厚焼玉子 18年12月30日放送

181230-07
年末初演の物語

1844年、12月30日、ハンブルグのオペラ劇場で
フリードリヒ・フォン・フロトー作曲のオペラ
「アレッサンドロ・ストラデッラ」が初演された。

アレッサンドロ・ストラデッラは実在の人物で、
イタリアのバロック音楽の作曲家。
王室にも出入りし、精力的に作曲もしたが
その一方で教会の資金を使い込んだり、
貴族の愛人と駆け落ちしたり
放蕩の限りを尽くし、殺し屋の手にかかって死んだ。

こんな無茶苦茶な人生もオペラになると美化されてしまうが、
このオペラは大成功をおさめたそうだ。


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厚焼玉子 18年12月30日放送

181230-08
年末初演の物語

ところで、ベートーベンの交響曲第9番、通称「第九」は、
なぜ年末に演奏されるのだろう。

調べてみると、日本で年末と第九が結びついたのは
日本交響楽団が1947年12月に
三日連続の第九コンサートを開いたのがきっかけらしい。
このコンサートは絶賛を持って迎えられ、
戦後の混乱期のオーケストラにとってはありがたい臨時収入になった。

さらにアマチュア合唱団が第九を歌いはじめると、
出演者の家族や友人も足を運び、
ますます年末の第九が定着した。

ちなみにベートーベンの祖国ドイツでは
年末に第九を演奏する習慣はない。


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名雪祐平 18年12月29日放送

181229-01 Mohafiz M.H. Photography (www.lensa13.com)
普通の赤ちゃん

 It’s a girl.
 女の子だ。


医師は、帝王切開によって
その赤ちゃんをとりあげた。

1978年、7月25日、午後11時47分。
体重5ポンド12オンス。
元気な産声が響きわたる。

普通の出産シーンと、何ら変わらない。
唯一、違うこと。

女の子は、
世界初の試験管ベビーだった。

誕生の歴史的瞬間を
目撃するのなら、
YouTubeへ。

“First test tube baby Louise Brown (1978)”


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名雪祐平 18年12月29日放送

181229-02
普通の赤ちゃん

世界で初めて、
体外受精で産まれた赤ちゃんを
世界中は、こう呼んだ。

 試験管ベビー

生まれてすぐ、
調べた医師は、
最初に言った。

 普通の赤ちゃん

両親は、
普通の女の子の名前にした。

 ルイーズ・ブラウン

医師は、喜びを意味する
ミドルネームを
つけてくれた。

 “JOY”

これから全世界の人々と
喜びを分かち合うように、と。


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名雪祐平 18年12月29日放送

181229-03
普通の赤ちゃん

40年前、
世界初の体外受精によって
生まれた女の子、ルイーズ。

その誕生は、何を意味するのか?

科学者や宗教指導者から
一般市民まで巻きこみ、
世界中、賛否両論。

でも、ずっと不妊に悩んでいた
ルイーズの両親にとっての意味は、
たったひとつ。

 ついにできた、
 私たちの赤ちゃん!


家族を非難したり、
嫌がらせの手紙がつぎつぎ届いたが、
その一方で、
子どもに恵まれない世界中の夫婦から、
祝福の手紙が何百通と届いた。

ルイーズは、
新しい希望の子になった。


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名雪祐平 18年12月29日放送

181229-04 Maurice Pullin
普通の赤ちゃん

世界初の試験管ベビーと呼ばれた
ルイーズ・ブラウン。
今年、40歳になった。

ルイーズには魂がない、と
非道い言葉を浴びせられた過去もあった。

でも、それから体外受精で生まれた
赤ちゃんは、世界で800万人。

日本でもいま、
18人に1人が体外受精で生まれる。

とっくにもう、試験管ベビーという
特別な存在ではなく、

普通の赤ちゃん。

ルイーズはいま、
イギリス西部の港町で、
配送会社に勤めている。

ほかのみんなと同じように、
大人になり、
普通の女性になった。

生まれてくるのに、
科学の力を、
すこし必要としただけ。

ほかのみんなと、なんにも変わらない。


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名雪祐平 18年12月29日放送

181229-05
普通の赤ちゃん

中国で生まれた
双子の女の子、ルルとナナ。

その存在が、
世界を驚愕させた。

世界最大級のタブー。
ヒトの遺伝子を操作する
ゲノム編集によって生まれた、
と、中国の研究者が突然発表したのだ。

世界中から批判が殺到。
当の研究者は、
勤務する大学当局によって
軟禁されたという。

まだ謎ばかり。

ただひとつ、言えること。
ルルとナナは、生きている。
そしてこれからも、生きていく。

ルルとナナに、何も罪はない。
かけがえのない命があるだけだ。


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薄景子 18年12月23日放送

181223-01
愛のことば ヘンリー・ヴァン・ダイク

明日はクリスマスイヴ。
世界中のサンタクロースが
プレゼント探しで
かけずりまわっている頃だろう。

あれが欲しいって言ってたっけ。
いやこっちの方が喜ぶかな。

その人を想えば想うほど、
迷って迷ってプレゼントが決まらない。
そんな優柔不断なサンタさんに、
アメリカの作家、
ヘンリー・ヴァン・ダイクの言葉を贈ります。

最高のクリスマスプレゼントは
一番お金をかけたものではなく、
一番多くの愛がこもっているもの。

何を贈るか、迷って迷って
ずっと選べなかったことを伝えてみる。
できれば、言えなかった愛のことばとともに。

ただそれだけで、どんなプレゼントも、
きっと最高の笑顔に変わるはず。


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熊埜御堂由香 18年12月23日放送

181223-02
愛のことば 愛の教科書

1956年に出版されてから、
世界中で読み継がれている愛の教科書がある。
ドイツの哲学者、エーリッヒ・フロムの「愛するということ」。
愛とは、修練で身につける技術であるとフロムは説き、
「他者を愛する」能力を身につける方法が体系的に記されている。

フロムはこう問いかける。
人々が愛を軽く見ているわけではない。
それどころか誰もが愛に飢えている。
ところが、愛について学ばなければならないことがあると考えている
人はほとんどいない。

その上で、こんな厳しい言葉を投げかけてくる。
愛というものは簡単に浸れるような感情ではない。
真の意味で人を愛するには、
自分の人格を発達させ、全力で努力しなければならない。

つまり、大事なのは、
愛されること、愛を受け取ることばかり求めるのではなく、
愛すること、愛を与えることをまず考えること。

何度読み返しても難しいけれど、
クリスマスの直前に、
フロムの教科書をもう一度、復習してみようか。


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小野麻利江 18年12月23日放送

181223-03
愛のことば ディケンズの「単純な真実」

イギリスの文豪、チャールズ・ディケンズの
代表作のひとつ『クリスマス・キャロル』は
1843年の、ちょうどこの時期に出版された。

並外れた守銭奴のスクルージという男が
クリスマス・イヴの日に、かつての盟友の亡霊と対面。
自らの過去・現在・そして未来を見せられ、
結果、改心するというストーリーだ。

ディケンズが生きたヴィクトリア朝のイギリスは、
産業革命によって大きく発展を遂げた一方で、
国内の貧富の差が拡大していった時代。

ディケンズ自身も、父親が借金返済できずに投獄され、
12歳の時から、靴墨工場で過酷な労働を強いられたという
不遇な少年時代を送っている。

その影響があってか、ディケンズが紡ぐ物語は、
社会の底辺にいる貧しい人々に目を向け、
たとえ暗いテーマを扱っていても、
最後には、一縷の希望を感じさせるものが多く、
「人生の危機において、『単純な真実』ほど強く安全なものはない」
という彼の主張が、色濃く反映されている。

ディケンズがたどり着いた「単純な真実」とは何か。
それは、このような言葉で遺されている。

 A loving heart is the truest wisdom.
 愛する心は最も真なる知恵である


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