2013 年 4 月 13 日 のアーカイブ

佐藤理人 13年4月13日放送



ブリア・サヴァラン①「稀代の美食家」

18世紀のフランスの法律家、
ブリア・サヴァラン。

優れた解剖学者であり、
文学者、人望の厚い政治家、
プロのヴァイオリニストでもあった彼を
最も有名たらしめたもの。

それは鋭敏な味覚をもつ食通としての顔だった。

彼は自らの豊富な食体験を
「美味礼讃」という一冊の本にまとめた。

これは料理本でも栄養学の本でもない。
食べるという行為と
それがもたらす幸福のすべてを、
科学的・哲学的に解明しようした
人間探求の書である。

彼は言う。

 新しいごちそうの発見は
 人類の幸福にとって
 天体の発見以上のものである。

本当の幸せなんて意外と、
目の前にあるものです。

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佐藤理人 13年4月13日放送



ブリア・サヴァラン②「美味学」

 人民の運命は宴会で決まる。

フランスが生んだ世界的食通、
ブリア・サヴァランは言った。

昔、戦争をはじめ重要な議題は、
食卓で協議されるのが常だった。

空腹のときと満腹のときで人は変わる。
食は交渉を容易にするための
立派な政治の手段だった。

さらにそれは、
栄養や保存法を研究する科学であり、
美味しく調理する技術であり、
国家の貿易を左右する経済でもあった。

食にまつわる知識を体系づけて
整理した学問を「美味学」と言う。

サヴァランは著書「美味礼讃」により、
美味学の真髄を王や貴族たちの厨房から
庶民の食卓へ解放した。

真のグルメは大人の隠れ家ではなく、
家庭の食卓にこそ存在する。

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佐藤理人 13年4月13日放送



ブブリア・サヴァラン③「チョコレート」

チョコレートの栄養価の高さは、
18世紀すでに広く知られていた。

フランスの食通ブリア・サヴァランは、
著書「美味礼賛」の中でチョコレートを特に、

 飲み過ぎた人、寝不足の人、
 ぼんやりする人、悩める人、
 気が滅入る人

に勧めている。

理由は、どれも悲しみが
少しずつ混じっているから。

さすがフランスきっての食通。

チョコレートが体だけでなく、
心の回復にも効果があることを
ちゃんとお見通しなのでした。

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佐藤理人 13年4月13日放送



ブリア・サヴァラン④「グルメの定義」

 辞書をひいても
 グルメの意味は載っていない。

18世紀フランスの美食家
ブリア・サヴァランは言った。
辞書制作者は
あの優雅で繊細な快楽をご存知ない、と。

彼の考えるグルメ、
フランス語で「グルマンティーズ」の定義。
それは、美味しい物を
情熱的・理性的に愛し続ける心。

健やかな肉体と旺盛な食欲は、
国を潤し、経済を動かし、
ときには一国の命を救うことさえある。

1815年。ナポレオン戦争で勝利を収めた
ドイツ、イギリス、ロシアなどの戦勝国は、
フランスにこぞって多額の賠償金を要求した。

一時はフランスの命運もここまでかと思われた。
しかしすっかり美食の虜になった
戦勝国の兵隊たちはパリの街で連日、
大量のワインやご馳走を平らげた。

結果、フランスは支払った以上のお金を
すっかり回収してしまった。

サヴァランは言う。

 国の盛衰はその食べ方にかかっている。

美味しい物を愛する気持ち。
国でも家庭でも、
その効力にきっと違いはありません。

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佐藤理人 13年4月13日放送



ブリア・サヴァラン⑤「食卓の快楽」

 食卓こそは人がその初めから
 決して退屈しない唯一の場所である。

18世紀フランスの美食家ブリア・サヴァランは、
著書「美味礼讃」の中でそう述べた。

食べる喜びは動物でも味わうことができる。
しかし食卓の快楽は人間だけが味わえる喜びで、
場所やゲストなど様々な要因に左右される。

中でもゲストの選択には
細心の注意を払わなければならない。
彼は言う。

 会食者はいずれも
 いっしょに同一の目的地に着くべき
 旅人同士の心持でなければならない。

 悲しい顔をした者が混じっていては
 到底食卓の快楽は味わえない。

何を食べるかより
誰と食べるかの方が、
ずっと大切なんですね。

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佐藤理人 13年4月13日放送



ブリア・サヴァラン⑥「肥満」

 どんなものを食べているか言ってみたまえ。
 君がどんな人か当ててみせよう。

これはフランスが生んだ偉大な食通、
ブリア・サヴァランの最も有名な言葉。

でもその人の好物がでんぷんと小麦粉、
砂糖を多く含んでいたら。
さらにビールに目がなかったら。

性格はともかく、体型を当てるのは難しくない。

サヴァランが活躍した18世紀、
肥満はすでに深刻な社会問題だった。

まして美食大国フランスのこと。
彼には太り過ぎに悩む知人が500人もいた。

病気になり、生きるのに支障が出るほど太っても、
その多くは食生活を変えようとしなかったという。

恐ろしきはフランスの美食か、
それとも人間の食欲か。

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佐藤理人 13年4月13日放送



ブリア・サヴァラン⑦「ダイエット」

ダイエットは18世紀のフランスで
既にブームだった。

かの国が生んだ世界的食通ブリア・サヴァランは、
著書「美味礼賛」の中で
痩せるためのルールを3つ挙げる。

 食べ過ぎないこと。寝過ぎないこと。
 適度な運動を心がけること。

しかし食欲と睡眠欲は我慢するのが難しいし、
運動も結局続かない。

そこで彼は確実な方法を提案した。それは、

 でんぷんや小麦粉でできた食べ物を断つこと。

つまり今でいう「炭水化物ダイエット」。
しかしこれは人々の猛反発を招いた。

美食の国フランスの人々にとって、
一切のパンやお菓子を諦めることは、
何より酷な話だったのである。

実はサヴァランも肥満に苦しんだ一人。
彼は自らの知識を駆使して、
見事ダイエットに成功する。

しかしそれには30年もの月日を要した。
かくして彼は悟る。

 ダイエットに一番必要なもの。
 それは勇気である。

楽してやせる方法を人類が発見する日は、
いつか来るのだろうか。

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