‘中村直史’ タグのついている投稿

中村直史 16年2月13日放送

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stevendepolo
明日、2月14日。 宇野千代

明日、2月14日。
バレンタインデー。
私は、あの人に、告白するだろうか。
しないだろうか。

そんな思いをかかえ、
もんもんとした夜を送っている
女性はいますか?
いますよね、きっと。

そんなあなたに伝言です。
98年間の人生を
全力で思い切り生き抜いた
小説家、宇野千代さんからの、こんな一言。

 恋をしなさい。好きと言えないなんて、ケチな根性よ。

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中村直史 16年1月23日放送

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土の話 四狭間かなた

「一カ所焼き」と呼ばれる焼き物がある。

提唱するのは、
栃木県佐野市の陶芸家、
四狭間かなた(しさま かなた)。

なぜ「一カ所焼き」なのか。

材料を、とくに陶芸に適したわけでもない、
自分の住む土地の一カ所だけで調達する。

土も、石も、薪も、
近所の名もなき山や川で見つける。
釜も煙突もそのへんの土でつくった。

四狭間さんは言う。

 自分の足で歩きながら、目の前にあらわれる
 さまざまな自然の素材を、
 感謝しつつ手を使って工夫し、焼いて、遊び倒すんです。

「つくる」という行為は、原始的なほど、
おもしろいのかもしれない。

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中村直史 15年11月28日放送

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music2020
編み物のはなし グレン・グールド

極度の潔癖症でしられたピアニスト、
グレン・グールド。
彼は、極度の寒がりでもあった。

夏でも暖かいセーターにマフラー。
毛糸の帽子をかぶることもあった。

からだの感覚も、精神の感覚も、
ふつうの人とはちがっていたのか。

でも、そんなグールドの演奏するピアノ曲が、
人類を代表する音の一つとして
今日も宇宙を旅している。

いつの日か、グールドを聴いた宇宙生命体は、
人類をどんな生き物だと想像するだろう?

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中村直史 15年11月28日放送

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編み物のはなし フランソワ・クープラン

バロック音楽の作曲家
フランソワ・クープラン。

優美で洗練された、
いかにもフランスらしい小作品を残した。

代表作「クラブサン曲集」は、
230にも及ぶ組曲で構成される。

その曲名の一つ一つが、
18世紀フランスの息吹を生き生きと伝えている。

「森の妖精」
「猫なで声」
「心地よい恋やつれ」
「恋の夜鳴うぐいす」
「小さな風車」

そして「編み物をする女たち」

編み物は、ずっとヨーロッパ人の
心の風景だったのかもしれない。

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中村直史 15年8月15日放送

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戦争と平和 石橋湛山(いしばしたんざん)

ジャーナリスト、石橋湛山。
戦争へ向かう日本で、
敢然と軍部を批判した。

世界の国々と友好を築き、貿易を活発化し、人の力を生かす。
それが日本の繁栄する道。
理想論ではなく、冷静な分析に基づいた主張だった。

軍部の暴走を止めることはできなかったが、
戦後日本の復興に心血をそそいだ。

1950年、第55代内閣総理大臣就任。
病のため、在任期間はわずか65日。道半ばだった。
石橋の残した言葉がある。

 資本を豊富にするの道は、
 ただ平和主義により、
 国民の全力を学問技術の研究と産業の進歩とに注ぐにある。

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中村直史 15年3月28日放送

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erinc salor
気になるあの人 ボビー・マクファレン

音楽家はふつう、観客に音楽を聞かせる。
けれどここに、観客の音楽を聞く音楽家がいる。

ジャンルを超えた
音楽を創造しつづけるアメリカの音楽家、
ボビー・マクファレン。

ある日、オーケストラを指揮していた彼は
突然、観客のほうに振り向くと
指揮棒をあげ、こう言った。

 みんなアヴェ・マリアを習ったことはあるよね?

振り下ろされる指揮棒。
あちこちから、かすかな歌声が起こる。
とまどいがちだった歌は、
重なり合うことで自信に満ちた音楽へと変わっていった。
音を響かせあう楽しさが、そこにあった。

聞く側と、聞かせる側。
ボビーはそんなジャンルさえ、飛び越える。

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中村直史 15年3月28日放送

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Sugawara / yuma
気になるあの人 宮井和夫

サメやカツオ、それにタコ。
カラフルな姿で車体からあふれんばかりに描かれている。
こんなタクシーが走る街は、きっとほかにない。

発案したのは、
気仙沼観光タクシーの宮井和夫(みやい かずお)社長。

震災後の灰色の街を明るくしたかった。
街歩く人を、ちょっとでも楽しい気持ちにさせたかった。

 苦しい思いをした地域。
 だからこそ、世界一幸せになる権利もあると思うんです。

宮井さんの語る希望は、
未来ではなく「今ここ」という現実の時間の中にある。

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中村直史 15年1月18日放送

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japanesefilmarchive
はじまりの言葉/増村保造(ますむら やすぞう)

フェリーニやヴィスコンティに学び、
斬新な演出で戦後の日本映画に
新風をふきこんだ映画監督、増村保造。

日本的な情緒や雰囲気を嫌い
個人が発する「自我」を強烈に描きつづけた。

登場人物が強烈なら、演出方法も強烈。

死へと疾走する遊郭の女性を描いた「曾根崎心中」。
ヒロインの恋人役を演じた宇崎竜童に対する
撮影開始の合図は

「よーい、強く喘いで死ぬ気で、スタート!」

だったという。

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中村直史 15年1月18日放送

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serakatie
はじまりの言葉/リチャード・バック

何十年も生きてきて、
毎年、年の初めには、抱負のようなものも考える。

けれど、わからないのである。
一年一年、抱負が自分を成長させたのか。

むしろ、抱負負けして、
毎年どんどんダメになっているのではないか。

それでも、と「かもめのジョナサン」の作者
リチャード・バックは言います。

 やっぱり自分の歌をうたい続けることだと思うね。
 思いわずらい、駆けずり回りながらでも
 自分の歌だけはうたい続けるわけだ。

2015年、
あなたの歌を大きな音で聴きたいです。

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中村直史 14年12月28日放送

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Marianne Bevis
言葉2014 ロジャー・フェデラー

「もうフェデラーの時代は終わった」
そんな観客たちの声を、彼は感じていただろうか。

2014年ウィンブルドン。

ピークを過ぎたはずのロジャー・フェデラーは躍動した。
体力が落ちた分は技と精神力でカバーした。
ピンチを何度ものりこえ、進んだ決勝戦。
第4セット。
対戦相手ジョコビッチのマッチポイント。
さすがに、フェデラーもここまでか。
だれもが思った。力の差は歴然に見えた。

けれど、ここからのフェデラーはすさまじかった。
毎日少しずつ何かをあきらめている僕らは、
決してあきらめちゃダメなんだと、
最終セットに突入するフェデラーを見て思った。

表彰式。チャンピオン、ジョコビッチの第一声。

 僕はフェデラーのありとあらゆるすべてを尊敬する。

それは場を盛り上げるための
賛辞なんかではなかった。

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