阿部広太郎 13年8月11日放送



帰りたくなる話 大木金太郎

ジャイアント馬場、アントニオ猪木と並び、
得意技の頭突きでプロレス界を沸かせた大木金太郎。

彼の故郷は、韓国の南に位置する小さな島、居金島(コクムド)。
少年時代は、韓国伝統の相撲「シルム」に明け暮れる日々だった。
27歳の時、同郷の英雄・力道山に憧れた大木は、
島の誰にも告げず日本に渡った。
渡航費はシルム大会の優勝賞品の牛1頭を売って捻出した。

 「お前は韓国人だから頭突きをやれ。それがお前の生きる道だ」

大木は、力道山の言葉を愚直に守る。
首の骨にひびが入っても猛特訓を続けた。
朝鮮半島のケンカ技をヒントに編み出した、
片脚を高く上げて勢いを付ける頭突きスタイルで大活躍。

そして島を飛び出して7年後の1965年。大木はついに韓国へと凱旋する。
外国人レスラーを頭突き一発で倒していく大木は、一躍人気者に。
「パッチギ王」と呼ばれる国民的スターとなるのにそう時間はかからなかった。

プロレス興行を積極支援した当時の大統領、
朴正煕(パクチョンヒ)に望みを聞かれた大木は、
「故郷に電気を入れてほしい」と即答した。

工事はすぐに始まり、島に電気が通った。
夜間、ろうそくの火を頼りに海産物を加工していた
故郷の人たちへのプレゼントだった。

どれだけ大物になっても、故郷はいちばん大切な場所だったのだ。

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