澁江俊一

田中真輝 20年7月19日放送



幸せトレーニング

幸せとは何か?
人類は常に、それを考え続けてきた。

最近の研究によると「オキシトシン」という
生理物質が脳内に分泌されると、人は
幸福感を感じるらしい。

このオキシトシンは「抱擁ホルモン」とも呼ばれ、
人と触れ合うことで分泌が促される。

ソーシャルディスタンスが求められ、
なかなか抱擁は難しいご時世だが、
直接接触しなくても、見つめあったり、言葉を
交わすことでも分泌されるらしい。

会えないときこそ、慕情は募るもの。
ソーシャルディスタンスな今こそ、人との共感力を鍛え、
オキシトシンの出やすい体を作る
チャンスかもしれない。

topへ

澁江俊一 20年7月19日放送


Teemu Eskola
厳しさと幸福

幸せとは何か?
人類は常に、それを考え続けてきた。

幸福度ランキングで
3年連続世界1位のフィンランドは、
一年の半分近くを太陽が昇らない寒い冬が占めている。
厳しさこそが幸福の母なのか。

「けれどもほんとうのさいわいは一体何だろう」ジョバンニが云いました。

「僕わからない」カムパネルラがぼんやり云いました。
銀河鉄道の夜では、幸せの答えは無数の星の中に消えていく。

世界を取り巻く厳しい状況は、
私たちがそこから幸せを生み出せるかどうかを
試しているのかもしれない。
答えはない。けれど、ほんとうの幸せはきっとある。
たぶん意外とすぐそばに。

topへ

澁江俊一 20年7月19日放送



お金以上の幸せとは

幸せとは何か?
人類は常に、それを考え続けてきた。

聴く人を幸せな気持ちで包み込む
古典落語の傑作「文七元結(ぶんしちもっとい)」。

娘が父を思い
身売りを覚悟して用立てた五十両もの大金を、
店の売上げ金をなくしてしまい
橋の上から身を投げようとする奉公人の文七に出会って
つい、あげてしまう江戸っ子の人情を描いた
笑いと涙の物語である。

見ず知らずの若者に
かけがえのない娘がつくった五十両をあげてしまう。
常識では「ありえない!」父親の行為が
最後に予想もつかない幸せを連れてくる。

お金は大切。
でもお金以上の幸せも必ずある。
そう信じたい人間の気持ちが、
この噺を、時代を超える傑作にした。

topへ

澁江俊一 20年7月19日放送



おじいさんの馬

幸せとは何か?
人類は常に、それを考え続けてきた。

中国に人生万事塞翁が馬
という故事がある。

塞翁とはお城の近くの
おじいさんという意味だ。
おじいさんの馬が逃げ出して
周りの人が気の毒がるが
おじいさんは気に留めない。
やがてその馬は立派な馬を連れてきた。

しかし今度はその馬から
落ちた息子が足の骨を折ってしまう。
それでもおじいさんは意に介さない。
おかげで戦争に取られることなく
おじいさんと息子は長生きして幸せに暮らす。

幸せとは人生の最後に
ようやくわかる…
そんなものなのかもしれない。

topへ

奥村広乃 20年6月21日放送



コロリ

人類は遥か昔から
疫病と向き合ってきた。

1858年。
日米修好通商条約が結ばれた頃、コレラが大流行した。
江戸の死者数は約10万人とも、
30万人に上ったとも記録されている。

かかると3日でコロリと亡くなることから、
人々はコレラをコロリと呼んで恐れた。
錦絵には、虎、狼、狸の混ざった、
奇怪な姿をした妖怪としてコロリは描かれた。

目に見えない病。
イメージしやすい名前や絵をつけることで
正体のわからない怖さを皆で共有し、
乗り越えようとしたのだろう。

顕微鏡を覗けば菌やウイルスが見える現代。
あえて、病を妖怪として描いてみたら
どんな姿をしているのだろうか。

topへ

奥村広乃 20年6月21日放送



鍾馗

人類は遥か昔から
疫病と向き合ってきた。

無病息災を祈る神楽がある。
鍾馗(しょうき)という神が、
疫病をもたらす鬼を退治するストーリーだ。

長い髭、勇猛さを物語る凛々しい眉毛、
そして力強い大きな瞳。
右手に剣、
左手には「茅の輪」(ちのわ)という
ふさのついた大きな輪を持ち、
問答を繰り返しながら
疫病神と激しい戦いを繰り広げる。

テンポの速い太鼓囃子や、
金の糸をふんだんに使った
豪華絢爛な衣装も見どころのひとつだ。

神楽の歴史は古く、
日本神話の時代まで遡るという。
それが今はオンラインでもみられるようになった。
無病息災、健康への願いは
時代や場所を超えるのだ。

topへ

澁江俊一 20年6月21日放送


Norio NAKAYAMA
疫病が残した地名

人類は遥か昔から
疫病と向き合ってきた。

京都に百万遍と呼ばれる一角がある。
京都大学があることで知られ、
多くの人に馴染みの深い地名である。

百万遍。
この不思議な響きの名前は
疫病に苦しむ人々の祈りから
生まれている。

およそ700年前、
京都を襲った大地震と天然痘。
知恩寺の上人が100万回の念仏を
唱え続けると疫病はおさまったという。
1秒にひとつ眠らずに唱え続けても
百万遍には11日以上かかる
途方もない数字だ。

百万遍のように
疫病がきっかけで生まれた
地名や風習は日本中にいくつもある。
コロナと向き合う私たちは
未来に何を残せるだろう。

topへ

澁江俊一 20年6月21日放送



病VS人類

人類は遥か昔から
疫病と向き合ってきた。

その中で地球上から
人類の力で撲滅できた病気が
いくつあるかご存じだろうか?

正解は、たったひとつ。
天然痘だけなのだ。

日本にも仏教伝来の頃にやってきて、
なんども繰り返し大流行した天然痘。
その起源はわからず
人類は何千年も戦い続けてきた。

それほどまでに人類VS病の
戦いに勝つことは、極めて難しい。
負けないように、心が折れないように、
向き合い続けることが
肝心なのだろう。

topへ

松岡康 20年6月21日放送



赤い浮世絵

人類は遥か昔から
疫病と向き合ってきた。

色鮮やかに刷られているものが多い浮世絵の世界。
その中に、赤一色で刷られた「「疱瘡(ほうそう)絵」というジャンルがある。

天然痘が何度も流行った江戸時代に
厄除けのまじないとして描かれた。

天然痘を持ってくる鬼は赤を嫌うため、
病気になった子供たちはこの疱瘡絵を枕元に置いて天然痘と戦っていたという。

赤の濃淡だけで構成されたその絵は、
激しく力強い不思議な魅力にあふれている。

疫病と戦うなかで人類が生み出したものは多い。

いま、コロナと戦う私たちは、
どんな新しいものを生み出すことができるだろう。

topへ

松岡康 20年6月21日放送


Gustavo Jeronimo
交通と疫病

人類は遥か昔から
疫病と向き合ってきた。

疫病と人類の歴史を語るうえで欠かせないのが、
『交通』の進歩だ。

本来疫病は単なる風土病であったが、
交通の開発によって人類の大きな脅威となった。

「シルクロード」では人、もの、文化を東西で交流させたが、
同時に多くの細菌やウイルスも一緒に移っていった。

交易で栄えたはずの漢と、古代ローマが衰退した一因は
疫病の交流でもあった。

コロンブスの新大陸発見でも、
ヨーロッパから持ち込まれた天然痘などで多くの先住民が亡くなり、
反対に新大陸からは梅毒が伝わり、
またたく間に欧州全土に広がった。

交通と交流の歴史は、同時に疫病の歴史でもあるのだ。

いま、私たちはオンラインで世界中と繋がり、
交流することができる。

人類と疫病の関係は今、大きく変わろうとしているのかもしれない。

topへ


login