五島のはなし(59)

口が五島を離れたのは18歳のとき、
大学に進学するためでした。
飛行機に乗って五島の空港を飛び立つと
飛行機はぐるっと島をめぐるように上昇し、
「なにこれパイロットが口を泣かせようとしてる?」と思うほど
島の姿をじっくり見せつける(そんな風に感じられた)ので
口は思わずぼろぼろと涙を流したのでした。

あ、ちなみに「口」が読みにくいでしょうが、
これ、今日から「私」の代わりに使うことになった一人称です。
「ハコ」という読み方をします。
以前、口のコピーライターの師匠であるKさんが
転勤の挨拶のときに

「自分というものはからっぽの箱みたいなもので、
 その箱に知り合った人たちや出来事が
 どんどん入って、それが自分をつくってるんだと思います」

ということを言っていて、
いいこと言うなあ、ほんとそうだよなあ、と思ったことを思い出し、
それで、「私」も「僕」も「俺」もしっくりこない口は、
口を口の一人称として使っていこうと(さっき)決めました。
(五島のはなし58参照)

口はいま36歳なので
口の半分のスペースが
島以外の年月と人と出来事で埋められたとも言えます。
この月日の境目って言うのはちょっと感傷的になるなあと
思って今日のはなしを書きだしてみましたが
実際はそんなに感傷的気分もわいてこず、
いまはただ、
この「口」という一人称がやっぱ使いにくいなあ、
という気持ちでいっぱいです。

これ五島の写真ですけど、五島のイメージとしてこの写真がふさわしいかは疑問。

これ五島の写真ですけど、五島のイメージとしてこの写真がふさわしいかは疑問。

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コメント / トラックバック 7 件

  1. saito より:

    雄大な写真!

    師匠のKさんのお言葉、
    私の尊敬する伊丹十三さんも「女たちよ!」で言ってました。

    口を採用するか迷い中。。

  2. 3号 より:

    私が同じく五島を離れるとき、祖母は私にこう言いました。
    「財布には必ず紐を付けて、必ず首からかけておきなさい」と。なぜ?と聞いたら、
    「都会には悪い人が沢山」

    島を離れ20数年、都会の人も皆いい人ばかりです。
    今後帰ったら祖母の墓前で必ず言おうと思う。(言い忘れてたから、きっと、ずっと心配してるから)

    ふと思い出したので。

    因みに、私が五島を離れちょっとした頃、公衆電話に百円玉沢山入れて田舎に電話したら、5つ離れた弟が電話の向こうから、
    「ベンツ見た?」
    「そこらじゅうに走ってる」と言うと
    「すげぇー!」と感動してた。

    これもまた、ふと思い出したので。
    さて、今週も頑張ろう。

  3. 中村直史 より:

    ええ話や!
    でも悪い人に出会わないのは
    ばあちゃんがそうしてくれてるのかもよ。

    ベンツの弟さんは、なんて純粋無垢なんやろう。
    さぞ素敵な弟さんなんやろうね。

  4. 2号(しょうこ) より:

    この写真どう見ても・・・クロを釣り終えてホクホク顔で瀬を後にする、船上からのショットやろ・・・。あの80センチの大物?を釣った大瀬崎!

  5. 厚焼玉子 より:

    何度読んでも口は「くち」と読んでしまう。

  6. 中村直史 より:

    >2号さま
    さすが、釣り師を父に持つだけあります。
    よくわかるなあ、ほんとに全くその通りです!
    大瀬崎方面からの帰路途中に撮った大宝の磯です。

    >玉子様
    そーなんですよねー、実際くちってタイプしてるから
    くちなんですよねー、それ以外にタイプする
    方法が見つからずにこのような結果に・・・

  7. 凸凹 より:

    凹凸凸凹

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