2013 年 2 月 16 日 のアーカイブ

佐藤理人 13年2月16日放送

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ミカ・ハッキネン①「運転免許」

 フィンランド人を雇えば勝てる

モータースポーツ界にはそんな格言がある。

彼らの運転技術が優れている理由。
それは免許に真剣に取り組む姿勢にある。

濡れた路面や夜間の走行も含め、
免許取得にはなんと3年もかかるのだ。

F1王者に2度輝くフィンランド人レーサー、
ミカ・ハッキネン。

 コーナーは考えながら攻めるのか?

そう聞かれた彼は笑って答えた。

 僕らは子供の頃から走ってるから
 自然と身に付いているのさ。


 イギリス人が25歳になって
 クリケットを習いはじめても、
 真髄を習得するには遅すぎるだろ?



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佐藤理人 13年2月16日放送

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ミカ・ハッキネン②「シス」

フィンランドはSで始まる4つの言葉で有名だ。

サウナ、シベリウス、サンタクロース。
そしてシス(Sisu)。

 フィンランド魂

を意味するこの言葉を訳するのはとても難しい。
英語の「ファイティングスピリット」に近いが、
本来の意味はもう少し複雑だ。

厳寒の長い冬を乗り切るたくましさと、
数百年に及ぶ他国の支配を耐え抜いたしたたかさ。
それは過酷な歴史の中で、
埋み火のように燃え続けてきた不屈の執念だ。

かの国が生んだ最高のレーサー、
ミカ・ハッキネンは言う。

 フィンランドは冬が長い。
 でも解っているんだ。
 太陽は必ず輝く、とね。


どんな劣勢でも
勝負を絶対にあきらめなかったハッキネンは、
あのF1最速の皇帝、

 ミハエル・シューマッハが最も恐れた男

として知られている。


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佐藤理人 13年2月16日放送

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ミカ・ハッキネン③「カート」

初レースの記憶は、父親の心配そうな顔だった。

フィンランド最高のF1レーサー、
ミカ・ハッキネン。

彼がジュニアレースを始めたのは6歳のとき。

  成績が下がったらレースは禁止

そう言われたミカは大嫌いな勉強を頑張った。
両親はそんな彼を力一杯支えた。

毎週末レース場に付添い、
仕事の他にバイトをいくつもかけもちして
レース費用をねん出した。

彼が速くなるにつれて、
家族はやがてチームになった。
家計は苦しかったけれど、幸せだった。

レースはハッキネン家に、
家族が一つになれる
かけがえのない時間をくれた。


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佐藤理人 13年2月16日放送


ミカ・ハッキネン④「Mr.クリーン」

 アイルトン・セナの再来

F1王者は数いれど、
そこまで言われた男は一人しかいない。
フィンランドが誇る最高のレーサー、
ミカ・ハッキネン。

「カミソリの切れ味」と呼ばれた
コーナリングテクニックで彼は、

 悪魔のように速い

と恐れられた。

あまりに速すぎて、
これ以上速く走ることは物理的に不可能と
コンピュータがはじき出したタイムを
上回ったことがあるほどだ。

しかしそれ以上に
彼のトレードマークとなったのは、
そのクリーンなレーススタイルだった。

他のドライバーに
危険なことや意地悪をしたことなど一度もない。

シューマッハをはじめ、ライバルたちはみな、
彼ほどフェアなレーサーはいないと断言する。

ブロックするのではなく、抜き返す。
誰かにではなく、自分に勝つ。

それが常にハッキネンのスタイルだった。


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佐藤理人 13年2月16日放送


ミカ・ハッキネン⑤「最悪のクラッシュ」

どんな天才レーサーも事故と無縁ではない。

フィンランド最速の男ミカ・ハッキネン。

1995年のオーストラリアグランプリで
コンクリートの壁に激突したハッキネンは、
舌を噛み切る意識不明の重傷を負う。

 正面からぶつからなければ、
 恐怖を克服することはできない。


病院のベッドでそう悟った彼は、
翌年の復帰戦を同じサーキットで迎える。

世界が注目する中、
クラッシュしたコーナーを難なくクリアし、
5位という好成績でゴール。

スタッフに拍手で迎えられた彼は、

 5位で騒ぐな!

と悔しがった。

不幸を糧にできるのもまた、天才の所以。


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佐藤理人 13年2月16日放送


ミカ・ハッキネン⑥「最高のオーバーテイク」

2000年F1ベルギーグランプリ。

周回遅れで走っていたリカルド・ゾンタの後ろに
突如2台のマシンが現れた。

トップを争うミハエル・シューマッハと
ミカ・ハッキネンだ。

シューマッハのために左を開けたゾンタを、
右から強引に抜こうとするハッキネン。
しかし右の路面は前夜の雨でびしょ濡れだった。

スピンする!

ハッキネンは迷わずアクセルを踏みこんだ。
時速330km。
世界初の追い越し速度で二人を抜き去り、
彼は見事優勝を飾る。

 20世紀最高

と絶賛されたこのオーバーテイク。
味わった張本人のゾンタは、

 狂ってる!

と思わず叫んだという。


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佐藤理人 13年2月16日放送

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ミカ・ハッキネン⑦「恐妻家」

フィンランド最速のレーサー、
ミカ・ハッキネン。

その妻イリヤの
レースを見つめる眼は険しかった。
険しすぎて、

 ハッキネンは恐妻家だ

というジョークが生まれたほど。

恐らく彼女も闘っていたのだ。
いつ事故で夫を失うかもしれない、
というプレッシャーと。

キャリア絶頂にして突然、
ハッキネンは引退を発表する。

理由は、彼女の妊娠。

二人の間には、勝利より強い絆があった。


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