‘松岡康’ タグのついている投稿

松岡康 20年8月16日放送


Primho
吊るされた棺桶

今日は、送り盆。

世界には珍しい死者の送り方がある。

標高1,500m以上の深い山間に位置するフィリピンの村「サガダ」。

崖に囲まれたこの村に足を踏み入れると、
異様な景色が目に入って来る。

崖の上の方に、棺桶がいくつも吊るされているのだ。

これはハングングコフィンという埋葬方法。

死者の魂が天に近くなるからという理由で、
崖の高い場所に遺体を吊るすのだ。

一見奇妙にも思える死者の送り方。
そこにも日本と変わらない死者への想いがある。

topへ

松岡康 20年8月16日放送


Derek Bridges
ジャズなお葬式

今日は、送り盆。

世界には珍しい死者の送り方がある。

ジャズが生まれた地として有名な、ルイジアナ州ニューオリンズ。

ここニューオーリンズではお葬式にもジャズが根付いている。

棺を墓地まで運ぶ道中、
ブラスバンドの演奏する明るいジャズにあわせて、
参列者もいっしょにお祭り騒ぎをする。
ときには棺をお神輿のように揺さぶったり。

長い間、奴隷として搾取され、虐げられてきた黒人たち。
彼らにとって「死」は奴隷からの解放を意味し、
亡くなった人が天国へいくことを祝福しているのだという。

人は誰もが、肌の色も違えば、考え方も歴史も違う。
でもそれだから面白い。
色んな人がいる様に、お葬式も色んなやり方でやる時代が来るのだろう。

topへ

松岡康 20年6月21日放送



赤い浮世絵

人類は遥か昔から
疫病と向き合ってきた。

色鮮やかに刷られているものが多い浮世絵の世界。
その中に、赤一色で刷られた「「疱瘡(ほうそう)絵」というジャンルがある。

天然痘が何度も流行った江戸時代に
厄除けのまじないとして描かれた。

天然痘を持ってくる鬼は赤を嫌うため、
病気になった子供たちはこの疱瘡絵を枕元に置いて天然痘と戦っていたという。

赤の濃淡だけで構成されたその絵は、
激しく力強い不思議な魅力にあふれている。

疫病と戦うなかで人類が生み出したものは多い。

いま、コロナと戦う私たちは、
どんな新しいものを生み出すことができるだろう。

topへ

松岡康 20年6月21日放送


Gustavo Jeronimo
交通と疫病

人類は遥か昔から
疫病と向き合ってきた。

疫病と人類の歴史を語るうえで欠かせないのが、
『交通』の進歩だ。

本来疫病は単なる風土病であったが、
交通の開発によって人類の大きな脅威となった。

「シルクロード」では人、もの、文化を東西で交流させたが、
同時に多くの細菌やウイルスも一緒に移っていった。

交易で栄えたはずの漢と、古代ローマが衰退した一因は
疫病の交流でもあった。

コロンブスの新大陸発見でも、
ヨーロッパから持ち込まれた天然痘などで多くの先住民が亡くなり、
反対に新大陸からは梅毒が伝わり、
またたく間に欧州全土に広がった。

交通と交流の歴史は、同時に疫病の歴史でもあるのだ。

いま、私たちはオンラインで世界中と繋がり、
交流することができる。

人類と疫病の関係は今、大きく変わろうとしているのかもしれない。

topへ

松岡康 20年4月19日放送


sogni_hal
しゃっくりとヒトの祖先

今日はダーウィンの命日。
進化について考えたくなる日。

何故人がしゃっくりをするのか、
未だにはっきりとした理由は分かっていない。

そんなしゃっくりこそが、
人類の祖先を解くカギであるとする説がある。

オタマジャクシは、肺とエラの両方を使って呼吸を行う。
水が肺に入らないように、呼吸管を閉じ、鋭く水を吸い入れる。
いわば常にしゃっくりを起こしている状態だ。

しゃっくりをする。
この共通点が、ヒトの祖先が両生類であることを裏付けているという。

ヒック!となった時はオタマジャクシを思い出してみよう。
人類が歩んで来た歴史をその身体で感じることができるだろう。

topへ

松岡康 20年4月19日放送


NASA
適応と進化

今日はダーウィンの命日。
進化について考えたくなる日。

外出できなくて、ふだんの生活も驚くほどに変化している今、
ダーウィンの遺した言葉が身に染みる。

 生き残る種とは、
 最も強いものではない。
 最も知的なものでもない。
 それは、変化に最もよく
 適応したものである。

今の状況に慣れて、適応する。
人類にとって、今の状況こそが進化のチャンスかもしれない。

topへ

松岡康 20年2月15日放送


HAMACHI!
良い菌? 悪い菌?

日本の家庭に根付いた発酵食品といえば糠漬けだろう。
糠床の中にいる乳酸菌を中心とした微生物の働きによって、
美味しい糠漬けが出来上がる。

だがこの糠漬け、
そもそも何の菌で発酵しているのかよくわかっていない。

乳酸菌と並んでぬか漬け独特の風味をつくっている微生物として、
カンジダ種の酵母の働きが報告されている。

このカンジダ種の酵母は、時に感染症の原因になる。
しかし一方で、おいしい糠漬けが食べられるのは、
彼らの働きが欠かせないのだ。

菌の世界には、いいヤツ、悪いヤツなんていない。
どの菌にも役割があって、意外なところで意外な働きをしたりする。

私たち人間が糠床から学ぶことは多そうだ。

topへ

松岡康 20年2月15日放送


Norio.NAKAYAMA
微生物に感謝

酒、醤油、漬物。
日本は微生物による発酵とうまく付き合ってきた国だ。

微生物が私たちにもたらしてくれた恩恵はおおきい。

発酵食品はもとより、医薬品、環境分野など、
現代においてもなくてはならない大切な仲間である。

そんな微生物たちを供養する場所がある。
京都曼殊院にある、その名も「菌塚」。

微生物からすれば、人の手で勝手に増やされ、
最後は死んでいく運命。
そんな微生物に感謝と供養をする場所が菌塚なのである。

微生物のことを知り、感謝をしながらうまく付き合っていく。
日本古来からあったこの考え方は、
現代においても忘れてはならないことなのだ。

topへ

松岡康 19年12月15日放送


Kossy@FINEDAYS
お籠りと鍋

冬といえば、あたたかい鍋。

東北地方で有名な芋煮会。
河川敷に集まり皆で鍋を囲みつつき合う
心も体も温まる風習だ。

実は芋煮会、
ルーツは東北から遠く離れた愛媛県大洲市にあるという。

300 年以上前の江戸時代、
大洲市では「お籠り」という集会が定期的に行われていた。

各農家が里芋を持ち寄り、
鮎からとった出汁で炊いた鍋を食べる。

人々は籠る様にして一つの鍋を囲みながら、
稲の不作などを話しあい、
親睦を深めたという。

寒い夜に、ひとつの鍋をみんなで囲む。
鍋は、ずっと昔から変わらず、
人と人とをつなぐ、魔法の料理なのかもしれない。

topへ

松岡康 19年12月15日放送


alluréd
諭吉の食い意地

冬といえば、あたたかい鍋。

鍋の代表格であるすき焼きが広まる後押しをしたのは、
福沢諭吉だったといわれている。

そもそも肉が公に食べられるようになってきたのは、
江戸時代末期のこと。
明治初期になると、肉食は国を上げて推進されるようになる。

この文化をより一層広めたのが、
若い頃から食欲旺盛で食に対する好奇心は人一倍強かった、
福沢諭吉だった。

そのエネルギーは尋常ではなく、
肉食の良さをアピールする本『肉食之説』を発刊するほどだった。

今や世界に誇れるものとなった和牛。

肉食の歴史が浅いにも関わらず、
世界に誇れる食文化を生み出すことができるのは、
諭吉の様な先人たちの「食い意地」のおかげなのかもしれない。

topへ


login