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渋谷三紀 20年6月13日放送



アイスクリームのおはなし  正岡子規のアイスクリーム

アイスクリームが大好物だった
俳人、正岡子規。
病をおして友人の高浜虚子を訪ねたときには、
虚子が止めるのも聞かず、
アイスクリームを2杯完食した。
そのお礼に後日こんな句を送っている。
「一匙のアイスクリームや蘇る」
この時初めて俳句に詠まれたアイスクリーム。
いまはもう夏の季語の定番になっている。

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渋谷三紀 20年6月13日放送



アイスクリームのおはなし  モーツァルトのアイスクリーム

21歳になったモーツァルトはパリにいた。
新作のシンフォニーがチュリルリー宮で演奏され、
大きな拍手を浴びていた。
嬉しさのあまり街に繰り出し、
向かった先は、パレ・ロワイヤル。
上等なアイスクリームを食べたことを
父への手紙に書いている。
ちょっといいことがあった日、私たちも
いつもより高いアイスクリームを買ったりする。
モーツァルトだっておんなじだ。

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渋谷三紀 20年6月13日放送


CanadaPenguin
アイスクリームのおはなし  「はつ恋」のアイスクリーム

ツルゲーネフの代表作「はつ恋」。
16歳のウラジーミルは
恋する年上の女性ジナイーダをこんな風に語る。

「冷たいって君は言うけど、そこに味があるんだよ。
君だってアイスクリームが好きだろう?」
 
ジナイーダの冷たさも
彼女の魅力の一部だというのだ。
すぐ溶けてしまうことも含めて、
アイスクリームは、はつ恋の比喩にぴったりだ。

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渋谷三紀 20年6月13日放送



アイスクリームのおはなし  「クレイマークレイマー」のアイスクリーム

映画「クレイマークレイマー」の主人公テッド。
ある日突然妻が家を出て行き、
息子ビリーとの二人暮らしが始まる。
テッドの用意した晩ご飯を嫌がり、
アイスクリームが食べたいとぐずるビリー。
思い通りにできないテッドのいらだちと
母親のいないビリーの寂しさがぶつかる印象的なシーンだ。
実はこのくだりは、ビリー役の少年が
大のアイスクリーム好きだったことから
脚本に書き加えられた。
真実を混ぜると映画はつよくなるようだ。

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渋谷三紀 20年6月13日放送



アイスクリームのおはなし  日本初のアイスクリーム

はじめて日本人がアイスクリームを
食べたのは、江戸末期のこと。
江戸幕府が送った使節団が
アメリカで食べたのが最初だと言われている。
その中のひとり町田房蔵が数年後、
横浜にアイスクリーム屋をオープンした。
その値段はいまの価値でなんと8000円。
高すぎたせいかさっぱり売れなかった。
それから150年。
アイスクリームのない夏なんて、
いまはもう想像もできない。

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渋谷三紀 20年4月11日放送



スープについて 恋愛スープ

恋愛中のコックのスープは飲むな。

ヨーロッパにあることわざ。
恋愛というから甘くなるのかと思いきや、
逆に塩辛くなるらしい。

恋愛中は中枢神経が刺激されて
ホルモンバランスが崩れる。
すると味覚が麻痺して、
塩を余計に加えてしまうのだそうだ。

奥さまのつくるスープが塩辛いとしたら、
恋愛気分がまだつづいているのかもしれない。

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渋谷三紀 20年4月11日放送



スープについて 羊肉のスープがけ

1765年のこと。
ブーランジェという店がパリにオープンした。
名物はスープを煮詰めて羊の肉にかけた料理。
「うちの料理はお客様の元気を回復するためにある」
と店主が言ったことから、
回復するという意味の“レストレ”が
レストランの語源になった。

元気な時はもちろん、
元気がない時ふいに訪れたくなる店こそが、
本当にいいレストランなのかもしれない。

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渋谷三紀 20年4月11日放送



スープについて ブイヤベース

魚介類たっぷりの鍋、ブイヤベース。
南フランスのマルセイユには、
「ブイヤベース憲章」なるものがある。

カサゴ、白カサゴ、赤アサゴ、アシナガガニ、
ホウボウ、マトウダイ、アンコウ、西洋アナゴのうち
4種類を入れなくてはならない。
鯛、ヒラメ、オマール海老、ムール貝、タコ、イカは
入れてはいけない。
そのほか、使っていい野菜や調味料、
小魚でだしをとることまで細かく決められている。

とはいえ、各家庭やレストランには独自のレシピがあり、
それぞれが正統派を主張しているのだから、
それはもう、煮えたぎるようなブイヤベース愛だ。

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渋谷三紀 20年4月11日放送



スープについて 豚骨スープ

福岡が発祥。
ラーメンでおなじみの豚骨スープ。
実は失敗作から生まれた。

母親に火の番を頼んで外出したラーメン屋の店主。
帰宅すると鍋はぐつぐつと煮えたぎり、
透明なはずのスープが
すっかり白濁していたのだそうだ。
肩を落とした店主が
試しにラーメンをつくってみたところ
食べたことのない濃厚な味に驚き、
豚骨ラーメンは店の看板メニューになった。

ラーメン好きとしては、
失敗を失敗で終わらせなかった店主に感謝しかない。

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渋谷三紀 20年4月11日放送



スープについて 味噌汁

味噌汁のはじまりは、戦国時代の陣中食だ。
里芋の茎を味噌で煮しめた芋がら縄に、
熱湯をかけて味噌汁をつくった。

味噌は戦における大切なエネルギー源。
織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の三人が
豆味噌の産地で生まれたことは偶然ではないだろう。

上杉謙信の越後味噌や伊達正宗の仙台味噌は
時代を経て、戦う現代人に食されている。

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