渋谷三紀 19年11月17日放送


hemiolia
あの人の料理帖 森茉莉の“卵”

ウフ・ジュレにオムレット・オ・フィーヌゼルブ。
森茉莉のエッセイに登場する卵料理は、
声に出すと思わず口角が上がる。

卵の殻の表面から、
新雪に白砂糖、さらには上等な西洋紙や
フランスの仮綴じの本までを想像したり、

ゆで卵をつくる様子を、
「銀色の鍋の中に、透明な湯が泡をたてて渦巻いていて、
その中に真白な卵が浮き沈みしている」
なんて歌うように書ける人を、
私は茉莉のほかに知らない。

文字で味わう料理は、幸福と空腹をつれてくる。
食べるということは、
生きる喜びとどこか深いところでつながっているのだ。

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