2012 年 2 月 26 日 のアーカイブ

名雪祐平 12年2月26日放送

Aidan Jones
笑って 1.山田洋次/車寅次郎

映画『男はつらいよ』第32作。
車寅次郎が、
医者とのやりとりを話すシーンがおかしい。

医者から、こう言われたという。
きみぃ、レントゲン撮る時は、笑う必要ない。

すると寅さん。

 いやだけどね、レントゲンだって、
 にっこり笑って写したほうがいいと思うの。
 だって明るく撮れるもの、そのほうが。

山田洋次監督が差し込む
何でもないようなエピソードが、
人情の機微にふれてくる。

フーテンの哲学者のような、寅さん。
いま、この世の中に、
あなたの言葉がほしいです。






笑って 2.アラン

 幸福だから笑うわけではない。
 笑うから幸福なのだ。

フランスの哲学者アランは『幸福論』で訴える。

 悲観主義は気分。
 楽観主義は意思。

悲観するのは簡単だ。
人間はともすれば、悲観に暮れてしまう。
そこを意志と勇気をもち、
楽観してみよう、と励ます。

それでもまだ
くよくよしたり、不安な人への
アドバイスも忘れない。

 過去と未来とは、
 それを考えるときしか存在しない。

たしかに。
さらに、それでもまだ、の人は
『幸福論』に何か書いてあるでしょう。




笑って 3.西原理恵子

彼女は、生い立ちに負けていた。

家族の不幸。自らの高校退学。
上京してからの
光熱費も払えない貧困。
漫画家デビューしても、
ギャンブル依存症となり、
すさんだどん底生活を送っていた
西原理恵子。

しかし、やがて夫となるカメラマン
鴨志田穣にアジアの紛争地帯に連れて行かれ、
想像を絶する貧困の世界を目にする。

西原が目のあたりにしたのは、
這うようなどん底生活でも
底抜けに陽気な人々の笑顔だった。

 どん底でこそ笑え。

たとえ生い立ちが不遇であっても、
何事も笑い飛ばしてしまえ。
この気づきが西原の人生の
大切な転機となった。

漫画の中で、伝えたいことを
うまく笑いに包むようにしていった。
それから西原は『毎日かあさん』など
いくつもシリーズをもつ
人気漫画家になっていった。




笑って 4.キース・リチャーズ

ローリング・ストーンズのギタリスト
キース・リチャーズ。

超一流のテクニックで、
数々の名演を残してきた。

スーパースターにのしあがった彼に、ある時、
どうしたら、あんた達みたいになれるかな。
と質問が飛んだ。

キースは、さらっと答えた。

 いっぺん、食えなくなってみな。

ハングリーさが成功への道という、
なんというシンプルな考え。
なんという笑えるほどの楽観。

しかし、まぎれもなく真実。




笑って 5.ジョージ・エリオット

19世紀英国を代表する女性作家
ジョージ・エリオット。

なぜ、ジョージという男性名で
デビューしたのか。

当時の英国の事情があり、
女性が本を出すことは難しい時代だったのだ。
そして、彼女の恋人には妻子がいたりと、
彼女自身も微妙な社会的立場にいた。

しかし、恋人の批評家
ジョージ・ヘンリー・ルイスへの敬意を込め、
「ジョージ」をペンネームにしたということである。

自分の立場とは裏腹に、
作風は徹底的に道徳的存在として
追求するものであった。
その作品群が次々と評価され、
彼女たちの関係も容認されていった。

彼女のこんな言葉が残っている。

 微笑めば友達ができる。
 しかめっ面をすればしわができる。

そう気を配りながら生きた
女のジョージと
男のジョージがいた。




笑って 6.赤木健介

青森県出身の歌人であり、詩人。
赤木健介

戦前には左翼運動に飛び込み、
投獄された経験もある。

世相も、自分の身も
不安であるはずの1942年の短歌集
『意慾』のなかの1つの歌が明るい。

 生きること、吹きつける雨に濡れること、
 みんな愉しい、生きてゆきたい。

まさに意欲である。希望である。
人間賛歌である。

この歌から、
明日を信じ、楽天的に生きることの
力強さが伝わってくるのだ。



Coal Miki
笑って 7.綾小路きみまろ

人気漫談家・綾小路きみまろが、
毒舌をつぎつぎ放つ。
ぐさぐさ、中高年の観客の胸に刺さる。

傷つくようなジョークなのに、
ファンは泣くほど笑いこける。

なんだか空気が温かいのは、
おたがいがいままでの苦労を分かちあえる、
そんな信頼関係があってこそ、
なのもしれない。

こんなフレーズも平気である。

 クヨクヨすることはないのです。
 人間の死亡率は100パーセントです。

泣いても笑っても、いつか死ぬのなら
笑って生きたいですね、
という希望をおみやげに
観客はいつもの家に帰っていく。




笑って 8.シャンフォール


16世紀から18世紀のフランスに、
モラリストと称される文学者がいた。

人間性や道徳を追求し、
言葉のフレーズに書き記した人たちのこと。

その一人、シャンフォールの言葉がある。

 毎日の中で、
 いちばんもったいないのは、
 笑わなかった日である。

今日という日も、
つまり、人生の一部であり、
笑えずに過ごしてしまったことは
人生の浪費ということでしょうか。

さて、シャンフォールから
質問が届いています。

今日は、
笑った日でしたか?

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