松岡康 14年2月9日放送



塔の名前

1958年。
新しい電波塔の名称を決める審査会が行われた。
日本全国から86,269通もの応募があり、
一番多い名称は「昭和塔」、続いて「日本塔」「平和塔」だった。

大もめの審査会で、
審査委員の一人、漫談家の徳川夢声は、
自信満々にこう言った。

「ピタリと表しているのは『東京タワー』を置いて他にありませんな」

コトバのプロである徳川が推したのは、
普通すぎる名前だった。
彼の推薦により、塔の名称は東京タワーに決まる。

もしも、昭和塔という名称になっていたら。
東京タワーはこんなにも愛されていただろうか。

今日もその塔は、
東京の空にまっすぐ立っている。

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