2020 年 9 月 19 日 のアーカイブ

野村隆文 20年9月19日放送


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生きて帰ること

いまからちょうど50年前の、1970年のこと。

世界最高峰のエベレストに、
日本人で初めて登頂した男がいた。
彼の名は植村直己(なおみ)。
のちに、世界で初めて五大陸の最高峰に登頂し、
名実ともに日本の冒険家の象徴となった彼は、
こう語っている。

「冒険とは、生きて帰ることである」

この50年、あらゆる山や海は制覇され、
世界は急速に狭くなっている。
そんな今を生きる私たちにとっては、
どんな冒険がありえるのだろうか?

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野村隆文 20年9月19日放送


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自然体

圧倒的な存在感と過酷さを持つ
世界最高峰の山・エベレストに、
女性最高齢で登頂した日本人がいる。

渡辺玉枝さん。2012年、73歳で登頂に成功。
実は彼女は、8000m級の山にも、
「チョット出かけてきます」の一言だけで出発するという。

富士山のふもとに生まれ、
毎日富士山に挨拶してきた彼女にとって、
山は日常の一部。
予測できない自然を相手にする秘訣は、
こちらが自然体でいることなのかもしれない。

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野村隆文 20年9月19日放送



自由

地球の3分の1をも占める
雄大な太平洋を、
昨年、視覚障害者として世界で初めて
ヨットで横断した日本人がいる。

岩本光弘さん。
視力を失い、一度は人生に絶望した彼を救ったのが、
ヨットとの出会いだった。

彼は、太平洋をこう語る。
「ぶつかるものが何一つ無くて、ありがたい。
全盲の私に、操船できる自由を与えてくれているんですから」

どうにもならない無力感は、ときに
何でもできる自由に変わる。
それこそが、冒険の醍醐味の一つなのかもしれない。

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野村隆文 20年9月19日放送



私には現実

初めて空を飛んだとき、
人類は大きな風船に乗っていた。
バーナーで空気をあたためることで上昇し、
風まかせで推進していく、
シンプルで原始的な移動手段、熱気球。

そんな熱気球の滞空時間と飛行距離で、
世界記録を樹立した日本人がいる。

彼の名は神田道夫。
公務員の仕事をしながら、無謀とも思える挑戦をつづけ、
最後は太平洋横断に挑戦し、そのまま帰らぬ人となった。

妻である美智子さんは、のちにこう語っている。

「気球は夢のものだけど、私にとっては現実ですよ。
残されちゃうんですから」

冒険には、無謀を伴う。
冒険家は、常に目標だけを見据えて突き進む。

しかしその傍らには、
静かに現実を見つめている人がいることを、
忘れないようにしたい。

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野村隆文 20年9月19日放送


Yoshikazu TAKADA
最後の冒険家

「現代に冒険家はもう存在しない」
そう語るのは、写真家の石川直樹。
自身も登山家として、七大陸の最高峰を
世界最年少で登ったこともある。

彼は、こうも語る。
「日常における少しの飛躍、小さな挑戦、新たな一歩、
そのすべては冒険なのだ」

自分の足で極地へ赴き、
そこで暮らす人々の生活を丁寧に写真に収めていく。

それは、生きることそのものが冒険だということの、
彼なりの証明なのかもしれない。

さあ、今を生きる冒険をはじめよう。

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