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蛭田瑞穂 19年3月10日放送


吉村昭と東京大空襲

作家吉村昭は昭和2年荒川区東日暮里に生まれた。
18歳で終戦を迎えた吉村は
青春時代を東京という街で戦争とともに生きた。

太平洋戦争の末期、度重なる空襲にさらされるうちに
吉村の胸には奇妙な願いがきざした。
それは一日も早く家が空襲で焼けて欲しいというものだった。

東京から逃げ出し、他の地へ移りたい。
そのためには、家が焼ける以外方法がなかった。

青年の心に生まれた倒錯した感情が戦争の悲痛さを物語る。
今日3月10日は、74年前に東京大空襲があった日。


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蛭田瑞穂 19年3月10日放送


山田風太郎と東京大空襲

小説『南総里見八犬伝』の作者として知られる山田風太郎。
医学部の学生だった山田は昭和20年1月1日から12月31日までを日記に綴り、
のちにそれを『戦中派不戦日記』として発表した。

3月10日の空襲のあと、山田は荒涼たる東京の景色を目にする。
そして、こう綴る。

 鳥も鳴かない。青い草も見えない。
 ただ、舗道のそばに掘り返された防空壕の土に、砂塵がかろく立ち迷い、
 冷たい早春の光が虚無的な白さで満ちているばかりである。


今日3月10日は、74年前に東京大空襲があった日。


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蛭田瑞穂 19年2月17日放送


スープ オニオンスープ

ニューヨークの55丁目に、
「LA BONNE SOUPE」というフレンチビストロがある。

看板メニューは「オニオンスープ」。
焦げ目のついたグリュイエールチーズがカップをフタのように覆う。
スプーンで割って、スープをすくうと、
タマネギとフレンチバゲット、トロトロに溶けたチーズが糸を引く。
少し冷まして口に運ぶと、濃厚でコクのあるスープがたまらなくおいしい。

「LA BONNE SOUPE」とはフランス語で「おいしいスープ」。
そして「良い人生」という意味もあるという。

おいしいスープのある人生はたしかに、良い人生に違いない。


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蛭田瑞穂 19年2月17日放送


スープ ボーン・ブロス

ニューヨーク、イーストビレッジの一角に「brodo(ブロド)」という
テイクアウト専門の小さなスープスタンドがある。

この店のスープはすべてボーン・ブロスと呼ばれる骨の出し汁。
鶏ガラや牛骨からとられたスープは
さらりとして飲みやすく、お腹にも重くない。
それが紙のコーヒーカップで提供される。

この2月にマイナス16度を記録したニューヨーク。
街を歩きながら飲むスープが冬のニューヨークを少しだけ暖かくしてくれる。


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蛭田瑞穂 19年1月13日放送

190113-03 HAMACHI!
酒の肴 乙な味

「乙な味」という表現は、日本の伝統的な和楽に由来するといわれる。

和楽では高い音域の音を「甲」と書いて「かん」と呼び、
低い音域の音を「乙」と呼んだ。

一段低くしんみりとした乙の音。
そこから趣のある状態を「乙な」と表現するようになったという。

乙な味と聞いて思い浮かべるのは、カラスミやくさやなどの酒の肴。
珍味ともいわれ、好みが分かれるが、
酒飲みにとってはたまらなく「乙」なのだろう。


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蛭田瑞穂 19年1月13日放送

190113-04 The Travelling Bum
酒の肴 タパス

酒をメインにさまざまな種類の小料理を提供する日本の居酒屋。
居酒屋のような業態の飲食店は世界的に見ても珍しいと言われる。

唯一の例外ともいえるのがスペインのBAR(バル)。
バルではワインを片手に、タパスと呼ばれる小皿料理をつまむ。

アンチョビのオリーブオイル漬け、イベリコ豚の生ハム、
エビのフリッター、チョリソのワイン煮込み、スパニッシュオムレツ。

洋の東西を問わず、酒のうまさを知る人は料理のうまさも知っている。


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蛭田瑞穂 18年12月16日放送

181216-01 oschene
一枚の、楽譜

ヨハン・セバスチャン・バッハ晩年の楽曲集「音楽の捧げもの」に
「蟹のカノン」と呼ばれる作品がある。

正式な曲名は「2声の逆行カノン」だが、
その独特なコード進行が横歩きの蟹を思わせるため、
「蟹のカノン」と呼ばれるようになった。

「蟹のカノン」の楽譜は音符が回文のように並んでいる。
そのため、前後どちらから演奏しても楽曲が成り立ち、
ふたりの奏者が同時に前後から演奏すると素晴らしいハーモニーが生まれる。
さらに、最初と最後の音がつながるため、曲は無限にループする。

一枚の楽譜の中にバッハは無限の創造性を生み出す。


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蛭田瑞穂 18年12月16日放送

181216-02
一枚の、暗号文

1822年、ヴァージニア州リンチバーグのホテルのオーナー、
ロバート・モリスはトーマス・ジェファーソン・ビールという人物から
3枚の暗号文を託された。

モリスは解読を試みたが叶わず、亡くなる直前に友人に託すと、
友人は2枚目の暗号文の解読に成功した。

そこには約73億円に相当する財宝を
ヴァージニア州ベッドフォードのとある場所に埋めた、とだけ記されていた。

残りの暗号を解読できなかった彼は
全文を世間に公表したが、今に至るまで解読できた者はいない。

この暗号は「ビール暗号」と呼ばれ、
史上最大級の暗号ミステリーと言われている。


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蛭田瑞穂 18年11月18日放送

181118-05
AIと創造

カルフォルニア大学サンタクルーズ校で
音楽学を教えるデイヴィッド・コープは
協奏曲や合唱曲、交響曲、オペラを作曲する
コンピュータプログラムを書いた。

「音楽的知能における実験」、
通称EMIと名づけられたこのプログラムは
書き上げるまでに7年の歳月を要したが、
完成するとたった1日で
ヨハン・セバスティアン・バッハ風の合唱曲を5000曲も作曲した。

コープはその中から選りすぐりの数曲を音楽フェスで実演すると、
コンピュータが作曲したとは知らない観客は絶賛した。

その後EMIは進歩を重ね、ベートーヴェン、ショパン、
ラフマニノフ、ストラヴィンスキーを完璧に真似ることも学習した。


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蛭田瑞穂 18年11月18日放送

181118-06 Ars Electronica
AIと芸術

カルフォルニア大学サンタクルーズ校の教授
デイヴィッド・コープは
EMIと呼ばれるクラシック音楽の自動作曲AIを成功させると
次に「アニー」というさらに高度なAIをつくった。

機械学習によって作曲するアニーは
新しい入力に応じて作風を変えるため、
どんな曲をつくるかコープ本人にも想像がつかない。

アニーの才能は作曲にとどまらず、俳句などの他の芸術も行う。
コープは2011年に『灼熱の夜が訪れる-機械と人間による二千句』
という詩集を刊行した。

そのうちの一部はアニーが詠んだものだが、
どれがアニーの句かは明かされていないため、
判別は非常に難しいという。


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