最後の夏が
ゆっくり終わろうとしていた。

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