2020 年 7 月 11 日 のアーカイブ

長谷川智子 20年7月11日放送


欲望という名の電車の夏

アメリカ・ニューオリンズの夏は、暑く、長い。
テネシー・ウィリアムズの戯曲 「欲望という名の電車」の舞台である。

名家出身の未亡人ブランチが、
貧しい妹夫婦を訪れる。

「神経が休まる」からと、熱い湯に浸かるブランチのせいで、
狭い家には熱気がこもる。
高慢な態度に苛立つのは妹の夫スタンリー。
汗をかいた肌にシャツが張り付く。
ブランチは、彼の粗野な姿に苛立ちを募らせる。

じっとりと不快な湿気は、物語のカギを握る重要なキャスト。
憎み合う二人を悲劇へ導く。


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長谷川智子 20年7月11日放送


椿姫の夏

ヴェルディの名作オペラ椿姫。
高級娼婦ヴィオレッタと貴族アルフレードの恋は、
夏のパリからはじまる。

パーティーの夜、熱に浮かれ、歌い踊る人々に紛れ、
アルフレードは憧れの人へ愛を打ち明ける。
仮初の恋を楽しむばかりだったヴィオレッタは
真実の愛を知り、一輪の椿を差し出す。

「この花がしおれたときに、会いに来て」
「明日だね」
「ええ、明日」

ひと夏の、あつく、あまい、幸せ。
この恋は、決して悲劇だけではなかった


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長谷川智子 20年7月11日放送


源氏物語の夏

紫式部作「源氏物語」の主人公、光源氏は
春、夏、秋、冬の名を持つ御殿に、妻や子供たちを住まわせた。

夏の御殿の主人は、花散里。
久しぶりの訪れに恨みごとも言わず
源氏の君の美しさに見ほれるようなおおらかな女性。
その住まいは、「どこもかしこも浮ついたところはなく、気品が漂っている」と
紫式部は書いている。

春や秋に比べ、
平安時代の夏は、静かに暑さをやりすごす穏やかな季節であった。

花散里と光源氏は、男女の仲が絶えた後も信頼し合い、
彼女は彼の子供たちを養育した。古の夏は、大人の恋の季節だったようだ。


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長谷川智子 20年7月11日放送


蝉しぐれの夏

藤沢周平 蝉しぐれ
主人公文四郎と、幼馴染ふくの淡い恋は、夏にはじまる。

少年文四郎は、へびに噛まれたふくの指を口に含み、血を吸いだしてやる。
礼を言うふくの色白のほおが、なぜか気になった。
いつもと変わらないはずなのに。頭上では蝉が鳴いていた。

数十年後。
別々の人生を歩んだ二人に訪れたひとときの逢瀬。
一人になってから、文四郎は
「さっきは気づかなかった、里松林の蝉しぐれ」に包まれて
子どもの頃に遊んだ雑木林を思い出す。
脳裏には、ふくの白い頬も浮かんでいただろう。

夏に始まり、夏に終わった、長い長い恋の物語。


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長谷川智子 20年7月11日放送

jun560
夏の夜の夢の夏

シェークスピア作「夏の夜の夢」。

駆け落ちしたハーミアとライサンダー。
しかし、妖精パックの惚れ薬のせいで
ライサンダーは一夜にして心変わり。他の女に夢中になってしまう。
恋は盲目。「どこを探しても分別などない」。

原題A Midsummer Night’s Dreamのmidsummerは、
夏至祭りのこととも、真夏の熱に浮かされた大騒ぎのことともいわれている。

ハーミアとライサンダーは、再び妖精の力でもとの恋人同士に。
まるで夢を見ていたかのよう。

夏の夜には、心惑わせる恋の媚薬が混じっているのだ。


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