2013 年 7 月 14 日 のアーカイブ

薄 景子 13年7月14日放送



海のはなし アインシュタイン

さっきまで罵倒しあっていた相手と
今、お茶しながら笑いころげている。
人間ほど説明のつかない生き物はいない。

世紀の物理学者、アインシュタインは言う。

 人は海のようなものである。
 あるときは穏やかで友好的。
 あるときはしけて、悪意に満ちている。
 ここで知っておかなければならないのは、
 人間もほとんどが水で構成されているということです。

なるほど。科学の天才は、
人間を解き明かす天才でもある

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薄 景子 13年7月14日放送



海のはなし 三好達治

言葉にならない気持ちを
かかえきれなくなったとき、
人が海に行きたくなるのはなぜだろう。

ただただ寄せては返す波のリズムは、
なぐさめの言葉なんかよりずっと大らかに、
心のくさくさを洗い流してくれる。

昭和の詩人、三好達治は言う。

 海よ、僕らの使う文字では、お前の中に母がいる。
 そして、母よ、フランス人の言葉ではあなたの中に海がある。

地球上に最初に生物が生まれたのは海。
そうか、海は人のふるさとなんだ。

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石橋涼子 13年7月14日放送


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海のはなし ミクロネシアの言葉

ミクロネシア連邦をご存知だろうか。
ギリシャ語で「小さな島々」を意味するこの国は、
文字通り、赤道沿いに浮かぶ607の小さな島で構成される。

ミクロネシアは約500年前に
欧米によって発見された。
もちろん、発見だなんて、よそ者の勝手な言い分で
それ以前から島の人々は平和に暮らしていたのだ。

以来、自然豊かなミクロネシアの島々は
多くの植民地戦争に巻き込まれ
歴史という名の嵐に翻弄され続けた。

ようやく独立を果たしたのは1986年。

ミクロネシアの人々が、
ミクロネシアの過去と未来のためにつくった
憲法の前文にはこう書かれている。

 戦争を知ったが故に、我々は平和を望む
 分割させられたが故に、我々は統一を望む
 支配されたが故に、我々は自由を求める

そして、その中の一文、

 海はわれわれを分かつのではなく一つにしてくれる。

彼らの切なる言葉は、なぜだろう、詩のように美しい。

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石橋涼子 13年7月14日放送


John-Morgan
海のはなし あるカヌー乗りの言葉

ハワイの海で伝統的なアウトリガーカヌーには、
神様がすわるシートが用意されている。
人々ははるか昔から
海の恵みも、試練も、神様とともに分かち合った。

 ある年配のカヌー乗りはこう語る。
 カヌーに一緒に乗れば、たとえ初めて会った人間でも
 その日から仲間であり家族になるんだ。

ということは、神様も家族。
苦楽を共にする存在は、それくらい近しい方がいい。
南国は、海も神様も人の心も、広々としている。

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熊埜御堂由香 13年7月14日放送



海のはなし べサニ―ハミルトン

べサニ―ハミルトン。
ハワイに生まれた彼女は、
5歳から海にかよう小さなサーファーだった。

スポンサーもつき、活躍をはじめた13歳のある日、
彼女の人生はがらりと変わる。

早朝、波を待っていると、
左手に強く引っ張られるような衝撃を感じた。
その瞬間、自分の周りの海が赤く染まった。
左手をサメにボードごと食いちぎられたのだ。

体内の半分もの血を失った彼女は、
病室で、父親にこう言った。
「わたし、世界一のサーフィン写真家になりたいな。」
左手を肩からまるまる失い、
もうサーフィンはできないと思ったからだ。

けれど次の日には気が変わっていた。
べサニ―は、「明るさ」という強い武器をもっていたのだ。
4週間後にはもう海にいた。

現在23歳のべサニ―は世界的な
女性サーファーとして活躍している。
彼女は言う。

 人生はサーフィンみたいなものよ。
 波に飲み込まれたら また次の波に乗ればいい。

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薄 景子 13年7月14日放送


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海のはなし 寺山修司

つらいことに直面し、とめどなく流れる涙。
感動で心が揺さぶられ、うるうるあふれだす涙。

理由は何であれ、思いっきり泣いた後は、
すっきり生まれ変わった気持ちになれる。

泣くことには、心と体を浄化する
不思議な力があるらしい。

寺山修司は、詩の中でこう語る。

 なみだは
 にんげんのつくることのできる
 いちばん小さな
 海です

私たちは一生で
どれだけ大きな海がつくれるだろう。

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茂木彩海 13年7月14日放送



海のはなし 海の住人

海は、人の住めない別世界。
そこには別の哲学があり、別の暮らしがある。

ダイオウイカを世界で初めてカメラに収めた
撮影班のディレクター、小山靖弘はその瞬間をこう振り返る。

 向こうもこっちを、見ていたのではないかな。
 人間というものを見ている、そんな気がしました。

この夏、海に入る時には、おじゃましますの挨拶を。

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茂木彩海 13年7月14日放送



海のはなし ドビュッシーの海

音楽家、坂本龍一が
「人生でもっとも影響を受けた音楽家」と語るドビュッシー。

彼が生み出す曲は、長調と短調が入り交じる不思議な旋律で
その瞬間、その場で感じた印象をそのまま残す
印象派の音楽だと言われている。

30代のころ書き上げた最高傑作。
交響詩、「海」。
目を閉じれば穏やかに、時に激しく荒れる海が浮かぶ。

彼は言う。

 音楽の本質は形式にあるのではなく色とリズムを持った時間なのだ

そうか。海が訳もなく心地良いのは、
波がつくる音楽の時間が流れているからなんだ。

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