2018 年 11 月 17 日 のアーカイブ

佐藤理人 18年11月17日放送

181117-01

巴里の灯

1926年、チャールズ・リンドバーグは一つの夢を抱いた。

大西洋を飛行機で横断してみせる。
だが当時5800kmも飛べる飛行機はなかった。

彼は地元の実業家たちから資金を獲得。飛行機の製造を始めた。

灯りも窓も捨て、燃料タンクを目一杯積んだ飛行機は、

 スピリット・オブ・セントルイス号

と名付けられた。

1年後、セントルイスの夢をのせた翼は、
ニューヨークからパリに向けて飛び立った。

リンドバーグ、25歳の春だった。

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佐藤理人 18年11月17日放送

181117-02
Joe, Jenn and Corrilyn
巴里の灯

1927年5月20日の夜。
チャールズ・リンドバーグは猛烈な睡魔と戦っていた。

世界初の大西洋単独横断を目指し、
ニューヨークを飛び立ってから12時間。

辺りは暗くて何も見えず、下は嵐で荒れ狂う海。
一瞬でも眠れば命はない。だが疲労は容赦がなかった。

彼は眠気覚ましに海の上スレスレに低空飛行し、
夜明けまでの7時間を乗り切った。

翌日、ついにヨーロッパの海岸が見えた。
驚いたことに予定より2時間半も早く着いていた。

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佐藤理人 18年11月17日放送

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Photo by Josh Wilburne
巴里の灯

1927年5月21日の夜。チャールズ・リンドバーグをのせた
スピリット・オブ・セントルイス号はフランス国境を超えた。

人類初、大西洋単独無着陸飛行。
ニューヨークからパリまで33時間かけた
不眠不休の冒険がようやく終わろうとしている。

眠気は冷め、エンジンも快調。あとは着陸するだけ。
しかし肝心の空港が見つからなかった。

滑走路の灯を探してリンドバーグが見たもの。
それはエッフェル塔と彼の栄誉を称えるために集まった自動車の、
何万ものヘッドライトだった。

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佐藤理人 18年11月17日放送

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巴里の灯

1927年5月21日午後10時21分。

チャールズ・リンドバーグをのせた
スピリット・オブ・セントルイス号が、
パリのル・ブルジェ空港に着陸した。

世界初の大西洋単独無着陸飛行。
ニューヨークからの5,810kmを、
33時間29分30秒かけて飛びきった。

パリの上空で を見たとき、

 翼よ、あれが巴里の灯だ!

と叫んだというのは作り話。実際に発した言葉は、

 英語を話せる人はいませんか?

または

 トイレはどこですか?

だったそうだ。どちらにせよ、
パリ市民の大歓声にかきされてしまったことだろう。

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佐藤理人 18年11月17日放送

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巴里の灯

世界で初めて飛行機で大西洋を横断した、
チャールズ・リンドバーグにはもう一つの世界初があった。
それは人工心臓の開発。

彼には心臓弁膜症に苦しむ姉がいた。

 機械で全身に血液を送ることができないか

アメリカ初のノーベル賞受賞者アレクシス・カレル博士と協力し、
1935年、「カレル・リンドバーグポンプ」の開発に成功。

残念ながらその前年、姉は帰らぬ人になってしまったが、
彼は心臓病に悩む大勢の人の希望に灯をともした。

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